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王都防衛編
105.改善された食生活
しおりを挟む部屋に設置されたハンモックは、ちょっとした休憩時に重宝した。ジュストを抱いて軽く揺らして横になるだけで、驚くほどすとんと眠りに落ちることができる。
私が寝ていると数回に一度、起きるときにユストゥスが顔を覗き込んでいることがあるのだが、目を覚ました際に、すごく柔らかな表情でこちらを見ていることがある。そんな時、私を見ているようで、見ていないような気がする。
たいてい、その後は私が性交を強請るので、ユストゥスのカリ高おちんぽを咥え込むことが多かった。本当にユストゥスのおちんぽは気持ちいいのだが、微妙にしっくりこないのがもどかしい。
リビングに設置された大人のブランコは、皆にほどほどに使用されていた。なぜだかよくわからないが、頻度の高さで言えば私が多い気がする。リビングの使用権は奴隷が持っているので、誘われたら騎士には断れない。無論、よほど嫌であれば断るが、基本的にエッチが大好きな魔肛持ちの騎士が断ることは少ない。少なくとも私は一度も断ったことがなかった。浮遊感はまだ少し怖いが、おまんこしたい欲求には敵わない。
大人のブランコは、ベルトで多少身体を固定するので、身体に痕が残ることがある。ユストゥスはあまりいい顔はしないが、それを使用する相手を聞くと、大抵渋い顔になる。
<またこんなに痕を残して……今日は、誰としたんだ>
「だれ?ああ、お前たちの夕食前に、エイデンが相手してくれたぞ。そのあとにジルケとしたが、この痕が残ったのは、エイデンがブランコに私を乗せたせいだな」
夕食を取ることがない騎士たちとは違い、奴隷たちには食事が用意される。その最中は静かでよいが、それが終わると今度は騎士たちの食事の時間だ。専用奴隷相手にぱかりと足を開いて、後孔にペニスを挿入してもらい、精液を注いでもらうのだ。
今日も朝に引き続き、夜に精液を注がれて、ゆっくりとくつろいでいる時に、ユストゥスは私の腹部や腰回りに残ったベルトの痕を見て、顔をしかめた。臀部も叩かれたので、うっすらと赤くなっている。若干熱を持ったそこに、ユストゥスがくわっと怒る仕草をするのが少しだけ不思議だ。
<エイデンと?またか!あいつ、最近多くないか?>
「そうか?今日は前々から約束していた、クリス先輩とのお茶会の日だったからな。……そういえば、最近は私とお茶会したあとは、だいたいエイデンがおちんぽをくれるようになったな?」
ユストゥスはゆっくりと手話をしてくれるが、私は理解するのに時間がかかってしまう。いちいちじっとその手を見て、教材を思い出さなければ、手話が脳内で言葉に化けてくれない。だが会話がワンテンポ遅れても、ユストゥスは気にならないようだった。
アルコールを飲んだ後に突っ込むと、熱くて気持ちがいいらしい。と笑うと、ただでさえ目つきが悪いのに、凶悪そうな顔になる。せっかく顔は整っていて、形の良いおちんぽをしているのだから、エリーアス様のように朗らかにしていればよいものを、と思うが、この男は怒らせた方がおちんぽをギンギンにしてくれるので、好きにさせていた。
そういう話であれば、クリス先輩の専属奴隷であるエイデンも、私に入れるときは、だいたい怒っている。大抵嫉妬だ。
エイデンは、私がクリス先輩と仲良くしていることが気に食わないのだ。
私はほとんど酒を飲んだことがない。貴族は夜の社交界でいろんな話をすると聞くが、家は名門としていても、家長を父に持っていたとしても、私は単なる使い捨ての騎士である。夜会になど参加したことなどない。酒もほとんど飲んだことがないので、クリス先輩のところで、少しだけ分けてもらうブランデーを紅茶に垂らして飲むのが精一杯だった。
ただその少しの香りづけに使う程度でも、私は酔ってしまうらしい。クリス先輩がそう言うのだから間違いない。私は酔っているのだ。そうなると何となく人肌が恋しくなる。そして部屋にいるのはクリス先輩である。
そうなると、触るだろう。クリス先輩に。
クリス先輩は身体の大部分は触れられることを、あまり好んでいない。だから手を握る。握ったまま話をする。私とクリス先輩は、それだけで楽しく会話が弾むのだが、専属奴隷のエイデンはクリス先輩に惚れこんでいるので、触るなと怒る。
怒るのに、おちんぽを勃たせているのだ。不思議だな?
エイデンは、普段は他の騎士にはあまり挿入しない。クリス先輩の専属奴隷となる奴隷は、なぜかその傾向が強くなるらしい。そのせいで、前の奴隷は不適格と見なされ、寮を後にしたという話を、私は誰かに聞いた気がする。誰に聞いたか覚えていないのだが、確かそんな話だった。クリス先輩は、どうにも身体の触れ合いが多い相手を、偏執的な性癖に変えてしまうらしかった。
確かに、クリス先輩は穏やかで優しいのだが、妙に艶めかしい表情や、色っぽい仕草をする。動作の一つ一つは普通でも、全部を兼ね備えると、色香が際立つのだ。クリス先輩はこう言っては何だが、見た目がそこまで派手ではなく、枯れ枝のようなのにそのギャップがすごい。枯れ枝のようだ、とは本当にうっかり、間違ってクリス先輩に言ってしまったことがあるのだが、平謝りした私に、嬉しそうに笑ったのが印象的だった。
「おい、もうそんな気にするな。それほど痛くもないしじきに治る」
性交するわけでもないのに、身体を撫で回されるのは気になる。私がそう告げると、ユストゥスはむっつりと不機嫌そうな表情のまま、首を横に振った。
<俺の許可もないのに、クンツの身体に痕を残すのは駄目だ>
「ああ、そういえばそんな規則もあったな。私の身体など、…………何でもない」
誰が何をしても良いのに、と続けようとしたところで睨まれたので、私は口を閉じた。ユストゥスが専属奴隷として私に付いてから二週間経とうとしているが、この男も大概メンドクサイ。
ほかの者には私を抱くように……というか、他の騎士たちにも時々は手を出すように指示を出しているくせに、こうして私の身体に他人の痕を見つけると、性行為に怒気を孕む。
そのくせ、私に触れる手は、とても優しくて甘い。今も何かを探すかのように、私の頭頂部を撫で、髪を梳いた。
「エイデンは悪くない。私とクリス先輩が、少し悪乗りしたのだ。手を握りあって、接吻したせいだろうな」
うんうんと1人頷いている私をよそに、ユストゥスが目を剥いていた。
多分あの時、クリス先輩もほろ酔いだった気がする。初めて飲むという、ジギー先輩からのもらい物のブランデーで作ったブランデーティーは、いつもの同じく紅茶に対して数滴しか入れていなかったにも関わらず、香り高く飲みやすかった。話が弾み、互いに二杯は飲んだ。多分それがダメだった。
二杯目を飲み切った後に、ぼんやりと私の唇を見たクリス先輩が、柔らかそうですね、と言ったのだ。
「ディー先輩ともたまにするのだが、やはり口づけは気持ちがいいものだな。ふわふわして、何度でもしたくなる」
クリス先輩の部屋には紅茶を嗜むため、それ専用のテーブルがある。普段は1人で楽しんでいたせいか、私が部屋を訪れるようになってから、真新しい椅子が一つ増えた。それもエイデンの怒りの原因らしいが、私にはどうしようもない。お茶会を開くのに、片方が立ったまま飲むなどしないからな。
隣り合って手を繋いだままお茶を飲む距離は近く、そのまま唇を重ねるには容易かった。最初に軽くキスを仕掛けたのは私だが、二回目は、「やっぱり柔らかいですね」と少しだけ驚いた表情を浮かべたクリス先輩の方からだった。
<おま……おまえ……>
わきわきとユストゥスが手を動かすが、言葉になっていない。よもやクリス先輩がそういった接触を自らするようなことが、ほとんどないとは知らない。そしてその点は、ディー先輩も同様だった。
「ああ、お前たちのように、無遠慮に舌を入れることはないぞ?軽く重ねて、互いに唇を舐めた程度だ。それを部屋に戻ってきたエイデンに見られてな」
<くっそなんだよそれ、俺も見てえ。あのクリスが、自分からキス??それにディーともしてるって、お前……それは、なんていうか……>
「すまない、もう少しゆっくり手を動かしてくれ」
ユストゥスが何を告げたいのかわからなかった。たまに独り言のように速く動かすこともあるのだが、今日は少し遅い。なんだと問いかければ、軽く首を横に振られた。
<お前恐ろしいな。魔性かよ。そういう意味じゃ、無意識に男を魅入らせるクリスも魔性だし、わかってて振舞うエリーアスも魔性だが、おまえ、そういう群青騎士ばっかり誑し込むなんざ……はー……俺の子熊もそういう意味じゃ、始末が悪いな>
「人のこと見ながら独り言を言うのはやめろ。別に騎士同士でおまんこしたわけでもないのだから、いいだろうが」
もう手話を見て何を言っているのか、考えることに疲れた。ユストゥスの手話を見るために上半身を起こしていたのもやめて、ベッドに寝転がる。すぐさまユストゥスの腕が私の身体に絡みつき、唇を指で撫でられた。パカリと開いた口に舌が差し込まれる。舌を舐め合うのは気持ちいいし、流し込まれてくる唾液を飲み込むのは、官能的でぞくりと来る。
クリス先輩とキスをしていた私は、彼から引き剥がされた。部屋を追い出されて終わりかと思いきや、それを止めたのはクリス先輩だった。エイデンが股間を隆起させているのを見やり、「クンツくんに相手にしてもらいなさい」と言ったのだ。
「エイデン、また最近、私としかセックスしてないでしょう。バルタザールが困ってましたよ。……僕も、君がいなくなるのは、嫌だから……ね?」
酔ってとろりとした表情を浮かべたクリス先輩に言い聞かされ、欲情したエイデンは、クリス先輩を押し倒そうとしては魔法で押しのけられて、悔しそうにしていた。その間、私は2人の痴話げんかを眺めていただけである。だって待ってたら、エイデンのおちんぽが食えるというし。
そして観念したエイデンに、別室ではなくリビングに連れ込まれて縛られて、尻を叩かれながら中に出された。悪くはないのだが、エイデンは自分の欲に忠実過ぎる。肉棒とどっちが下手かを考えたら、総合的に見たらエイデンの方が下手である。精液を吐き出したと思った途端、すぐさまペニスを引き抜いて、クリス先輩の部屋に戻ってしまった。そういうところがだめだ。
ブランコに拘束されたまま、動けない私を助けてくれたのは、通りすがりのライマー先輩の専属奴隷、ジルケだった。無口で人族にしては大柄な彼も、何を考えているかわからないが、周囲を見回し、誰もいないことに気づくと、そのまま挿入して中に白濁をたんまりとくれた。あれは嬉しい誤算だったな。
その後はちゃんと拘束を外してもくれたし、私の身支度を手伝ってくれた。「あいつ、結構凌辱とか露出とかのプレイが好きなんだよな……いや俺も嫌いじゃねーけど。でも退団するまでに俺、すごく性癖曲がりそう……」と複雑そうな表情でぼやいていた、ライマー先輩の言葉の意味が少しわかった気がした。
たぶん、私が拘束されて、中出しされた状態で放置されていなければ、ジルケは今日、私とおまんこしようとはしなかっただろう。そういう点では、エイデンに感謝だな!
<エイデン、他の騎士には一ミリたりとも反応しねえのに、なんだかんだ言いつつ、お前には勃つんだよな。腹立つ>
嫌そうな表情のユストゥスの手話を頑張って解読した私は、ぴんと来た。
「はっ。もしや私は、エリーアス様に匹敵するド淫乱になれたのではないのか?!」
寮に居る奴隷たちは、前より私を相手してくれているように思う。私が言い切った途端、ぺしんと軽く頭を叩かれた。痛くはないが、むっとしてしまう。
<舐めんな。あいつはエイデンから搾り取ろうと思えばいくらでもやるぞ>
「当たり前だ。エリーアス様だぞ。あのお方は天性のド淫乱だ」
<……いや、まあそうだろうけど、それ言ってやるなよ。お前なんかすぐにまた喘がされんぞ>
「?」
何でもない、と言うように軽く頭を振ったユストゥスは、私の身体をまさぐり始めた。もう一回する気になったらしい。この男はすぐに私を舐めたがるが、あまり舐めないように言い含めてある。……ライニールを思い出すからな。キスマークや歯型が付くのは構わないが、舐め回されると身体が竦む。
どうせ思い出すなら、獣人の天真爛漫な子供たちを思い出したいのに、どうしても性交中に舌が身体に触れると、あのねっとりした舌遣いと、絡みつく視線が思い出される。その点では、今日相手にしたエイデンもジルケも、必要以上に触れてこないところが良かった。
だが彼らも、自分の騎士相手なら、ユストゥスのように身体を撫で回すのだろうか。こんなに何か、気持ちを込められた視線を向けられるのだろうか。喉奥に舌を差し入れられ、私はその舌を締め付けて快感を拾いつつ、ぼんやりと考える。
見せてくれと言ったら、誰か見せてくれるだろうか。ディー先輩は性質上、凌辱の名残と言っても差し支えない状態を見たことがあるし、他の騎士たちとは乱交はしたことはあっても、先輩方と奴隷同士だけの行為を見たことは、一度もない。
そう思うと俄然、興味が出てきた。誰に頼んだら快く見せてくれるだろう。ディー先輩とクリス先輩は除外だ。あのお2人は繊細だからな。他はだいたい神経が図太いので、許してくれそうな気がする。
「んんっふ、あ……いっ!」
私が気もそぞろなのがユストゥスにはバレバレだったらしい。乳首を強くつままれて、私はびくりと身体を震わせた。
<お前、なに考えてる?>
「うん。なんれもらい」
しらを切ろうとしたところで頬をつねられた。ユストゥスがじとりと私の一挙一動から、考えを読み取ろうとしているかのようだった。こんな知り合ったばかりの男に私のことなどわかるはずもない、と思うのに、透かすような視線を受けてると、視線が泳ぐ。
<絶対お前ろくなこと考えてねえだろ。吐け。さもないとお仕置きだぞ>
「う……」
私は唇を突き出して上目遣いに睨む。<かわ……>と手が動きかけて、言葉になり切らずに霧散した。ユストゥスが仕置きと言うと、私は大変なことになる。おまんこにおちんぽを挿入したあと、精液を出してもらえずに延々と嬲られるのだ。騎士である私の方が体力があるはずなのに、この男のセックスはいやらしくて腰が蕩けてしまう。なのに終わりがないのだ。
最近は意地を張っても自分がつらいだけだと、気づいてはいるのだが、私とてプライドがある。そう簡単に喘がされて堪るか。
「ふん。口を割らせたいならやってみるがいい。そんな簡単に言うものか!」
<お前そう言って……はあ。俺は別にいいんだけどよ>
やる気満々の私に、ユストゥスはなぜかこめかみを押さえた後、私の口を割らせるべく、官能を呼び起こすような口づけから始めた。
大変な攻防の末、あと少しというところまで追い詰めたにも関わらず、卑怯な手管を使って陥れたユストゥスに、私は涙を飲んで敗北を喫するのだが、<30分も持たないんだから、意地張るなよ>と嘯くから嫌いだ。
一時間は持ったぞ!嘘つくなばかっ!!
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