タングルド(修正版)

柴楽 松

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 身体の火照りが徐々に冷めていき、二人はベッドに横たわりながら、穏やかな時間を共有していた。正隆が静かな口調で話しかける。

「言っておくが、コーヒーはアメリカンが好きなだけで、甘いのが好きなわけじゃない。食堂のコーヒーが毎度エスプレッソみたいに濃いだけだ」

 その言葉を口にした正隆は、頬を少し赤らめ、照れ隠しのように顔をそむけた。その仕草が何だかとても愛おしく、光広は思わず笑いが込み上げてきた。

「ふっ……なんだよ、その言い訳」

 光広がクスリと笑った瞬間、正隆はますますムスッとした表情を浮かべながらも、耳元がほんのりと赤くなるのがわかる。それがまた、正隆らしくて可愛らしい。

 光広はその姿を見つめた。

「これから、もっとお前のことを知っていきたい」

 二人には、まだまだ知らないことがたくさんあるが、そんなことを気にせず、ただ一緒にいられることが嬉しくてたまらなかった。お互いの知らない部分を、これから少しずつ、二人で紡いでいけると思うと、胸が温かくなる。

 二人は番となった。それは、ただの契約でも義務でもなく、心と心が深く結びついた証。互いに誓った一生を共に歩むという強い意志のもとに交わされた、真実の誓いだった。

 そして、日常へと戻る時が来た。
光広は大学に向かう途中、心の中でやらなければならないことが三つあることを思い出した。

 一つ目は、婚約指輪を返すこと。そして、二つ目は沖本に番ができたことを報告することだ。これらは、どちらも避けて通れない重要な仕事だった。

 鉄平に指輪を返したとき、彼の反応は冷たく、怒りをあらわにされたが、光広はそれを受け入れた。
何も言わずに指輪を返すことで、すべてが終わったと思っていた。しかし、沖本に話したときは、まったく違った反応が返ってきた。
 沖本は目を見開いて驚いた後、すぐに明るい笑顔を浮かべ、力強く「おめでとう!」と拍手を送ってくれた。その応援の言葉に、光広は胸が温かくなった。

 沖本にも実は好きな人がいた。その相手はベータ男性で、身長が高く、容姿が整ったイケメンだった。光広が嫉妬させようと沖本に付きまとっていたことを聞いた時、正隆は一瞬、拳を握りしめたが、それでも彼を傷つけないようにと自制した。

 その二つの用事を終えた後、光広と正隆は、最後の大切な仕事のために街へ向かった。

 光広のアパートの解約手続きと引っ越しも必要だったが、それはすぐにできるわけではない。日を改めて、時間をかけて行うことに決めた。

 今日は二人にとって特別な日だ。

 お揃いの指輪を買うための、記念すべき一日。

 夏の訪れが感じられる季節。陽射しが強くなり、二人の新たな生活も始まろうとしている。

 二人は番となり、そして夫婦として、心をひとつにして歩んでいくことを誓った。

その誓いは、ただの言葉に過ぎないかもしれないが、光広と正隆にとっては、何よりも大切な約束となった。
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