星に願いを…

奈落

文字の大きさ
1 / 1

星に願いを…

しおりを挟む
七夕の夜 短冊に願いを込めて 笹に結ぶ

(いつまでもあの人の笑顔を見ていられますように♪)
夜空は街の灯に照らされ、星などはほとんど見えない。
ましてや天の川などプラネタリウムでしか見た事がない。
七夕の伝説も色褪せてしまっている…

キラリ…

(流れ星?)
輝きが夜空を過ぎっていった。
(願いが叶うと良いね♪)

しばらく星の少ない夜空を眺めたあと…
私は眠りに就いていた。




(朝?)
ベッドの上で目が覚めた。
(何処?)
そこが自分の部屋でないことは即に解った。
そう、ここは自部の部屋ではない。
(誰の?)
花柄のカーテンと白いレースが窓に掛かっている。
ベッドの布団も花柄でピンク色をしている。
傍らにはいくつかのぬいぐるみが置かれている。
(女の子の部屋みたい…)
鴨居に服が掛かっていた。
同じ学校の女子の制服のように見える。
(何で俺が女子の部屋に?)
起き上がる。
着ているのもまたピンク色のパジャマだ。
そして、その胸の辺りが膨らんでいるのが判った。
(俺の意識がこの部屋の娘の中にある…ということか?)
机の上に鏡が立て掛けてあった。
その鏡を覗き込む…
(新堂?)
その顔は同じクラスの新堂薫だった、
(何で?)
新堂とはあまり話しをした記憶がない。
もし、このまま俺が新堂のフリをしなければならないとなったら…

ピピピピッ!!

机の上電話が鳴っていた。
『おはよう カ・オ・リ♪ 気分はどう?』
聞こえてきたのは若い男の声だった。
『て言うか、まだ理解できてないのかもね? アタシと入れ替わってるって。』
「入れ替わってる?」
そう発した「俺」の声は完全に女の子の声だった。
『そう。今はあなたが新堂薫で、あたしが佐々木昇だってこと♪』
「どう…して?」
『今は説明している時間がないわ。あなたも早く支度しないと遅刻しちゃうわよ。詳しくは学校でね♪』

電話は切れた。
そして…
「薫ぃ、起きてる?」
彼女の母親の声がした。
俺はなんとか女子の制服を着て学校に向かった。



その席には「俺」がいた。
チラリと俺を見ただけで、親友の中井との雑談を続けていた。
その内には新堂薫が入っているのであろうが、見た目は「俺」そのものだった。
俺は黙って「新堂薫」の席に着いた。
チャイムが鳴り、先生がやってくる。
淡々と授業が進められる。
誰も「新堂薫」と「佐々木昇」の中身が入れ替わっているとは気付いていない。
休み時間もこれまでの毎日と同じ。
佐々木昇は中井達と雑談して終わってしまう。
俺が「佐々木昇」に声を掛けるタイミングがなかなか訪れなかった…

「新堂さん。」
不意に「佐々木昇」の方から声を掛けられた。
「放課後にちょっと付き合ってもらえないか?」
それだけ言って離れてしまった。
俺はまともに返事すらできていないのに…
「薫♪やったじゃない。佐々木君の方から声を掛けてくれたじゃん♪」
「がんばれ♪」
近くに女子達から声を掛けられた。
(何を「頑張る」んだ?)


誰もいない離れの空き教室にいた。
「あたしってこんな風に見えるんだ♪」
俺は「俺」の顔を見上げる形になっていた。
「ど、どういう事か説明してくれないか?どうやったら元に戻る?」
「薫は元に戻りたいのかい?」
「新堂はお前だろ!!」
「鏡は見たでしょ?あなたが新堂薫だって解ってるでしょ?」
「俺は佐々木昇だ!!」
「じゃあ教えてあげる。あなたが薫という女の子だってコト♪」
そう言って「俺」の顔を近付けてきた…
唇が塞がれた。
ドクリ!!
心臓が大きく音を立てた。
しっかりと抱き締められる。
膝ががくがくして立ってられないのに、彼に抱き止められている。
そう…こんな風に抱き締められたかった…
(って、コレは俺の記憶じゃない!!)
否定はしてみても、俺自身は多幸感に満たされてしまっている。
無意識のうちに俺の腕は彼の首に巻き付いていた。
違いの舌が唇を割って絡み合う。
唾液が混ぜ合わさってゆく…

「佐々木君…」
一時、唇が離れて俺はそう言っていた。
「大好き♪」
それは「俺」の言葉ではないが、身体に刻まれた想いがそう言わせていた。
(そう…やっと言えた♪)
身体に刻まれた記憶が溢れだす。
自分自身の存在が溶け込んでゆく。
そして、七夕の夜の願い事を思い出していた。

目の前には彼の笑顔があった。
(この笑顔はいつまでもアタシのもの…)

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

処理中です...