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Bizarre Youth
13話
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社会見学も終わり足早に帰宅したクロードは、すぐに【HARLEQUIN】として動き、人目につかない場所にまで到着するとマキナと練った作戦を改めて確認する。
『Claude, we will confirm the strategy. A plan is──』
「Don’t fight directly in a very closed space. Use a body that mimics a sling shot as a means of combat.」
『If you remember it's fine.』
作戦は決めた。やらなければやられることを知って、彼は戦う決意はした。だが心臓の音が周りにも聞こえそうなほどバクバクと鳴っている。
怖い、と思っている。それは別に忌諱されるものではないにせよ、本人のアドバンテージを崩す要因にも成り得る。ゲームでこの状況に当てはめるのならば、初見でラスボス戦に勝てと言っているようなものだ。
落ち着きたかった、別のことを考えれば落ち着けるのだと考えてみれば……彼は今この場で考えはしないことを思い出していく。
「【EX】.」
『Yeah……my old brother.」
個体識別名【EX】
MAKINAは彼を兄と称しているが、単に先に生まれたということでそう呼んでいるだけの人工奇生生命体である。
EXとMAKINAはあのエディアインダストリー社にて産まれた。いや、創られた。その創られた目的は、人智を越えた存在への到達、そしてその存在の召喚が望みなのだ。
イカレなのかと思われるかもしれないが、これを考えたマギウス・エディアは既に狂気に魅入られていた。要するにイカれているのである、もうとっくの昔に。
そんなイカレの発案によって、彼の存在へと近付こうと同じような思想を持ったイカレどもによって、オーバーテクノロジーの塊である人口寄生生命体の成功例であるEXとMAKINAは誕生した。
その2つを体内に取り込めば、誰にも負けない上位種になれるとMAKINAは共に逃げ延びた人物から教えられた。今となってはその恩人とも別れてはいるが、その人物と会う機会を考えていなかった。
MAKINAの寄生能力は【軟化】【伸縮化】【身体能力強化】の3つ。EXの寄生能力はそれに対して【硬化】【鋭化】【身体能力強化】と、対比された性質を宿主に与える。
鋭化を発動させた手刀は理論値では最大で鉄の塊2tを真っ二つに斬り裂き、硬化を発動させた肉体は60階立てのビルから飛び降りても無傷で生還するという壊れた性能。
かくゆうMAKINAに寄生された宿主も、クロードみたいに滅多なことが無ければ死ぬことはない。弾丸だろうが何であろうが、貫き通す前に失速し跳ね返す始末。落ちたところで柔らかい肉体が衝撃を分散していくことも可能。
だが今回は相手が相手だ。寄生能力によって人の理から外れた威力を放出するその力は、MAKINAにとっても恐れるべきであるものであった。故にそのための対策を取り万全の状態でもって相手を倒す。
だがその相手、いや正確にはマギウスではなくEXのことになると、MAKINAは気付かぬうちにテンションが下がっている。それに気が付かないクロードではなかった。
「MAKINA.」
『What?』
「Do you hate fighting so much with your brother?」
『…… What is it?』
「Don't blur. The tone of the voice is falling every time the talk of EX comes from a while ago. Why don't you want to fight there? If you defeat Magius, will your brother save you too?」
暫しの間、MAKINAからの声が聴こえなくなった。周囲にたった1人だけ残されたような疎外感を覚えつつも、MAKINAが解答するのを待ち続ける。そんな奇妙な信頼関係は、彼とMAKINAにある相棒としての在り方であった。
やがて溜息にも似た声が聴こえると、姿こそ見えないもののヤレヤレといった雰囲気でMAKINAは答えていく。この関係が利用したものとはいえども、濃密な時間を過ごしてきたのには代わりないからだ。
『Even in this case I was able to hide in various ways in front of you.』
「I've been spending all the time together. I will know some things about you.」
『I know everything about you as well. For example, the word you searched for.』
「I will try not to be apologetic from now on.」
そんな話の最中、クロードとMAKINAは何者かの気配に気付きそちらの方へと視線を寄せる。が、今度は後ろからの気配、そして上からの気配。
上から落下してくる濃密な殺気を持った物体が、路地裏の地面を一部陥没させゴミ箱やゴミ袋が辺りに散乱していく。クロードとMAKINAの視線は一気にその物体の方へと注目していく。
その物体がゆっくりと開かれていく。否、その物体は人間であった。立ち上がっていくと全貌が見えてくる、あの時に見たその姿は絶対に忘れることが出来ない。
「Magius……!」
「It's been a while, boy. I was surprised that a boy like you was causing MAKINA to parasitize.」
「I listened to everything from MAKINA. I can only think of being crazy.」
「What did you listen to?」
「It's all. I hear that you are going to be beyond wisdom, and you can only see what you think is funny. In general, what do you mean by mythological creatures? Are you going to be a Medusa?」
そうしてクロードが言うと、マギウスは顔を俯かせてクツクツと嗤い始める。誰から聞いてもその嗤い声はとても不快感を催すもので、とにかくこの声だけは絶対に聞きたくないと思っている。
「Medusa? Don't be with such inferior beings. Don't be with Dragon, Minotaur, Pegasus or Phoenix. What I aim for is not that weak.
What I aim for is the god's dispatch that gave me an oracle! It's the jealousy of the jealousy to compare with the Zeus!」
本当に頭がイカれているのではないのかと思ってしまうほどの熱弁に、クロードとMAKINAは戸惑った。その熱弁には皮肉や冗談なんてものが混じってない純粋な思いが、彼の言霊となって伝わってきていた。
「That god is so wonderful! I think from the heart that it is the true God that I am right and I wanted to serve it!
Everything comes back to MAKINA with the guidance of my Lord!」
「It's bad, but I don't think that would make MAKINA cooperate. I was told that the fanatics would not listen!」
『Claude, we will confirm the strategy. A plan is──』
「Don’t fight directly in a very closed space. Use a body that mimics a sling shot as a means of combat.」
『If you remember it's fine.』
作戦は決めた。やらなければやられることを知って、彼は戦う決意はした。だが心臓の音が周りにも聞こえそうなほどバクバクと鳴っている。
怖い、と思っている。それは別に忌諱されるものではないにせよ、本人のアドバンテージを崩す要因にも成り得る。ゲームでこの状況に当てはめるのならば、初見でラスボス戦に勝てと言っているようなものだ。
落ち着きたかった、別のことを考えれば落ち着けるのだと考えてみれば……彼は今この場で考えはしないことを思い出していく。
「【EX】.」
『Yeah……my old brother.」
個体識別名【EX】
MAKINAは彼を兄と称しているが、単に先に生まれたということでそう呼んでいるだけの人工奇生生命体である。
EXとMAKINAはあのエディアインダストリー社にて産まれた。いや、創られた。その創られた目的は、人智を越えた存在への到達、そしてその存在の召喚が望みなのだ。
イカレなのかと思われるかもしれないが、これを考えたマギウス・エディアは既に狂気に魅入られていた。要するにイカれているのである、もうとっくの昔に。
そんなイカレの発案によって、彼の存在へと近付こうと同じような思想を持ったイカレどもによって、オーバーテクノロジーの塊である人口寄生生命体の成功例であるEXとMAKINAは誕生した。
その2つを体内に取り込めば、誰にも負けない上位種になれるとMAKINAは共に逃げ延びた人物から教えられた。今となってはその恩人とも別れてはいるが、その人物と会う機会を考えていなかった。
MAKINAの寄生能力は【軟化】【伸縮化】【身体能力強化】の3つ。EXの寄生能力はそれに対して【硬化】【鋭化】【身体能力強化】と、対比された性質を宿主に与える。
鋭化を発動させた手刀は理論値では最大で鉄の塊2tを真っ二つに斬り裂き、硬化を発動させた肉体は60階立てのビルから飛び降りても無傷で生還するという壊れた性能。
かくゆうMAKINAに寄生された宿主も、クロードみたいに滅多なことが無ければ死ぬことはない。弾丸だろうが何であろうが、貫き通す前に失速し跳ね返す始末。落ちたところで柔らかい肉体が衝撃を分散していくことも可能。
だが今回は相手が相手だ。寄生能力によって人の理から外れた威力を放出するその力は、MAKINAにとっても恐れるべきであるものであった。故にそのための対策を取り万全の状態でもって相手を倒す。
だがその相手、いや正確にはマギウスではなくEXのことになると、MAKINAは気付かぬうちにテンションが下がっている。それに気が付かないクロードではなかった。
「MAKINA.」
『What?』
「Do you hate fighting so much with your brother?」
『…… What is it?』
「Don't blur. The tone of the voice is falling every time the talk of EX comes from a while ago. Why don't you want to fight there? If you defeat Magius, will your brother save you too?」
暫しの間、MAKINAからの声が聴こえなくなった。周囲にたった1人だけ残されたような疎外感を覚えつつも、MAKINAが解答するのを待ち続ける。そんな奇妙な信頼関係は、彼とMAKINAにある相棒としての在り方であった。
やがて溜息にも似た声が聴こえると、姿こそ見えないもののヤレヤレといった雰囲気でMAKINAは答えていく。この関係が利用したものとはいえども、濃密な時間を過ごしてきたのには代わりないからだ。
『Even in this case I was able to hide in various ways in front of you.』
「I've been spending all the time together. I will know some things about you.」
『I know everything about you as well. For example, the word you searched for.』
「I will try not to be apologetic from now on.」
そんな話の最中、クロードとMAKINAは何者かの気配に気付きそちらの方へと視線を寄せる。が、今度は後ろからの気配、そして上からの気配。
上から落下してくる濃密な殺気を持った物体が、路地裏の地面を一部陥没させゴミ箱やゴミ袋が辺りに散乱していく。クロードとMAKINAの視線は一気にその物体の方へと注目していく。
その物体がゆっくりと開かれていく。否、その物体は人間であった。立ち上がっていくと全貌が見えてくる、あの時に見たその姿は絶対に忘れることが出来ない。
「Magius……!」
「It's been a while, boy. I was surprised that a boy like you was causing MAKINA to parasitize.」
「I listened to everything from MAKINA. I can only think of being crazy.」
「What did you listen to?」
「It's all. I hear that you are going to be beyond wisdom, and you can only see what you think is funny. In general, what do you mean by mythological creatures? Are you going to be a Medusa?」
そうしてクロードが言うと、マギウスは顔を俯かせてクツクツと嗤い始める。誰から聞いてもその嗤い声はとても不快感を催すもので、とにかくこの声だけは絶対に聞きたくないと思っている。
「Medusa? Don't be with such inferior beings. Don't be with Dragon, Minotaur, Pegasus or Phoenix. What I aim for is not that weak.
What I aim for is the god's dispatch that gave me an oracle! It's the jealousy of the jealousy to compare with the Zeus!」
本当に頭がイカれているのではないのかと思ってしまうほどの熱弁に、クロードとMAKINAは戸惑った。その熱弁には皮肉や冗談なんてものが混じってない純粋な思いが、彼の言霊となって伝わってきていた。
「That god is so wonderful! I think from the heart that it is the true God that I am right and I wanted to serve it!
Everything comes back to MAKINA with the guidance of my Lord!」
「It's bad, but I don't think that would make MAKINA cooperate. I was told that the fanatics would not listen!」
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