きもちいいあな

松田カエン

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王都防衛編

120.記憶と心<ユストゥス視点>

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 俺の大事なお嫁様が、俺じゃなくベッカーのロリコン野郎に頼むもんだからむっとしちまった。呼ばれたベッカーがいそいそと立ち上がるのをとっ捕まえて殴り倒し、俺は意気揚々とクンツを抱き上げる。獣人のころなら軽々と持ち上げられたクンツの体重が重い。縦抱きにしようとしたがやっぱりできず、俺は歯痒く思いながら、俵抱きにした。

「っはら!はらがあっぱくされるから、やめろ!おろせ!」
 はん。これで下ろしたらまたベッカーに強請るんだろ?知ってんだからな!
「ユストゥス、わかってると思うけど」

 何か言いたげなエリーアスに軽く頷き返すだけに留め、ベッカーが復活する前に早々にダイニングを抜け出した。エリーアスが言ってた通り、各個人の自室からはえっろい喘ぎ声が日中にも関わらず上がっている。そのどれもが、少し嫌がるような素振りを訴えていた。

 珍しいもんもあるもんだな?心中はともかく、一輪寮の騎士は基本奴隷からの性行為を嫌がることなんてねえのに。
 不思議な気持ちのまま、部屋に戻ると俺はクンツをベッドに降ろした。

「っぁ、んっ!」

 触れてもいないお嫁様が、これまた誰よりも色っぽい吐息を漏らしつつ、身悶えている。きっちり騎士服を着こんでいるにも関わらず耐え切れないとばかりに膝を擦り合わせ、ぎゅうっと力いっぱい毛布を握りしめ……あっ破れた。

 人相手の時には加減するが、よくお嫁様はこうして備品をずたずたにしていく。まあ可愛くていいんだけどな。

 身悶えるクンツを見下ろしながら、俺はそっとその頭を撫でてやる。うっとりとした表情を見せて俺の手にすり寄ってくる仕草を見せた次の瞬間、ハッとしたように俺の手を振り払って、ずたずたな毛布にくるまってしまった。がっちりむっちりとしたクンツの身体は一部覗いているが、明らかな拒絶を感じて、俺は一度動きを止めた。

 クンツが、前の自分と今の自分って、分けて考えてるとは思わなかった。

 手紙の内容を思い出すと胸が熱くなるし、喚き散らしたい気持ちにもなる。2人きりの式を急いで強行させたクンツ。……もっと前から、俺を忘れる覚悟をしてたんだろうな。だから、手紙を俺に残してくれた。俺は全然……気づいてなかった。
 もっとちゃんとそばにいてやればよかった。もっともっと、抱き締めて好きって言ってやればよかった。愛してるって、もっと……。

 ふーふー呼吸を乱したままずんぐりと蹲るクンツは、俺のお嫁様ではない、という。身体は同一だが違うという。

 確かに呼吸のタイミングが前と少し違うし、反応も違う。俺の身体が変わってるからなおさら違うようにも感じられるんだろうが、それにしても。
 ……お嫁様が分けて考えろっていうなら、分けて考えるさ。でもその上で、俺はクンツ・リンデンベルガーの全てが好きだ。過去も今も未来も、全部俺のものにしたい。俺を忘れたから違う存在?冗談じゃねえ。クンツの全ては俺のもので、俺の全てはクンツのものだ。今までの決意とそう変わらない。

 クンツが俺を忘れていても、俺を前のクンツのものだと思っていても、何度でもクンツに好きだというし、何度忘れられてもそばにいたい。何度でも惚れさせてってのも傲慢な気がするが、それでも俺は何度でもクンツに惚れてもらいたい。
 ただ、苦しいのはクンツだ。忘れることがわかってんのに好きになるのは、つらいだろう。今のクンツだって、もう俺に惚れてる。クンツは忘れていようが、俺のことが好きになる。これは自惚れじゃねえ。見てるからわかる。

 前の自分と今の自分、っていうように分けて考えてんのも、おそらく無意識の防衛の一種だろう。前のクンツが、俺のことずっと嫌いって言ってたのと同じ……っ。

 ……記憶は心だ。クンツを見てると特にそう思う。クンツは俺との記憶を持ってる。気がする。身体が覚えているってのも、それに拍車をかけてる。忘れてるけど、持ってはいるんだと思う。でなきゃ説明が付かないことが多すぎる。

 俺にしたって、一目惚れはきっかけに過ぎない。不器用でわがままで無鉄砲で、それでいてどこか何かを諦めてるクンツを、より好きになった。ずっと見てきたから、その記憶の積み重ねで今の俺がある。

 クンツは俺の大事な伴侶だ。

 お嫁様の気持ちを考えれば、単に親切ぶってる赤の他人程度に収めておけばいいんだろうが、愛してない素振りなんて俺には無理だ。どうしても気持ちを渡したい。……俺に振り回されて、クンツにとっては迷惑だろうな……。
 いくら考えてもたどり着く答えは一緒だった。俺にはクンツを愛することしかできない。……願わくば、分けて考えてるその記憶を、ちゃんと欠けもなく取り戻してやりたい。

ヒントはある。例えば群青騎士は、媚薬漬けにされて精神がぶっ壊れるが、記憶から人格を拾い上げる作業をしてる。つまり記憶を覗けるってことだ。クンツは俺を忘れてない。上手くすれば思い出せるかもしれない。
 それからリンデンベルガー家だ。任務に支障が出る記憶が消えるとはいえ、万が一消えたら問題がある記憶がないとも限らねえ。つまり記憶を復活させる、魔法か何かを持っていたとしても不思議じゃない。

 まだ望みはある。

「っはぁ、んんっぁ……!」

 一際大きく鳴いたクンツの腰が揺らめいた。そこで俺は思考を中断させて、そっとクンツに寄り添った。
 息苦しかったのか毛布から顔を出して、赤い顔で大きく呼吸をしている。かくかくと腰が揺れている。1人で疑似交尾のような動きを見せた後、がくっと身体から力が抜けた。

「っひ、ぃっ……っ」

 うつ伏せになって枕を掴んだまま足を伸ばし、かと思えば手を伸ばして出っ張りがある臀部をカリカリと掻いている。引き抜きたいんだろう。前はぐっしょりと濡れ、繊維の合間から白濁を滲ませていた。何度か達したことが伺えて、無機質な魔具に嫉妬する。けどエリーアスにも釘をさされたもんな。仕方ねえから大人しくしててやるよ。
 本当なら服を脱がせた方がいいんだろうが、服脱がせて魔具を引き抜かない自信がなかった。

 そして水を飲ませながら、三時間程度身悶えるお嫁様を眺めていたところで、不意にその時間が終わった。ぐったりと横たわり肩で息をしながら、クンツは訝しそうに自分の尻を見ている。肩を軽く叩いて、俺に注意を向けさせたところで手を動かした。

<どうした?>
「……動きが止まった、ようだ」

 ふうん?壊れでもしたか?もう指一つも動かしたくないとばかりに、ベッドに沈み込んでいるお嫁様の様子を伺いつつも、俺はベルトを外してやって、下着ごとスラックスを脱がした。むわっと官能的な香りが鼻をくすぐる。クンツの雄と、雌の匂い。堪んねえな。
 クンツも俺がしようとしていることを理解しているのか、抵抗せずにされるがままになる。片足はまっすぐのまま、もう片方は持ち上げるようにしてやると、日に焼けていない白い硬めの尻にぎっちりと嵌めこまれている魔具の固定を外してゆっくり引き抜く。

「んっ、んっ……ふ」

 ずるるっと引き抜けば、やけに魔具に重さがあった。前に持った時はもっと軽かったと思ったが……。軽く振ればたぷんと取り込んだであろう体液が揺れる。なるほど。クンツは濡れる方だと思ってたけど、こうして貯められるほどに濡れてると思うとすげえな。
 また水分補給してやらねえと、と頭で思うのとは別に、俺の目は魔性具を引き抜いた後孔に目が釘付けになっていた。

 嬲られた媚肉が、呼吸のたびにひくひくと収縮を繰り返すのがわかる。
 くちゅ……っと閉じたアナルから、溢れたぬるぬるの体液がつうっと臀部も狭間を濡らした。達し続けたペニスは精液で濡れっぱなしで、後ろも同じだけ濡れている。

 …………。

 さっきまで真剣に考えてたってのに、幼な妻のしどけない姿に俺のちんこは大きく育っちまった。
 普段この時間はベッカーと一緒に絵本を読んだりしているのに、今はベッドでされるがままだ。普段性行為するときと違い、服を身に着けたままのため、何となく雰囲気が違ってイイ。

「ん……ありがとうユストゥス」

 水を水差しでひとしきり飲ませてやると、疲れたのかクンツは珍しくそのまま目を閉じた。下半身は脱いだままだ。そろそろと自分でペニスを軽く扱いて完全勃起させると、俺はクンツの背後から近づいて片足を大きく開かせる。するとハッとした表情で上半身を起こしかけたクンツが目を見開いた。

「は……?……ま”っ……っぁあ、あ”あ”っ!!」

 うっわ……ぬるぬるまんこきもちいー……。長時間魔具で嬲られたせいか、いつもより熱を持っていた。相変わらずねっとりとした肉襞が、丁寧に俺のちんこをもてなしてくれる。

「っひぃ、っどい……っぬけっ、やっ……ぁあ”っ」

 珍しく嫌がる素振りを見せるクンツに、丁寧に口づけを落とす。抵抗は弱まるが、それでも蕩けた表情で俺の舌を喉へと誘って身体を震わせた。
 きゅんっと甘イキしてる。いつもより律動がゆっくりとしているのは、疲れが出ているからか?

 悪いなクンツ。すぐに精液飲ませてやるから。

 俺は身体を起こすと足を抱えたまま、斜め下に突き上げるように腰を振った。ぱんぱんと肌が擦れ合うたびに音が上がり、身を捩りながら絶頂に浸っている。もにゅもにゅと俺の性器を揉みこんだアナルに翻弄されてるのか、クンツは目がだいぶうつろだった。
 俺と抱き合う時よりも疲労度が高い気がする。大丈夫か?
 心配しつつも、ぐりぐりと奥の結腸を突いてやる。今の長さじゃハメられはしねえが、それでもここはクンツの弱点だ。俺が擦り上げるだけで、力ないながらも俺の突き上げに合わせて腰を振ってくれた。

 早く精液を注いでやるのがクンツにとってはいいはず、と締め付けを堪能しながら腰を振る。

「っぁん!あっ、あっ、あっん!っは、ひぃっ」

 健気に縋りついてくる媚肉をかき分け、奥に押し込んで白濁を注ぐと、びくびくとクンツの身体が跳ねた。舐めしゃぶる魔肛の感触を味わいながら、額や首筋の汗を拭ってやる。あとで服脱がせて、身体もちゃんと洗浄魔具で綺麗にしてやろう。

 意識を飛ばしたクンツは、珍しく俺が服を脱がして魔具で清め、ワンピース型の寝衣を着せても起きなかった。普段なら、途中で目を覚ますもんなんだが……少しの不安が胸をよぎるが、呼吸も平常と変わりがないし、顔色も悪くない。とりあえずは寝かせておこう。

 頭を撫でてジュストを枕元に置いてやると、俺は張り型の魔具を片手に部屋を出た。これはバルタザールにでも渡せばいいだろう。魔具にまとわりついていた淫液は拭ってある。

 寮監室に赴くと、そこにはエリーアスとバルタザールがいた。執務机の上にはうっすらとピンク色ががかった液体が入っている透明な筒状の瓶が数本置いてある。あまり見たことのない魔法印が、その瓶には付与されていた。

 どこで見たんだっけか……。ああ、鮮度を維持するための魔法印か。

 普通、荷箱や保存バッグの内側でしか見たことがない。もちろんその魔法印が付与されたアイテムは高級品だった。こんな小さな瓶にわざわざその魔法印を張り付けるなんて、本気で改善策を成功させたいんだろう。

<これどうするんだ?>
「ああ、ありがとう。結構取れるものなんだねこれ……」

 物珍しそうにしながら布で軽く押さえたバルタザールは、張り型の魔具の一部を捻ると、そこには目の前に並んだ筒型瓶が入っていた。たっぷりとお嫁様が分泌した淫液が入っている。それをバルタザールは他の筒型瓶と同じように並べた。それにもよく見れば、鮮度維持のための魔法印が刻まれていた。

「悪魔の実が出す量とは比べると、全然少ないような気がするんだけど、本当にこれで大丈夫なの?」

 エリーアスが疑問を口にした。どうでもいいが、人化しててもまだ他の人間より耳のいい俺は、エリーアスの下半身から響く羽音を拾っていた。こいつ、魔具挿入されたままで平然としてやがる。
 さっきダイニングで会った時はマインラートがいたからか悦んだ表情してやがったが、今なんか平常と変わりない。相変わらず耐性ありすぎんだろうが。

「うん。一応論文書いた学者……医師が健診がてらこれらを使って『種』を動かすって聞いたけど」
「あの論文、ほんとにあの方が書いたものなのかな?」
<あの方?>
「僕は違うと思うね。おそらく姫殿下お抱えの医師か学者が書いたものを、自分の名前で発表したんじゃないかな。群青騎士団だって、何かあれば、団長の名前で声明出すし、それと同じでしょ」
「……けど、あの方がそんな研究に携わる援助をしていたとか、聞いたこともない」
「元々君らの身体については、トップシークレットだ。けど王族なら知ってても不思議はないと思うし……ま、王族にしては随分末端の姫様のようだけど」

 姫殿下、そのキーワードにぴんと来た。俺は無言で、いや元々声は発声できないが、それでもじっとエリーアスを見やる。エリーアスは気付いているのかいないのか、こちらを見もしやがらねえ。
 そうか、だから道理で論文見た途端に慌ててたのか。ほんっとこいつも苦労性だな……。

「オズに……昔の知人に詳しく話を聞いてみる。この間は会えなかったけど、ちょうどいい。クンツの件もあるしね。バルタザール、悪いけど詳細は僕が話詰めるから、少しこの件保留にしておいていいかな」
「いいけど、その、エリーアスも今あの張り型入れてるんでしょ。大丈夫?」
「さすがに外出するときは抜くよ。ユストゥス、同行を……ああ、そうだった。ベッカーどこにいたかな……」

 昔の癖で俺を同行者に選ぶぐらい、ちょっと動揺してるのかもしれない。出ていったエリーアスを意味深に見送った後、バルタザールに「ユストゥス」と呼ばれた。眼鏡を拭いてからかけて、ゆっくりとこちらを見てくる。

「エリーアスのあの態度、なんなの?どういうこと?」

 んー……あー……。俺は少しだけ考える。バルタザールなら権限持ってるし、よほど気になるようなら、後からでも調べられるはずだ。それにエリーアスの経歴としても、別段隠してるわけじゃない。

<その論文書いた姫殿下ってマリアベリル・ラーディン様か?>
「そうだけど……あれ、論文見た?」
<いや。……言っておくが、俺はエリーアスからの話でしか聞いたことがないからな?エリーアスが群青騎士に成る前、に仕えていた王族が、その姫さんだったってだけだ>
「えー……それほんと?ってか、エリーアス、近衛騎士だったの?なんでそれが魔肛持ちに……、……あ、ごめんこれは僕の独り言。忘れて」

 何となく聞いてはいけない部分を察したのか、バルタザールはぱたぱたと手を振った。

<そうだな、俺は何も聞かったことにする>

 っていっても、俺も詳しい事情は知らねえんだけどな。何となく想像してることはあるが、想像の域を出ない。
 軽く頷き返した俺は、魔性具の中身を新しい瓶と取り換えて寮監室を後にした。どれだけ量が必要かわからないが、似たような瓶はまだまだあるらしい。……これはお嫁様大変だな。
 部屋に戻ると、クンツは目を覚ましていた。親の仇のように、俺が持つ張り型の魔性具を睨んでくる。

「それで腹を抉られると、なぜだかすごく疲れるんだが……だが、ディー先輩のためだものな……よし入れろ!」

 なんて言いながら、ぱっかーんと足を開いで強請るもんだから、思わず欲しがりなまんこに俺のちんこを食わせて、十分に精液を飲ませてからねじ込んだら、結構本気で殴られた。


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