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9)不穏な足音
久しぶりに足を向けた店は、まだ開店前だった。スタッフルームでは、開店前の打ち合わせが行われている。
和やかな雰囲気の中、心のどこかがそわそわしているのを感じた。
「あずささ~ん!」
後輩がチワワのようにキャンキャンと泣きながら、梓に抱きついてきた。それが、スタッフルームに入ってすぐの出迎えだった。
「寂しかったですぅ~!俺、梓さんがいないと、ほかの先輩たちにイビリ散らされて、殺されるんじゃないかって~本当っ」
半分冗談のようなその言葉に、梓は思わず笑いを堪えることができず、クスリと零してしまった。
「梓、体調が悪くなったらすぐに言うんだぞ」
先輩の優しい声が耳に入る。
周囲では、冗談が飛び交い、軽やかな笑い声が響いていた。
「オメガなら俺と付き合わないか?」といった冗談も交えながら、暖かい空間が広がっている。
帰ってきたのだ。梓は、幸せに満たされたような感覚を味わった。
「梓さん~!俺ずっと梓さんのことが好きだったんです~!」
再び、チワワのような後輩が泣きついてくる。
「わかったわかった」
アットホームというべきか、楽観的な人間が多いのか、はたまた懐の大きい人たちなのか。
長い間過ごしたこの空間は、二次性を明かした今でも居心地が良い。
オメガというだけで敬遠されることが多い中、多少の不安も抱えていたが、この場所では二次性を気にするような人間はいないと、梓は分かっていた。
この仕事は、癒しを求める人々が通い、彼らに夢を提供する場である。性別に囚われ、苦しみを抱えて助けを求める人々も少なくない。しかし、提供される夢に溺れ、アルファの番になりたくて店に足を運ぶ愚かな者たちがいる一方で、ここにいるスタッフは皆、誠実に客と向き合っている。
そんな芯の強い人間が揃っているのだ。
一言で表すなら、安心感に尽きる。
冗談が飛び交う中、内勤のボーイが開店を知らせにスタッフルームに顔を出した。
「皆さん、出番です」
軽やかな声に呼び出され、スタッフはダラけた気持ちを切り替える。ホストという職業に相応しい華やかなイメージの通り、彼らは一瞬で見違える姿へと変身する。
開店と同時に扉が開かれ、キャストと呼ばれるスタッフが並んで客を迎える。
並ぶキャストの中から、今日の席につく相手を探す者もいれば、常連の決まった人物を指名して入る者もいる。
誰でもいいから席につけてほしい客もいれば、ボーイと話したいだけで来る者もいる。
「ボックス三番、キャストご指名ー」
「VIPキャスト二名無指名です、新人入ってください」
「カウンターにキャストなし希望のボーイ対応です」
数名のボーイが客に気づかれないよう手際よく席やキャストを決め、スムーズに対応していく。
ボーイの気配りに、ボーイ目当てでカウンターで酒を飲み、すぐに帰る者も少なくない。
梓は、最初はボーイになりたいと思うほどに、彼らの仕事ぶりを尊敬していた。しかし、自分にはこんなにも手際よく、スムーズに仕事をこなす力がないと感じ、ただの尊敬で終わってしまう。
次々と客が入り、店内の活気が増していく様子に、久々の気持ちでその空気を存分に味わった。
「梓ちゃん久しぶりー!」
店内が三分の一を埋め始めた頃、女性二人が梓に声をかけてきた。
常連客の雪見と悠里だった。
「復活したんだね?おめでとう!風邪をこじらせたって聞いて心配したよー」
「今日はあずちん指名ねー!片桐さん」
悠里が眉一つ動かすことのないボーイに声をかけると、片桐と呼ばれた男は梓の耳元にそっと口を近づけた。
「白VIP、指名です。梓さん。すみませんが、担当別席なんで新人つけます」
「分かった」
小さな声で指示を受けた。
VIPには白、黒、赤の三つの席があるが、白のVIP席はこの二人がよく利用する。
真っ白な光を浴びて反射させるシャンデリアと、白いファーを纏ったソファ。そして、真っ白な大理石のテーブルが置かれたこの席は、どの席よりも眩しい。梓の黒い瞳や髪が、白の中で一層引き立つ。
女性から見れば、白の効果で最高に輝いて見える場所であり、そこに黒の宝石と呼ばれる梓がいることで、誰も手に入れられない黒い鳥、ブラックロビンを飼っているような優越感を得られるのだ。
「あずちんはブラックロビンみたいだよねー。可愛い」
悠里がシャトー・クリネ ポムロールという赤いワインを飲み干し、気品なく絡む。
ブラックロビンとは、彼女の好きな貴重な鳥のことらしい。悠里は、その宝石のような存在を梓に重ねて表現する。
「毛並みとかさーふわっふわ!あずちん触らせてぇ!」
梓に抱きつこうと悠里が飛び込もうとした瞬間、骨太の頑丈な体つきをしたキャストが二人の間に立ちはだかる。
「確かに梓はブラックロビンのように可愛いが、お前らは黒い宝石を愛せずに持て余している女だね」
彼はニヤニヤと嫌味とも取れる言葉を放ち、二人の邪魔に入った。新人と交代で、席に着くキャストだ。
「おっそーい」
「お前たちが、梓の引き立て役だろーが。ったく、梓はちゃんとした席にいた方が映えるってのに勿体ない……無駄な時間食わせやがって」
「何それ酷くないー?」
軽い冗談を交えながら、信頼関係が生まれている様子が見て取れる。この店のナンバー2と言われる佳充と、悠里たちは幼少期からの友人だった。彼女たちは、佳充との昔からの付き合いで、この店に通い続けている。
梓もこの店に入った頃から、ずっとお世話になっているため、こうしたホストクラブらしくない軽やかな空間には慣れていた。
「ブラックロビンを飼いならす美女ですー」
「絶滅危惧種で貴重な鳥が、お前に怯えて本当に絶滅しちまうだろーが」
「出た!私たちへの誹謗中傷!」
まるで中高生のような会話の中、梓はクスリと笑みを零した。
「ほら見ろ、梓の美しさ!品の良さ!お前らなんて白に潰されて見えもしねぇ」
「輝きすぎて目に映らないやつでしょー?わかるー私たち最強に可愛いから」
悠里が無邪気に笑う。彼女たちの明るい笑い声は、すぐにでも場を明るく照らし始めた。
女性が二人揃うと、どうしてこんなにも強く逞しくなるのだろうか。佳充は、彼女たちの言葉に呆れてしまったのか、言葉を失い、小さくため息をついた。
その表情には、梓に申し訳ないという気持ちがにじんでいた。
「本当、ごめんな。こんなのに付き合わせて」
梓は優しく微笑み、「楽しいからいいですよ」と彼に返した。
「失礼します、梓さん」
腰を低くしたボーイが、梓のすぐ後ろに回り込み、耳打ちで指名が入ったから席を立つよう指示を出した。
「すみません、また呼んでくださいね」
彼女は自身のグラスを一気に飲み干し、空になったグラスを目の高さに掲げた。
「えーいっちゃうのー?」
「あずちん、手が空いたらまた来てねー!」
賑やかな空気に笑顔で返事をし、梓はボーイにグラスを渡した。
「七番ボックス、瀬戸内様です」
「え?」
ボーイの口から告げられたその名前に、梓は耳を疑い、驚きの声を漏らす。
「瀬戸内丸馬様です」
ボーイは梓が聞き逃したのかと思ったのか、再度その名を口にした。
「あーうん……分かった」
モヤついた気持ちが、足を重くする。
大した距離ではないというのに、指定された席までが、まるで冒険者の試練の道のように辛い。
不安と動揺が、梓を襲う。清武との関係を壊して奪った罪悪感と、友情が壊れてしまった後悔が、精神的に吐き気すら覚えさせる。しかし、逃げられる状況ではないし、逃げるわけにもいかない。いつかは、話をしなければならないと心に決めていたことだった。
梓は、決心して足を進めた。どのように、どんな顔をして席まで歩いて行ったのかは、記憶に残っていない。
「やあ、梓。久しぶりだね」
不安を取り除くかのような優しい笑顔と、ふんわりとした声が心地よく耳に届く。丸馬は、いつもと変わらない様子で、梓の顔を見つめていた。
「ああ、久しぶり……だね」
いつもと変わらない丸馬の様子に安堵を覚えつつも、後ろめたさからか、不安が梓を押しつぶしそうになる。
「元気だった?」
丸馬はそれでも、昔のように優しい声で梓に話しかけ続けるのだった。
和やかな雰囲気の中、心のどこかがそわそわしているのを感じた。
「あずささ~ん!」
後輩がチワワのようにキャンキャンと泣きながら、梓に抱きついてきた。それが、スタッフルームに入ってすぐの出迎えだった。
「寂しかったですぅ~!俺、梓さんがいないと、ほかの先輩たちにイビリ散らされて、殺されるんじゃないかって~本当っ」
半分冗談のようなその言葉に、梓は思わず笑いを堪えることができず、クスリと零してしまった。
「梓、体調が悪くなったらすぐに言うんだぞ」
先輩の優しい声が耳に入る。
周囲では、冗談が飛び交い、軽やかな笑い声が響いていた。
「オメガなら俺と付き合わないか?」といった冗談も交えながら、暖かい空間が広がっている。
帰ってきたのだ。梓は、幸せに満たされたような感覚を味わった。
「梓さん~!俺ずっと梓さんのことが好きだったんです~!」
再び、チワワのような後輩が泣きついてくる。
「わかったわかった」
アットホームというべきか、楽観的な人間が多いのか、はたまた懐の大きい人たちなのか。
長い間過ごしたこの空間は、二次性を明かした今でも居心地が良い。
オメガというだけで敬遠されることが多い中、多少の不安も抱えていたが、この場所では二次性を気にするような人間はいないと、梓は分かっていた。
この仕事は、癒しを求める人々が通い、彼らに夢を提供する場である。性別に囚われ、苦しみを抱えて助けを求める人々も少なくない。しかし、提供される夢に溺れ、アルファの番になりたくて店に足を運ぶ愚かな者たちがいる一方で、ここにいるスタッフは皆、誠実に客と向き合っている。
そんな芯の強い人間が揃っているのだ。
一言で表すなら、安心感に尽きる。
冗談が飛び交う中、内勤のボーイが開店を知らせにスタッフルームに顔を出した。
「皆さん、出番です」
軽やかな声に呼び出され、スタッフはダラけた気持ちを切り替える。ホストという職業に相応しい華やかなイメージの通り、彼らは一瞬で見違える姿へと変身する。
開店と同時に扉が開かれ、キャストと呼ばれるスタッフが並んで客を迎える。
並ぶキャストの中から、今日の席につく相手を探す者もいれば、常連の決まった人物を指名して入る者もいる。
誰でもいいから席につけてほしい客もいれば、ボーイと話したいだけで来る者もいる。
「ボックス三番、キャストご指名ー」
「VIPキャスト二名無指名です、新人入ってください」
「カウンターにキャストなし希望のボーイ対応です」
数名のボーイが客に気づかれないよう手際よく席やキャストを決め、スムーズに対応していく。
ボーイの気配りに、ボーイ目当てでカウンターで酒を飲み、すぐに帰る者も少なくない。
梓は、最初はボーイになりたいと思うほどに、彼らの仕事ぶりを尊敬していた。しかし、自分にはこんなにも手際よく、スムーズに仕事をこなす力がないと感じ、ただの尊敬で終わってしまう。
次々と客が入り、店内の活気が増していく様子に、久々の気持ちでその空気を存分に味わった。
「梓ちゃん久しぶりー!」
店内が三分の一を埋め始めた頃、女性二人が梓に声をかけてきた。
常連客の雪見と悠里だった。
「復活したんだね?おめでとう!風邪をこじらせたって聞いて心配したよー」
「今日はあずちん指名ねー!片桐さん」
悠里が眉一つ動かすことのないボーイに声をかけると、片桐と呼ばれた男は梓の耳元にそっと口を近づけた。
「白VIP、指名です。梓さん。すみませんが、担当別席なんで新人つけます」
「分かった」
小さな声で指示を受けた。
VIPには白、黒、赤の三つの席があるが、白のVIP席はこの二人がよく利用する。
真っ白な光を浴びて反射させるシャンデリアと、白いファーを纏ったソファ。そして、真っ白な大理石のテーブルが置かれたこの席は、どの席よりも眩しい。梓の黒い瞳や髪が、白の中で一層引き立つ。
女性から見れば、白の効果で最高に輝いて見える場所であり、そこに黒の宝石と呼ばれる梓がいることで、誰も手に入れられない黒い鳥、ブラックロビンを飼っているような優越感を得られるのだ。
「あずちんはブラックロビンみたいだよねー。可愛い」
悠里がシャトー・クリネ ポムロールという赤いワインを飲み干し、気品なく絡む。
ブラックロビンとは、彼女の好きな貴重な鳥のことらしい。悠里は、その宝石のような存在を梓に重ねて表現する。
「毛並みとかさーふわっふわ!あずちん触らせてぇ!」
梓に抱きつこうと悠里が飛び込もうとした瞬間、骨太の頑丈な体つきをしたキャストが二人の間に立ちはだかる。
「確かに梓はブラックロビンのように可愛いが、お前らは黒い宝石を愛せずに持て余している女だね」
彼はニヤニヤと嫌味とも取れる言葉を放ち、二人の邪魔に入った。新人と交代で、席に着くキャストだ。
「おっそーい」
「お前たちが、梓の引き立て役だろーが。ったく、梓はちゃんとした席にいた方が映えるってのに勿体ない……無駄な時間食わせやがって」
「何それ酷くないー?」
軽い冗談を交えながら、信頼関係が生まれている様子が見て取れる。この店のナンバー2と言われる佳充と、悠里たちは幼少期からの友人だった。彼女たちは、佳充との昔からの付き合いで、この店に通い続けている。
梓もこの店に入った頃から、ずっとお世話になっているため、こうしたホストクラブらしくない軽やかな空間には慣れていた。
「ブラックロビンを飼いならす美女ですー」
「絶滅危惧種で貴重な鳥が、お前に怯えて本当に絶滅しちまうだろーが」
「出た!私たちへの誹謗中傷!」
まるで中高生のような会話の中、梓はクスリと笑みを零した。
「ほら見ろ、梓の美しさ!品の良さ!お前らなんて白に潰されて見えもしねぇ」
「輝きすぎて目に映らないやつでしょー?わかるー私たち最強に可愛いから」
悠里が無邪気に笑う。彼女たちの明るい笑い声は、すぐにでも場を明るく照らし始めた。
女性が二人揃うと、どうしてこんなにも強く逞しくなるのだろうか。佳充は、彼女たちの言葉に呆れてしまったのか、言葉を失い、小さくため息をついた。
その表情には、梓に申し訳ないという気持ちがにじんでいた。
「本当、ごめんな。こんなのに付き合わせて」
梓は優しく微笑み、「楽しいからいいですよ」と彼に返した。
「失礼します、梓さん」
腰を低くしたボーイが、梓のすぐ後ろに回り込み、耳打ちで指名が入ったから席を立つよう指示を出した。
「すみません、また呼んでくださいね」
彼女は自身のグラスを一気に飲み干し、空になったグラスを目の高さに掲げた。
「えーいっちゃうのー?」
「あずちん、手が空いたらまた来てねー!」
賑やかな空気に笑顔で返事をし、梓はボーイにグラスを渡した。
「七番ボックス、瀬戸内様です」
「え?」
ボーイの口から告げられたその名前に、梓は耳を疑い、驚きの声を漏らす。
「瀬戸内丸馬様です」
ボーイは梓が聞き逃したのかと思ったのか、再度その名を口にした。
「あーうん……分かった」
モヤついた気持ちが、足を重くする。
大した距離ではないというのに、指定された席までが、まるで冒険者の試練の道のように辛い。
不安と動揺が、梓を襲う。清武との関係を壊して奪った罪悪感と、友情が壊れてしまった後悔が、精神的に吐き気すら覚えさせる。しかし、逃げられる状況ではないし、逃げるわけにもいかない。いつかは、話をしなければならないと心に決めていたことだった。
梓は、決心して足を進めた。どのように、どんな顔をして席まで歩いて行ったのかは、記憶に残っていない。
「やあ、梓。久しぶりだね」
不安を取り除くかのような優しい笑顔と、ふんわりとした声が心地よく耳に届く。丸馬は、いつもと変わらない様子で、梓の顔を見つめていた。
「ああ、久しぶり……だね」
いつもと変わらない丸馬の様子に安堵を覚えつつも、後ろめたさからか、不安が梓を押しつぶしそうになる。
「元気だった?」
丸馬はそれでも、昔のように優しい声で梓に話しかけ続けるのだった。
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