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◎二年目、一二月の章

■玲美と東方旅団

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「イヤよ」

 東方旅団の四人の女性陣は揃って拒否をする。その筆頭として声をあげたのが里奈であった。

「もう少し節度のある付き合いをするように頼んでいるだけよ。何も別れろと言ってるワケじゃない」

 だというのに玲美は怯まない。

「ああいうの見てると久遠の好みが何となくわかるよなぁ」

 少し離れたところではるが朝食をちみちみと食べながらやりとりを眺めている。

「そういや気の強い女の人ばっかりですよね、久遠先輩のまわりって」

 賢司けんじも薄々と感じていたことだった。

「で、どうよ。玲美先輩は?」

「可愛いっすよねぇ。何か芯の強そうなところがまた刺さるっていうか」

「それについては同意だな。久遠の野郎、身内があれだけ奇麗どころ揃いならそう言えってんだよな」

 それには賢司もうんうんと頷いている。

「困ってる久遠先輩もいいですよね」

 伊織は恍惚とした表情で久遠を見ている。これはまた別の次元にいるなと晴と賢司は敢えて見なかったことにした。

学野まなびや先輩はあるんすか、女性の好みとか?」

 晴は近くにいた博文ひろふみにも話しかける。

「ひどいなぁ。僕も人並みには女性に興味はあるつもりだよ」

「……だったら身なりをもう少し整えたらどうっすか?」

「そうだね。善処してみるよ」

 これはしばらくかかるんだろうなと晴は思う。何せ相方の千条胡桃葉せんじょうくるみはが彼とまったく同じタイプなせいだからだ。

 そういう意味では二人はお似合いなのだが。

「いまさら身内面されてもね。ここまで関係もできているんだから、それこそ妹といえどお呼びじゃないわよ」

 頼果らいかの長身からキツい口調で言われるとなかなかの迫力だろう。

「あるわ! あなたたちと久遠の間に子供でも生まれたら、あなたたちと私は身内になるのよ」

 すると女性陣ははっとなって互いの顔を見合わせる。たしかにその通りだったからだ。

「まあ、とりあえずいまから私たちのことをお姉さんって呼ぶ練習でもするのはどう?」

 里奈のあまりにも無神経な発言に玲美はぐっと奥歯を噛みしめながら立ちあがると久遠の手を握る。

「……こんなところに久遠を置いておけないわ」

「え、あ……。ちょっと玲美?」

「行くわよ、久遠」

「はひ」

 玲美にすごまれた久遠は思わず頷くと、玲美に連れられて食堂から出て行く。

 すると今度は一斉に里奈へ非難の視線が向けられる。

「な、何よ?」

 それに対していまもっとも最適であろう言葉を里奈に晴が投げた。

「バーカ」
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