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新規任務準備編
42.おいしいごはん!
しおりを挟む気づいたら朝だった。いや、朝というよりも昼に近い時間だろうか。全身がゆらゆら揺れているのに気づいて、ほやんと目を開く。すると、間近にドゥシャンの顔があって、驚きでひゅっと息を吸い込んでしまった。その音で、私が起きたことに気づいたのだろう、彼は「クンツちゃんが起きたから、休憩にする」と声を上げた。
それで自分がベッド代わりの籠の中にいて、寝ながら運ばれていたことを理解した。ドゥシャンがゆっくりと速度を落として止まる。草原だった時とは違い、周囲には木々が生い茂っているのがわかった。その場に膝をついた。
あくびをしながらもそもそと動くが、籠を固定されているのであまり動けない。寝起きの微睡みで、ついうつらうつらとしてしまう。少し待っても籠が下ろされず、私はぼんやりドゥシャンを見上げた。
私はなにもせずに、連れてもらっている立場で、偉そうではあるのだが、凝り固まった身体を動かしたいので早く降ろしてほしい。
ドゥシャンは、やや呆れを含んだ表情で、ため息をついた。なにやら言い争う声が聞こえてくる。
「なにかあったのか?」
「いや、アーモスとユストゥスが、どちらが布ひもを取って、最初にクンツちゃんに挨拶するかで揉めている」
言いながら、ドゥシャンが若干遠い目をした。言葉の意味を理解した私も、つい出そうになった「くだらない」という言葉を飲み込んだ。
「それならば、慣れてるアーモスにお願いしたい」
「助かる。……アーモス!ご指名だ、お前がやれ」
こちらから指名すれば、ドゥシャンも頷いてくれた。
ユストゥスに頼んでも丁寧に下ろしてくれそうだが、私は現状この護衛2人に引率される身だ。頼むならアーモスに頼むのが筋だろう。というか、ユストゥスはなぜそんな役目に立候補したのだ。
「りょーかいっ!」
すぐそばでアーモスの声がする。と思ったら、すぐさま籠が下ろされた。ぴんと立った金の耳が見える。ようやく自由になって、私は身体を起こした。
ほぼ一日走っていた昨日の草原や遠くに農村の畑が広げる光景とは違い、そこは森林の中の道端だった。
「おはよクーちゃん!」
「おはようアーモス」
昨日の朝はとても気まずい挨拶だったというのに、今日のアーモスは笑顔だ。嬉しい。つられて笑うと、途端にアーモスが照れた。少しだけ気恥ずかしそうにしながら、アーモスは手を伸ばして私の頭を撫でた。
「耳、昨日ずっと垂れてたけど、今日は元気だな、良かった」
えっ。ずっと耳垂れてたのか?ここには鏡もないから知らなかった。さわさわと優しく撫でてくれていたのだが、その手が耳の付け根に触れると、少しだけ首筋がぞくっとしてしまう。
「ん……」
「っごめん!さ、さーて、クーちゃんのごはん用意するからな!」
アーモスは籠の前に私の靴を置くと、そう声を張り上げながら離れていってしまった。ドゥシャンは背負っていた荷物を下ろして水をがぶがぶと飲んでいる。それを見て、私も喉の渇きを覚えていると、ユストゥスが金属のコップを持ってきてくれた。
「ほら水。……少し、声が嗄れたな」
「ありがとう。声が嗄れたのは、お前のせいだろうユストゥス」
じろりと睨みつけても、ユストゥスは飄々としていた。コップには水の魔石が沈められていて、一度飲み干すと軽く振る。染み出してきた水をもう一度飲み干した。水分を取って落ち着いたところで、鼻をくすぐるいい匂いがしてきた。小鍋に調味料を入れて少し大きめの肉も投入されている。ごはん……ごはんだな。
ぐううっと腹の音が鳴った。咄嗟に手で腹を抑える。おいしそうだと、頭では、鼻ではそう思うのだが、違う欲求に刺激されて、私はもぞ、と膝をこすり合わせた。それを見たユストゥスが、意味ありげに笑いながら私からコップを受け取る。
<トイレに行きたいって言え>
「すまない、排泄してくる」
ユストゥスの手話に、私は立ち上がってそう伝えた。私のあけすけな言葉にユストゥスは目を見開き、苦笑した。ドゥシャンもアーモスも最初は似たような表情をしたのだが、何か間違ってただろうか。いや、何も間違ったことは言っていないぞ。
「おっさん、俺が同行する。いいよな」
「ちっ……なるべく早く戻れよ」
「えっいいのかよドゥシャン!なんなら俺が一緒に行く」
私を1人にできないのか、たいていドゥシャンかアーモスが同行してくれて、野営地とは少し離れたところで済ませるのだが、今回はユストゥスが同行してくれるらしい。随分親し気になってないだろうか。……むう。
苦々しく頷いたドゥシャンに、アーモスが声を張り上げた。
「お前はクンツちゃんの食事の用意をしてくれ。人手があるんだ、分担していいだろう」
「けど……!」
<俺と2人きりになりたいとか、そういういい感じの事言って、断れよ。メシ、食いたいだろ?>
納得しないアーモスに、ユストゥスがそんなことを言ってくるが、誰がお前と2人きりになりたいなんて言うか。
「アーモス」
ドゥシャンに詰め寄るアーモスに近づくと、私は目を伏せた。
「その、アーモスやドゥシャンに、お、音を聞かれるのは、少し、気になるから、申し訳ないが、許してもらえないだろうか」
戦場では、その辺りで用を足すことも多いから、基本は私も気にも留めないのだが、元々少し、こう、心に来るものがあったのだ。2人はそれぞれ好きなタイミングで行くのに、私だけ付き添いがあるのは、やはり落ち着かない気分になる。
「は……そ、そうだよね!?ご、ごめんね!クーちゃん、男の娘だもんな!気が利かなくてごめん!」
「確かに私は男だが……?と、ともかく、理解してくれてありがとう。行ってくる」
何とも言い難い表情でそわりとしたドゥシャンとは別に、アーモスはぶんぶんと真っ赤な顔を横に振って、わかってくれた。よかった。ただでさえ面倒な仕事だろうに、これで彼らを付き合わせないで済む。
「ほら、ユストゥス行くぞ」
「ああ」
何か言いたげなユストゥスの胸板を軽く叩く。ぱたぱたと尾を振っていた狼は、軽く周囲を見回して、「こっちだ」と私を促した。まるでどこかいい場所を知っているかのような自信のある歩みだが、5分程度歩いた、適度に木々が生い茂り、下草は少なめの場所ところで足を止めた。
「この辺りなら、匂いは辿れるが声は聞こえない。お前が大声出さなきゃな」
「……今更だが、こんなところでおまんこするのか」
夜は淫紋のせいで、周囲の環境なんて気にもならなかった。でも日中の今は違う。風は緩やかに吹き抜け、太陽の光は葉を透かして差してくる。腕輪のおかげで耳もいいから、動物や虫の鳴き声も聞こえてくる。
どこからどう見ても遮られた場所などではなく、屋外だった。
「ほんとはいっぱい舐めてやりたいんだが、今はしょうがない。セックスじゃなくて、これは完全に餌付けだな。夜はたっぷり、セックスしようなー」
ふにふにとユストゥスが私の唇を揉んでくるので、薄く口を開く。狼は私に覆いかぶさってきて、ねっとりと舌を絡ませた。
「っふ……どう、違うんだ。どちらも、おまんこするのではないか」
「んー?そうだなぁ。お前、前に俺がキスしなかったとき、泣いただろ。あれは完全に注ぐだけって感じだったはずだ。覚えてるか?」
急にユストゥスが気分の悪いことを言いだすから、私は顔をしかめてしまった。あの、朝もそのあとも、ちゃんとあいしてもらえなかったときのことは嫌な思い出なのだ。それをするだと。むっと私はユストゥスを睨みつけた。
「泣いていない」
「いや、そこは置いといて」
「泣いていない」
「……」
「泣いてなどなかった。あともっとキスしろ。キスしながらあいして。それ以外は許さない」
こんな気分にさせるユストゥスが悪い。他の人は別にそれで構わないが、ユストゥスは私の狼なのだから、私に対してはもっと誠意をもって接するべきなのだ。
口元を手で押さえたユストゥスは、どことなく赤い顔で私の頭を撫でてくる。指で摘ままれて初めて、熊耳がへにゃりと垂れていたことに気づいた。耳を、模造品のはずの熊耳を触られると、ぞわぞわする。
「……ああもう、かわいーなお前。わかった、泣いてなかったな。キスもするから、そこの木に手をつけ」
そこ、と指さされた気に手をつくと、しゃがんだユストゥスに一気にズボンと下着をひざ下まで下げられた。
「な……」
「ちゃんとくちゅくちゅしてから、ちゅーしつつハメてやるからな。ねっとりセックスは夜で、今は短時間にしっぽりエッチしてやる。腰砕けになんなよ?」
にや、と笑った狼は、そこでじゅっと私の尻に顔をうずめて魔肛を、おまんこを舌で愛撫し始めた。入り口にちゅっと吸い付き、浅く舌を抜き差しする。
もう片方の手では、私の尻尾を優しく揉んで、根元をくすぐり始めた。前にも手を伸ばされる。
すご、すごい。なんだかよくわからないが、ぜんぶ、いっぱい、しげきされている……!
「ひぁっ、あっ、ぁあっ」
尖った舌先で、明確に前立腺をくすぐられた。木に顔を擦り付けるようにして私は息を乱す。手を、手を木につけというのは、こういうことか!
にゅぽにゅぽと分厚い舌が、奥を開き、じゅっと淫液を吸いつつ、唾液をナカに含ませる。堪らない。がくがくと腰が震えた。足を開きたいのに、服が拘束となって開けないのも、焦らされているようで興奮してしまう。
それに、しっぽが、しっぽはだめ、だ……。どうしてこんなにっ。まるでもう一つ性器が増えたような感覚だった。陰茎と、魔肛と、尻尾を……しっぽをさわるのはやめてほしい。今までなかったところだからなおさら、快感が生まれることで身体が勝手に跳ねてしまう。
「あーうっま。子熊のまんこはおいしいなあ。えっろい味して、堪んねえ……」
「っ……そういう、ことを、いうなっ!!」
「怒鳴るなって、バレるだろ?」
その言葉に、私ははっとして、手で口を抑えた。広げようとしてくる舌と指を、きゅううっと締めてしまう。そうだ、こんな外で……!
「っ、いてえぐらいきゅうきゅうしてきやがる。っはは、子熊は舐められるの好きだもんな」
じゅぽっと舌を引き抜いたユストゥスが嬉しそうに笑う。ちがう、そんな、わたしは。
「きでは、ない……っあ、ああんんーっ!」
反論すると、また一気に舌を、奥の方まで差し入れられてしまった。はしたなく喘ぎ声が出てしまう。ユストゥスの舌は厚く長めだが、それでも、一番奥の、欲しいところには届かない。でもいつものようにねだれば、私は嬌声を上げてしまうことだろう。
こえは、だすなと、いわれたのだから、がまんせねば。
ぎりっと私は奥歯を噛み締めた。
時間にしてみれば短いものだろうが、私にはとても長く感じられた。ユストゥスが達しそうになるとぎゅっと前を握って焦らすから、快感の余韻で腰がだらしなく揺れてしまう。
「さて、と」
舌を引き抜き、性器と尻尾から手を離された時点で、私は木に縋らなければ立っていられない状態だった。私の獣耳は小さく濡れた音を拾い、ちらりと視線を向ければ、ユストゥスが私の下半身を眺めながら、自分自身をしごいていた。
あれが、なかに、はいる……。
「っ」
前からもとろりと先走りが溢れたが、じゅわりと魔肛が、期待に愛液を滴らせた。ユストゥスのまえで、こんな、なぜ、はずかしい……。
「おーぉ。そんなによだれたらさなくても、ちゃんと入れるって」
……この男は、私の狼は、喋らない方が、いいな。欲望を見せないでほしい。そんなに、私を貪ろうとしないでくれ。
今まで感じなかった羞恥に、私はぎゅうと木に抱き着いて力を込める。みし、となにやら繊維がきしむ音がした。背後ではわずかにユストゥスが息を飲む。……どうした、いれないのか。
「ユストゥス……?」
「あ、うん。入れる。今入れる」
一瞬ぼんやりしていたユストゥスは、おちんぽを私の肉膣に押し当てると、ずぶずぶとなんなく沈めてきた。
「っは、ぅう……っ」
奥まで入ると、ゆっくりを覆いかぶさり、私の顎を掴んでよじってくる。そして突き上げながら口づけをしてくれた。……ん、ユストゥスの舌、おいしい。
「ん、んっぅ、んー、んっ」
ちゅっちゅっと舌に吸い付いて、ユストゥスから与えられる刺激に目を閉じながら、腰を揺らす。ほんとうにユストゥスのおちんぽは私のナカとぴったり誂えたように合う。きもちいい。奥を、手前を激しく突き上げられ、舌先を甘噛みされる。
「んぁ、っむ、……っちゅ、んっん、んーっ!!」
突き上げられ、小刻みに揺らされる。ちかちかと目の前が瞬いた。亀頭に突き回された奥が震えるのと同時に、ユストゥスに精液を注がれる。自分の意思とは関係なく、なぜか、腰が前に逃げてしまった。でもそれをユストゥスは腰を掴んで抑え込む。逃げた私を叱るように、おくの結腸ちかくを、ちゅぷちゅぷなぶりながら、熱い体液を吐き出した。
「っぷはっぁ、ぁあ、あぁあ……っ」
絶頂にぶるぶる震えた私の口からは、か細い声しか出なかった。ユストゥスは軽く息を弾ませているのみだ。動きもしなかったが引き抜きもせず、しばらく私のナカに留まった。
「そうだ、このままおしっこ出してみろ」
ふと思い出したように、ユストゥスがそんなことを口にした。
「……なぜ」
「もともとそのために来たんだろ、証拠がないわけにはいかないだろ。ほら」
「?わかった。出せばよいのだな」
急に今言われた意味が分からず、戸惑いながら頷く。すると、ユストゥスに下腹を押された。白濁を吐き出したばかりの揺れる性器を掴まれ、方向を定められる。他人の手に性器をゆだねて排泄など、物心ついてからは初めてで、少し、なぜか背筋がぞくっとした。
「ん……」
ちょろ……っと吐き出された小水は、やがて大きな音を響かせながら、量と勢いを増す。……ナカに押し込まれたものが、みるみるうちに、大きくなっていく。どうして、こんなことで、性器が勃つのだろうと思ったが、不思議なことに、私のペニスも少し勃起してしまっていた。幾分扱いにくくなった性器を、ユストゥスは構わず握っててくれたので、全てを出し切る。
「きもちいーか、クンツ」
「ああ、きもちいい」
「俺の手に握られて、後ろハメられたまんま、おしっこ漏らすの、そんなにきもちよかった?」
「……」
そんな聞かれ方をするとは思わなかった。少し戸惑って、困惑する。でも身体の反応は違っていた。じん、と下腹部に灯った熱に、私は熱い息を吐き出す。そんな私に、ユストゥスは少し苦笑しながら私の獣耳を甘噛みした。
「んー羞恥心は、まだその時々で違うか。もう一回注いでから戻ろうな」
「ん」
こくんと頷くと、ユストゥスはまた、とびきり甘いキスをしてくれた。
腹をいっぱいにしたところで戻り、私はまた別の食事を取っていた。使うのはもちろん、転移機能付きのカトラリーである。
渡された器いっぱいに盛られた食事に申し訳なさが先立つが、ユストゥスに<黙って食え>と指示されたので、気合を入れて、食べているふりをした。味はこんな野外で食べられるとは思えないほどおいしい。
森の中をさわやかな空気が吹き抜ける。木陰だとまだ少し肌寒いが、こうして日の下で食べるとよりおいしい。
昨日とおそらく作り方はそこまで変わってないはずだが、昨日よりも絶対今日の方が美味しかった。
「ありがとうアーモス、美味しい」
「ううん良かった。クーちゃん全然食べないから心配してたんだ。いっぱい食べてくれて嬉しいぜ」
へへへっと笑うアーモスは、少し見た目より幼く見えた。が、すぐさま私の隣に座った男に殺意を向ける。尻を、というか尻尾をふみふみと揉みながら、身を寄せるユストゥスに、私もちょっと鬱陶しさを感じていたところだった。尻尾だけを触られると、確かに気持ちよくはあるのだが、先ほどのように性器と錯覚するほどではない。
「クンツ、俺にも少し分けてくれよ。あの狐、俺にはくれねえんだぜ?マジひどい」
「お前のために作ったんじゃねえ!クーちゃんのためのメシなんだよ!あっ食うな!」
ユストゥスが口を開いて指さしてくるので、ここぞとばかりにユストゥスの口にスプーンを押し込む。転送自体は微量の魔力を通せば作動するので、逆に言えば、魔力を通さなければ、ユストゥスにも普通に食べさせてやれる。
「せっかくこれほどおいしいのだから、皆で食べればよいと思う」
「そーだそーだ」
「くっ……おっまえ……!」
もぐ、ともう一度スプーンを咥えて、ほとんどを転送し、表面についた味だけを舐めとっていると、いらいらとしているアーモスにぴんと来た。そのスプーンで、いそいそとユストゥスにしたように大きく掬い上げ、アーモスを見る。
「アーモスも食べればいい。ほら」
器を下にして、零さないようにしてみれば、ぼんっとアーモスの顔が真っ赤になった。尾も、なぜか大きく膨らんでいる。
「い、いや俺は……」
「じゃー俺がもらう。クンツ、あーん」
「ふっざけんなこの!死ね!俺が食う!!」
がんっとユストゥスを蹴って椅子代わりに座っていた石からずり落ちたところで、アーモスが空いた隣に陣取り、私のスプーンにぱくんと食らいついた。もぐもぐと頬張り、嬉しそうにしている。ふむ。
「おいしいだろう?アーモスは料理の天才だな」
「ぉ、いしい。うん、おいしい……」
「ふふ」
口を手で押さえながらもごもごつぶやくアーモスに、私も嬉しくなって笑いながら、もう一口ぱくっと自分でも食べる。それからちろりと、真正面にいる、地面に直接腰をおろしていたドゥシャンを見た。さっと顔を逸らされる。
「……い、いや、俺はいらん。いらんぞ」
「私の匙では食えないか……?」
こうして一つの器から食べるのは、行儀が悪いということは十分に理解している。でも捨てる羽目になるのはもったいないし、なるべくなら食べてほしい。スプーンを咥えたまま肩を落とすと、アーモスに蹴られたユストゥスが立ち上がった。
「諦めろおっさん。食ってやれよ。そいつ天然たらしだから後が怖いぞ」
たらしとはいったいなんだろう。よくわからないが、あまりいい意味で使われてなさそうだ。
「やめろユストゥス。すまない、ドゥシャン。私の匙では嫌、だろうな。無理を言って悪かった」
ああでもドゥシャンが食べてくれたら、だいぶ減るのだ。そうすれば私も一口ぐらいは普通に味わって、終わりにすればいい。しゅんと目を伏せたまま器を眺めていると、ドゥシャンが上ずった声を上げた。
「……嫌じゃねえ。食うから、食わせてくれるか?」
「!」
ドゥシャンがやや複雑そうに、耳をぴこぴこ動かしながらそう言ってくれた。いいっていったぞ。やはり嫌だと言われる前に、食べさせてやろう!
私はいそいそと立ち上がると、胡坐をかいたドゥシャンの膝に腰をおろした。なにやら向かい側から変な声が複数上がったが、それよりドゥシャンに食べさせる方が先決だ。
「ほら、どうぞ。……な、おいしいだろうドゥシャン」
戸惑った巨漢が薄く口を開けた瞬間に、スプーンをねじり込む。もぐ、と口を動かしたのを見て、私は満足した。そのまま、器の残りを自分の口に運ぶ。今度こそ、ちゃんと口の中で味わっていると、ドゥシャンの大きな手が、私の頭をゆっくりと撫でた。耳の付け根には触れず、優しく髪を梳いてくる。
あー気持ちいい。ドゥシャンに頭を撫でられると、ベッカーを思い出す。帰るときには土産を買って帰らなければ。先輩方も、エリーアス様にも、バルタザールにも。
「…………あー。ユストゥス、国境渡ったら、少し話がある」
「お、おう」
なんだかそわそわしているユストゥスにアーモスを見ながら、私は食事を終えた。
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