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王国崩壊編
154.頑張れ任務。
しおりを挟むユストゥスが伝えたのか、翌日会ったディー先輩はすごく渋い顔をしていた。イェオリは姿を見ない。毎日ディー先輩と褥を共にしているがそれ以外はずっと何かを探っているのだと言っていた。よくわからないが、元他国工作員とやらはすごいものなのだな。
私の奴隷は大抵宛がわれた私の部屋にいるか、庭でぼーっとしている姿を見るばかりだ。時折どこにもいないときもあるが、大抵は暇そうにしている。
愛想も良いはずなのに屋敷の者に対しての態度も冷ややかで、それを屋敷の下働きの者たちが私にぶうぶうと文句を言ってくる。
それを性行為中に軽くあてこすれば、ユストゥスに呆れた顔をされた。
<お前な、群青騎士の奴隷が他人と仲良くなるわけにはいかねえだろうが。俺はお前たちの秘密を知ってるんだから>
「れも……っ、んぁっ!」
締め付ける魔肛をこじ開けるように、太くて熱いおちんぽがナカを突く。少しずつだが、ユストゥスに触られても羞恥心に焼き殺されることはなくなっていた。
それでもなるべく顔を見て抱き合うことはしない。今日も横たわった私に、背後から突き入れるという恰好でおまんこされていた。
この体勢でおちんぽを挿入されると、その刺激でいやらしく勃起したペニスや乳首がシーツに擦れて気持ちいいうえ、肩を押さえこまれると身動きが取れなくて、その圧迫感にうっとりしてしまう。
うなじは何度も舐められるし甘噛みもされる。時々強く噛みついては……私が達してしまうから、そんなところも躾られたのかと思うと気恥ずかしさが先に立つ。
むにむにと臀部を寄せて、私のおまんこでおちんぽをじゅぶじゅぶとしゃぶらせたユストゥスは、大きく息を吐きながら射精した。びくびくと震えて収縮した媚肉が、ユストゥスの精液を奥へ送り込もうと勝手に刺激を続ける。その蠕動で私も中イキを繰り返して、途切れそうになる呼吸を繰り返した。
じんじん、じんじん、する。
ユストゥスはすぐにペニスを抜かない。馴染ませるためだというが、その間に私を抱きしめて口付けを降らせてくる。振り返れば熱の篭った視線を向けてくることだろう。だから私は枕を抱えたまま、ふーふー肩で呼吸を繰り返した。
私が視線を向けないからか、そのままユストゥスがのしかかってくる。入れたままぴったりと背後から抱きしめられてると重い。
だかその姿勢でユストゥスは両腕を前に差し出して手を動かした。抱きすくめられているようで、首筋に当たる呼吸が気になって振り返ろうとする。
「ぃたっ」
するとユストゥスにぴんっと額を指で弾かれた。手を見ろと言いたいらしい。
<本来こんな風に長期間奴隷が付き従う場合は、いつもよりさらに制限がつくんだ。だから俺は他のやつらとは話しねえんだよ。イェオリはそのあたりうまく自分で調整してるんだろうな。……俺だってできねえわけじゃねえけど、前に一回失敗してっからなぁ>
「……?」
ユストゥスが何を言ってるかわからない。難しい話は私にしないでほしい。
私が何も理解していないことを気付いているのかいないのか、ユストゥスはふっと笑って私の耳裏にちゅっと口づけを落とした。わけのわからないことを言う手は、胸の前で交差して私を抱きしめることに使われる。
こうなると駄目だ。
羞恥心からさっきとは別の震えが来てしまう。ユストゥスを傷つけてはいけないと思うあまり、シーツをびりいっと破いてしまっていた。
それを見たユストゥスが、ゆっくりと離れる。体温が離れるのは寂しいと思うのに、でも力を調整できない自分が悪いのだと言い聞かせるような声も脳内で響く。
「んんぅっ……」
ずるるぅっと余韻を残すような引き抜き方をされて、また枕を抱きしめる。ぐにっと臀部を割り開かれ、雄を受け入れてぽってりと熟れた媚肉を見下ろされているのがわかった。
割れ目に挟ませるように抜いたばかりの陰茎が擦りつけられている。
先端が綻んだアナルを突くだけで堪らない。ちゅっぽ……っと欲しがりのおまんこが、亀頭に吸い付いているのがわかる。枕を抱きしめる腕に力が篭った。
「んぁあっ?!」
抜けたおちんぽが戻ってきた。しかも硬さも太さも復活している。驚きを口にするより早く、ユストゥスがもう一度背後からきつく抱きしめながら突き上げてきた。
「ああ、っあん! あっ、ああっ、ゆす、あっ、そこ、だめ、あっああっあぁああっ!」
ごりごりと前立腺を潰され捏ねられ、それから不意打ちで奥を突かれる。足がばたばたと反射的に跳ねてしまったが、その程度でユストゥスが止まるはずもない。
「っは、ああ、あ”あ”あ”あ”あ”っ!!」
結局いつものように高みに押し上げられ、私は咆哮を上げながら潮をまき散らしてしまった。
持ち運びのできる防音魔具を使えるとは言え、毎晩のようにああして鳴かされるとちょっとぐらい音が漏れてそうな気もするし、毎日寝起きでこれはさすがに、うむ……つらいものがある。
ユストゥスが私の様子を伺いながら、起きている最中にも触れ合いを少しずつ増やしてくれているのはわかるが、こう毎朝毎夜翻弄されてばかりだとやっぱり体力を消耗している気がする。
今までの私はどうだったのだろうか。あんなに毎日毎日、ユストゥスにえっちされていて、よく平気だったな???
なにも思ってなかったのだろうか。……その可能性はあるな。なにせ私だ。単なる食事とでも思っていたのかもしれない。あの男に触れられて抱かれて口付けされて、よくまあ暴れもせずにいれたものだ。
あんなに愛されて可愛がられて……。
「アッ」
身支度を整えて部屋から出ようとしていたところで、先ほどまでの濃密な時間を思い出してしまった私は、うっかり無意識に強化魔法を使い、ドアノブをへし折ってしまった。
うっ……またユストゥスに怒られる……。
「『固まれ、固まれ』」
壊してしまったドアノブを土魔法でぎゅっぎゅっと固めて、素知らぬふりをして部屋を出た。
今日のユストゥスは、私に鎧を着せると早々にどこかに行ってしまった。屋敷の者とも仲良くしている様子もないのにどこに行っているのだろうな?
ユストゥスは魔力がないから、姿が見えないとどこにいるかわからない。
「はあ……」
兜を脇に抱えたまま夕闇が満ち始めた窓の外に目をやり、歩みを止めていると背後から複数の足音が近づいてきた。
「クーちゃんこれからお仕事でしょう? なのに、元気ないわねぇ」
振り返ればそこにいたのは露出の激しい侍女たちだ。彼女たちも自らの務めを果たすために、ザイグレンター卿の寝室へと向かっているのだろう。露わな肌に少しばかり視線の置き場に迷ってしまうが、彼女たちは特に気にした様子がなかった。
それでも何となく視線を逸らしているとふと、ここ数日は静かだった別邸に明かりが灯っているのが見えた。
王族の姫君と、2人の近衛騎士。
「あの御方も、ザイグレンター卿の寝室に上がられることがあるのか?……あ、いや」
「ん? ああお姫さんね。どうかなあ……。ローザ、あんた一緒になったことある?」
ふと気になってそんな言葉が口から漏れてしまった。私のような者が気にするべきことではないと撤回する前にあっさりと答えが返ってきてしまう。
「ないわぁ、ピアリーもないんじゃないかしら。お姫さま、昔は知らないけどぉ今は一度もないんじゃない」
そう言って愛人は、2人揃って首を横に振った。
その答えに少しだけほっとした気持ちになってしまう。毅然とした姫君が老人の手にかかるのを見たくないと思う気持ちがどこかにあるのだ。
「旦那様もなーんか無視してるしねえ。なにクーちゃん気になる? あたしはあのクーちゃんそっくりな騎士様が気になるね。クーちゃんの親戚?」
「いや、兄だ」
「えっお兄さん? クーちゃんと違って全然愛想なくない?」
「私と違って、優秀なのだ」
重々しく頷くと、顔を見合わせた彼女たちはよしよしと私の頭を撫でてくれた。
よくわからないが、私のことを小さな子供とでも思っている節が彼女たちにはある。ただその手が思いの外優しくて、私もじっと留まって受けてしまった。
向かう先は一緒なので3人で歩いていくと、卿の寝室から何やら怒鳴り声が聞こえてきた。
騒がしい様子に足を速め、それからその声の主がディー先輩ということに気付いて足取りが重くなる。
「いっ……いい加減にしてくださいッ! 私は警備のためにいるのだと何度言えば……!」
「ははは、そう言うな。この憐れな老人に一匙の愛情をくれてもよかろうて」
「っ……!」
昼の間の警備を担当しているディー先輩を、あの手この手でベッドに引きずり込もうとする元気な老人に、いよいよ持って先輩の理性がブチ切れそうな気配を感じ、慌てて室内になだれ込む。
青い顔で眉間に青筋を立てているディー先輩を抱き上げると、そのタイミングに合わせたように2人の愛人が卿にしだれかかった。
「やぁだもう、旦那さまったら」
「お召しになるなら、あたしたちを呼んでくださいなぁ」
甘ったるい声を上げながら私たちと卿を分断するように立ちふさがってくれる。1人が後ろ手に部屋の外に行けと、指差してくれるのでそのままそそくさと先輩を連れ出した。
嫌ではないのかと聞いたこともあったが、彼女たちにしてみれば単なる仕事で一つでしかなく、呼ばれる回数が増えるほど手当てがつくのだそうだ。
それを知ってからは、今回のようにディー先輩が狙われているときにはそっとお願いするようにしている。さっきまでディー先輩をベッドに連れ込もうとしていたザイグレンター卿は、そんなことをしていたことすら忘れていた様子で愛人と睦み合い始めていた。
「もう嫌だ」
部屋から連れ出してようやっとドアを閉じた瞬間に、ディー先輩からそんな嘆きが漏れた。
「ディー先輩……」
「僕は娼婦じゃないんだっ! イェオリ以外に、あんな風に触られるのはもうたくさんだ……」
震える細い肩に触れていいものか悩んでしまう。私が戸惑っている空気を感じたのか、小さく「ごめん」と謝られてしまった。
「クンツに愚痴っても、しょうがないのにね」
無理に明るく笑ってみせようとするディー先輩が不憫で、胸の奥が疼くような痛みを感じる。きゅっと目を閉じた私は、そろそろと鎧の隙間から内ポケットを探り、小さな包みを取り出した。
「甘いものを食べると気が紛れる」
「クンツ、それ……」
包みを広げると、ディー先輩がハッとしたような表情で私を見上げてきた。
中から出てきたのは小粒の飴玉だ。私たちと同様に、警護のため任務に赴いたアンドレ先輩に付いていったおじさまからのプレゼントだった。どこかで手に入れたものを、わざわざ寮にいるバルタザール経由で送ってくれたのだ。
複数個あった飴はもはやこれ一つで、仕事中のおじさまにねだるのも大人げないし、かといって全部食べ切るのはもったいなくて取っていたものの最後の一つだった。
「そんな、もらえない」
首を横に振るディー先輩の前に膝を付いてカシャンと音を立ててしゃがみ込む。視線を合わせて差し出しながら、意気揚々と言い切った。
「2人で食べよう!」
……だって、だって最後の一つなのだ! おじさまがせっかく私にくれたものなのだ! ディー先輩に差し上げたい気持ちも非常にあるが、でも、最後の一つ……。
これを食べて元気を出せと言って渡せればかっこいいのは私にもよくわかる。でも私だって食べたい!
「っふふふ……クンツは変わんないね。いいよ、一緒に食べよ」
私の食い意地のせいか、ディー先輩は顔色を取り戻して柔らかな笑みを浮かべてくれる。
ディー先輩はショートパンツのポケットから魔石を潰して作った粉の入った袋を取り出すと、それを指に付けて魔力を通し、目くらましの魔法陣を宙に飛ばした。
それからディー先輩は細い指で小さな飴玉を摘まむと、ぽいっと私の口に差し入れた。ころ、と舌先で転がしているとすぐ目の前が暗くなる。ディー先輩の長いまつげが伏せられているのが見えた。
私の舌先に乗っていた飴を、舌ごとぱくんとディー先輩に奪われる。そのままそっとディー先輩に両頬を手で押さえられながらコロコロと転がし唇を重ねた。口の中で転がる飴を2人で舐め回す。
交じり合った唾液と甘みに、半分はこくんと喉を鳴らして飲み残りはディー先輩に押し返す。ふわりと香るような色香を見せたディー先輩は、舌ごとぢゅっと吸い上げ小さな歯で甘噛みして、私の舌にかすかな疼痛を残しながら、残りを飲み干した。
「ん、おいし……ありがとうクンツ」
口元を手で押さえていたディー先輩が、目元にわずかな朱を残しながら微笑む。
「うむ、また手に入ったら2人で分けよう」
「そうだね」
ディー先輩の機嫌も戻ってよかった。軽く引継ぎをして部屋に戻るディー先輩を見送る。イェオリにちゃんと慰めてもらえれば良いのだが……。しかし卿のセクハラにも困ったものだな。
せめて私に手を出してくれればもうちょっとこう、やりようがあるというのに。まあ私には興味がないのは十分見て取れるのだが。
室内から聞こえる嬌声をやり過ごしながら、私はそっとため息を付いた。
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