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6「これはただの趣味……いや、興味かな」

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「御門くんって、そんな変な生物だったんだ……」
 御門くんに押し倒されたまま体勢のまま呟く。
「ひどいねぇ。結城くんも一緒だよ? 僕が感染させちゃったからね」
 御門くんは、自分の体を左手で支えながら、右手で俺の太ももに触れきてた。
「もしかして……」
「そう、結城くんのこの傷が治ったのは、吸血生物としての治癒力のおかげ。吸血生物になってなければ、結城くんはあのとき死んでたよ。救急車を呼んでも間に合わなくて、使っちゃいけない非常階段を使って落ちて死んだ大学生として、ニュースになっていただろうね」
 いやな言い方だけど、たぶん御門くんの言う通りだろう。
 万が一、間に合っていたところで、しばらく入院生活だったに違いない。
 助けてくれない人だなんて疑っていたけれど、そういうわけじゃなかったようだ。
 あのとき、説明してくれてたら。
 そんなことも思うけど、あの場でこんな説明をされたところで、当然、信じなかっただろう。
 いまだって、疑っている。
 ただ、怪我が治ったのは事実で、御門くんの言い分を信じるしかない。
 感染してよかったのか、悪かったのか。
 その答えは、まだ出ていないけど。
「御門くんのおかげで、助かったってのはわかったよ。ありがとう……」
「どういたしまして」
「まだ……わかんないことだらけだけど、単純に、治癒力の高い人間だって思っていいの?」
「そうだね。人間よりずっと長生きで治癒力も高い……最高の生物だよ。人間の進化とも言えるんじゃない?」
「進化……」
「ただ、仲間が少なすぎるんだ」
 そう言うと、御門くんはなぜか下着の上から俺の性器に触れてきた。
「ちょ……なにして……」
「メスはものすごく希少でね。これまで、たくさんの人を感染させてきたけど、みんなオスだったんだ」
 そういえば、俺はメスだって言われたけど。
 それより、御門くんは、なんでそんなとこ触ってるんだろう。
「オスの血は弱くてね。だいたい2週間もすれば、普通の人間に戻っちゃうんだ。治癒力が高いのも少しの期間だけ。そんなの、仲間って言えないでしょ」
「……メスみたいに長生きしないってこと?」
 話を聞きながら、御門くんの手をどける。
「だから欲しかったんだよね。メスの仲間」
 御門くんは嬉しそうに笑いながら、また俺の股間に手を這わせてきた。
「ん……もう!」
「ちなみに、人間なんかより力もあるから、結城くんは、僕を押しのけられないよ」
 抵抗しても無駄だって、言いたいみたい。
「俺も、吸血生物のメスなんでしょ」
「そうだよ。でもまだ一度もオスと交わっていない、いわば処女。言ったでしょ。メスはオスと交わることで完全体になる。完全体のメスは、クイーンって呼ばれてるんだけど……処女の結城くんは、クイーンの僕には敵わない」
「御門くんは……オスと交わってるってこと?」
「そうだよ。だから、きみやいろんな人を感染させられた」
 御門くんと違って、オスと交わっていないいまの俺は、まだそれだけの力はないらしい。
「あ、それとも……」
 御門くんは、ふとなにか気づいた様子で、俺の耳元に口を寄せる。
「昨日の夜、智哉とした?」
「なっ!」
「僕、追い返されちゃったんだけど、きみの部屋で、2人きりだったんだよね? どうだった? 智哉のセックス」
「し、知らないよ。してないし!」
 覆いかぶさる御門くんの体を押しのけようとしたけれど、あいにくびくともしない。
 もちろん、股間に触れられた手をどかすこともできなかった。
「やっぱり処女か」
「……も、もし智哉としてたところで、智哉は人間なんだから、関係ないだろ」
「いや、智哉はオスだよ」
「え……?」
 思いがけないことを言われて、つい御門くんの方を見てしまう。
 見た瞬間、少し後悔した。
 もう少し顔を寄せたら口が当たってしまいそうで、慌てて顔を背ける。
 するとまた、御門くんは俺の耳元で、囁くように話しかけてきた。
「結城くん、知ってるんでしょ? 僕が智哉を犯したって。それで智哉は、感染して吸血生物のオスになってる。最近だから、もう少しの間、オスでい続けるだろうね」
「じゃあ、智哉も吸血生物のこと……」
「いや、オスにはいちいち説明してないよ。どうせ人間に戻るし、治癒能力に限っていえば、もう人間並みになってるだろうしね」
 御門くんが、智哉としていた理由を察する。
「もしかして……仲間を作りたくて、いろんな人としてるの?」
「そう」
 御門くんは笑いながら、布越しに触れていた俺のモノを、明確に撫で始めた。
「んぅっ!」
 こういう経験はいままでにない。
 御門くんは冗談のつもりでも、このままじゃ、体が反応してしまう。
「やめてよ……!」
「なんで?」
「なんでって……俺はもうメスだし、御門くんと、こういうことする意味ないよね?」
 御門くんの説明をすべて信じるのなら、俺たちがやる意味はない。
「たしかに、僕がオスなら、きみをクイーンに出来たけど、あいにくメス同士じゃそうはいかない。これはただの趣味……いや、興味かな」
 そう告げた後、御門くんは俺の下着を片手で引きずり下ろした。
「あ……」
「はは……少し感じ始めちゃってるじゃん。かわいー……。結城くん、処女ってだけじゃなく、童貞?」
 図星をつかれ、かぁっと顔が熱くなる。
「も……やだ……」
「ごめん、ごめん。いいよ。処女でも童貞でも。よかったじゃん。初めての相手が僕で……慣れてるし、優しくしてあげられる」
 初めての相手?
 これから御門くんと、なにかするってこと?
「突然襲っといて……優しいもなにもないだろ」
「んー……それもそうか」
 やめる気はないのか、御門くんは少し硬くなった俺のモノを掴むと、ゆっくり擦りあげていく。
「んっ……ん……」
「きみにも早くクイーンになってもらって、仲間を増やして欲しいんだけど……そのためには、どこかのオスとやらなきゃいけない。いきなり犯されるなんて怖いよね?」
「犯される気なんてないよ……」
「それでも、犯されるよ」
 話しながら、御門くんは体を起こすと、足に絡まっていた俺のズボンと下着を引き抜いてしまう。
「ちょっ……!」
「メスはときどき発情するからね。オスの方から勝手に寄ってくる。でも、人間にはバレないよ。メスの発情に感化されるのは、吸血生物のオスだけ。僕がオスにした子たちには何も説明していないし、表向き、ただなんとなく僕やきみがモテたり興奮されたりするってだけだけど。僕に興奮しないかきみに聞いたのは、オスかどうか確認したかったから。きみはメスだったけど……人として、ちょっとは僕に興奮してくれた?」
「……してない」
 本当はすごくしたけど、犯したいとは思ってない。
「まあ、いっか。それじゃあ、教えるよ。メスの先輩として、きみをメスらしい体にしてあげる」
 ペロリと舌なめずりする御門くんに、つい目を奪われる。
 そんな俺の隙をつくようにして、御門くんが覆いかぶさってきた。
 なにか言うより先に口を塞がれてしまう。
「ん……」
 少し遅れて、自分が御門くんとキスしているんだってことを理解した。
 入り込んできた御門くんの舌が、俺の舌に絡みつく。
「ん……んぅ……」
 ぬるぬるして、少しくすぐったい。
 ゾクゾクする。
 御門くんをどかそうと思っても、当然どかせなかった。
 御門くんの力は俺より強いし、こんなこと初めてだし。
 そもそも、御門くんをどかしたいって、本気で思えていないのかもしれない。
「ん……ぅ……」
「はぁ……結城くん、いちいち反応がかわいいよね。キスだけで蕩けちゃって……」
「はぁ……蕩けてない……」
「蕩けてるよ。自覚ない? 目、ぼんやりしてるし。気持ちよかったんでしょ。ココ……さっきよりおっきくなってる」
 御門くんが俺のモノを掴んだ瞬間、体がピクリと跳ねあがった。
「はは……いいね、その反応」
 キスが気持ちよかったのは事実だ。
 興奮してしまったのも事実で、実際、大きくしているのだから、隠しようもない。
「結城くん、本当にメスだよね?」
「俺が……オスだって思ってんの?」
「いや……メスだと思ってるんだけど、あまりにも僕で欲情してくれるから」
「御門くんに欲情したわけじゃ……」
「じゃあ、キスとか、手でされるのが気持ちいいんだ? もう一回、しようか」
 御門くんは、手で俺のを撫でながら、もう一度、キスしてくれた。
「ん……んぅっ……ん!」
 さっきよりも、深い。
 奥の方まで入り込んできた御門くんの舌が、俺の舌に絡みつく。
 溢れてきた唾液を思わず飲み込むけれど、自分のものか御門くんのものかわからなかった。
 めちゃくちゃ気持ちよくて、もっと欲しくなる。
 つい伸ばしてしまった舌先を、御門くんは優しく吸いあげてくれた。
「ん……んぁ……ん……!」
 欲しがるべきじゃないのに。
 俺のを擦る御門くんの手つきも絶妙で、頭がボーッとしてしまう。
「ん……んぅ……ん……!」
「気持ちいいね……」
 まるで俺の気持ちを代弁するように、少し熱っぽい声で、御門くんが呟いた。
 口が離れても、至近距離のまま。
 御門くんの手は、あいかわらず俺に快感を与え続けた。
「あっ……はぁ……ん……んっ!」
 根元から先端に向かって、何度も何度も擦られて、もう後には引けない状態まで高められていく。
 俺はせめて御門くんの視線から逃れようと顔を横に向けながら、手の甲で口を塞いだ。
「んっ、んっ……ひぁっ……んっ!」
「苦しいでしょ。手、どけなよ」
 御門くんは、口を塞いでいた俺の右手を、空いた手ですぐにどかしてしまう。
 もう片方の手で塞いでも、それもまたすぐどかされる。
「や……んっ……やぁ……あっ! 御門く……あっ!」
「声、かわいい……。いいよ。そのまま出してなよ」
 恥ずかしいのかなんなのか、わからないけど涙が溢れてきた。
 泣けばまた、からかわれるってわかってるのに。
「一回イッとこう? もうガチガチだし、イキたいでしょ」
 イキたい。
 イキたい、イキたい。
「あ、ん……ん……はぁ……はぁっ……ん、んぅ……いく……」
「うん。いいよ。イッちゃって?」
 このままじゃ、御門くんの手でイかされる。
 智哉が好きな相手なのに。
 ダメだって思うのに、気持ちよくて抗えない。
「はぁっ……ん、んっ……あっ、んんっ、んぅんんんっ!」
 体がビクついて、俺はされるがまま、御門くんの手に吐精していた。
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