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◎二年目、十一月の章

■こんなことがあったよ

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『学園祭?』

 聞き慣れない単語に真鈴は困惑した表情を見せる。

「そ。大変だったわよ。それも今日で終わり」

「せいせいするわ」というわりにどこか里奈は寂しそうだった。

『そっかそっか。パパは今回も大活躍だったのね。……あ、動いた』

 真鈴はお腹に触れた。彼女のお腹は見るたびに大きくなっていた。

「もう六カ月だっけ?」

『そうなるかな。もうすぐ性別もわかるよって言われたわ』

「どっちだったらいい?」

 男の子か。女の子か。

『もちろん男の子かな』

「ふぅん。理由は?」

『惚れた男との間から生まれる子供なんだから。せっかく愛するなら男がいいわ』

「よくわかんない感覚ね」

 里奈は肩をすくめた。

『愛していくって決めてるからね』

 どちらを? と聞くのはこの際野暮かもしれないなと里奈は思った。

『あなたの話をこの子も一緒に聞いてくれてるのよ。久遠くんがパパだってわかったらどうなるのかな?』

「大変よね。あんなのが父親で。そもそも認知すらされていないじゃない」

『私が話さないって決めたからね』

「ま、あいつのことだから責任取るって言いかねないけどね。あ、そうだ。あいつの年上好きがわかったわよ」

『そうなの?』

 かくして夜の会話はまだまだ続く。里奈にとってはこれもまた日常になりつつあった。
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