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キリの村編 〜クーリエ 30歳〜
X-4話 突然の来訪者?
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視覚にも捉えないほどの速さで何かがこの家の天井を貫いて侵入してくる。何故何者かの侵入が分かったかというと、音と共に家中を物体が地面に着地することで生じる衝撃波が俺をいやこの家全てを襲ったからだ。一瞬にして今まで見ていた景色が一変する。激しい音は衝撃波の後も家具やその他物品が壊れ続けているため依然として鳴り止むことを知らない。
先ほどまで皆で食事をしていたテーブルも吹き飛ばされ今では壁に突き刺さっている。そこには以前の原型はなく、ただ木材の破片が壁に亀裂を生み出している。ほんの数時間前のあの温かな食事が嘘のように思えるほどの惨劇がそこには広がっていた。そんなこと言う俺も立っていた場所から一気に壁にまで吹き飛ばされ、思い切り頭と壁が衝突する。壁に衝突の勢いからかピキピキと音をたて亀裂が縦に走る。鋭い痛みがすでに負っている傷と相まって襲いかかってくるがそんなことはどうでもいい。
「何が起きたんだ!? お父さんは大丈夫ですか??」
シンクがあった方に目をやる。だが、そこにあった景色は一度で完全に視認できるほど甘いものでもなかった。光源が全て吹き飛び部屋から明かりが奪われ、夜の暗闇が家中を覆っており状況を確認するのが困難であることも十二分にその要因としてあるが、何よりそこにあったはずのシンクが俺から少し離れた壁を突き抜けて外にまで飛ばされており、辺り一面シンク内の食器やらその後ろに設置されていた食器棚に入っていたものが破壊された残骸が散らばっている。ただでさえ視界が悪いのに、それを遮るものも多く地面に向かって倒れ込んでいた。それでも何度も強く瞬きをしながら父親の姿を探すが、そこにはいなかった。
「お——」
「父さん!父さん、しっかりしてよ!!」
泣き喚く甲高い声が俺の鼓膜をビリビリと震わせる。その声は上澄み、呼吸も大きく荒れている。だが、一瞬たりともその呼びかける声をやめようとはしない。精一杯の力を振り絞り意識をこちら側の世界に戻そうと試みている。天井が大きな音を立てながら崩れ落ち、地面に落下するや部屋全体を埋め尽くすほどの砂煙を巻き起こす。
声は聞こえてはいるが、それがどこから発されているのかこの暗闇の中では見当が付かない。かつてリビングだった場所からゆっくりと倒れていた身体を起こし、隣の壁の穴から外へと重い足取りで抜け出す。外にはこの大きな物音を聞いて駆けつけてくれた周りの住民の姿がうかがえた。その格好は皆ラフな格好でいかにこれが異常事態であるのかを物語っていた。
辺りを見渡す。しかし、どこにも彼女とその父親の姿は見つからない。
「ちっ!どこにいるんだ?」
焦る気持ちに当てられ身体は思い切りかけ出そうとするが、完治しきっていない怪我はそれを激痛という形で必死に阻止する。自分の思い通りに動かない身体に心底苛立ちを覚える。ここで動かなければいつ動くんだよ!
「おい!上をみろ!!」
無理をしてでも走り出そうとしたそのとき、心配で駆けつけてくれた住民の中からだろうかそんな声が上がった。その言葉に倣って上を見上げる。空には、地上を昼間のように照らす光源がこの町にはないためか、都心部では見られないほどの星が無数に光り夜空を綺麗に染め上げていた。だが、一部分だけ他の場所とはそぐわず真っ暗な漆黒を浮かべている部分があった。何かがその部分だけを遮断するようにして物体が浮遊している?周りで起こる悲鳴のせいか、はっきりと聞くことはできないが羽を動かすことによって生じる空気を振動させる音が微かに聞こえるような気がする。だが、その姿までもは暗闇のためしっかりと視認することまではできない。
「くそ、みんなこっからどこか遠くに逃げてくれ!空に何か敵らしき物体がいる!」
大声を出して避難を呼びかけるも、全員の耳には届いていないようで、誰もその場から動く気配は見せない。崩れゆく家から発生する瓦礫や木材が地面と連続して衝突する音の方が遥かに大きい。軽く舌打ちをすると、全員を避難させる道を諦めて、再び上空に存在する物体に目を向ける。
「いない——?どこに行ったんだ?」
ほんの数秒間目を逸らしただけだったが、今まで不自然なほど漆黒だった部分は空から払拭されており、一望して星が織りなす誰もが喉を唸らせるほどの絶景の夜空がそこには広がっていた。もしかして、俺の勘違いだったのか?それならば、一刻も早くお父さんを見つけて手当てを行いたい。俺は、そのままの流れで崩れゆく家に視線を戻した。
「キィェェェェェェ!!!!」
突如襲いかかる超高音の音波に咄嗟の反射で両手を使って耳を塞ぐ。それでも、手を伝って震わせる振動には頭が割れそうになる。駆けつけていた人の数人は耳を塞ぐのが僅かに遅れたことによって意識を飛ばしその場に声も出さずに倒れ込む姿があった。その音波の発生主は誰かはわかっている、先ほどまで空中で浮遊していたやつだ。一度目線を逸らした際に、上空から地上付近まで下降して家の影にへと潜り込んでいたのだ。それゆえ、先ほど空を見上げた際に見つけられなかったのだ。音による衝撃波でただでさえ崩壊を始めていた家が一気に大きな音と粉塵を撒き散らしながら瓦解する。
「コルル? 大丈夫か!!!」
俺がいる方とは家を挟んだ反対側に倒れ込む父親を膝に乗せているコルルの姿を発見する。彼女もこの音波のため耳を強い力で塞いでいるのがわかる。俺の声は届いていないようで、ずっと下を向いたまま父親の顔から目線を逸らすことはない。
「今行くからな!まってろよー!!」
再び大声でコルルに呼びかけるが返事は返ってくることはない。しかし、そんな態度をよそに俺は力強く、彼女の元に駆け寄る足を踏み出していた。超音波を発している怪物はちょうど俺とコルル達の真ん中ら辺に位置している。あいつに気付かれないように動けるのがベストだが、最悪気付かれてもこの視界の悪さだ。あいつだって少しくらいは影響を受けるだろうから、その戸惑っている合間に駆け寄れればそれでいい。
一通り破壊衝動が収まったのか気がつけば放たれていた超音波は止んでいた。だが、俺は耳を塞ぐ手を下ろす気は全く起きなかった。深い意味は特にないが、戦闘中になると時々俺は頭の中で本来なら行われるはずの思考がピタリと止まることがある。それは相手に対して周りの雑音が遮断されるほどの集中力が発揮されるからだが、今回の場合は少し異なっていた。思考が常に行われていた、その上で一度下げた状態で再び超音波の攻撃を喰らうと一瞬たじろぎ足が止まる可能性が高いこと、万が一防御が遅れることがあったら意識を飛ばされるかもしれないと、無意識のうちに数々の冒険をこなしてきた冒険者としての本能が咄嗟に働きこの行動を起こさせていた。
家を横断するように俺は極力物音を立てないよう忍足で破壊された家具などの影に入り込むようにしてコルルの元へ駆け寄っていく。怪物はまだ俺のことに気づいていないのか、首をいろんな角度に回しながら辺りの様子をキョロキョロと伺っている。何か俺以外に探しているものでもあるのかもしれない。怪物は基本的には単純思考しか行えないものだと、奴らの同種と幾度も戦闘を重ねる上でたどり着いた一つの仮説がある。
だが、今数メートル先で対峙している怪物はどうやらその答えから逸脱した存在であるようだ。本来の俺が今まで戦ってきた怪物ならば、俺を見失った時点で超音波攻撃をやめるようなことはしない。攻撃範囲を一段と広め、更に威力を上げた攻撃を撒き散らし見えない敵が炙り出されるのを待つのが定石通りだ。だが、そのような行動に移らない上に周りにいる怪物の彼等からして攻撃対象である自分や集まっている住民から目を背ける異常な行為に、明らかに誰かからの指示を受けてやっているように俺の目には映った。
だが、今はそんなことを気にしている暇はない。後からじっくり考えればいいと、俺は歩み寄るスピードを早める。コルルとの距離はほんの数秒駆け出せば届く距離まで詰めていた。怪物の方に目をやる。辺りを見渡すというおかしな行動はまだ続けていたが、こちら側に意識を向けているようには感じない。
「よし。いくか!」
ここからコルルのところまで影となる部分は一つもない。明るみに出るような形で俺は一気に距離を詰める。先ほどまでとは段違いに大きく彼女の泣いている声も耳に届く。父親の怪我の具合ははっきりとは分からないが、身体をピクリとも動かさないところを見ると、すぐにでも手当てをしなければいけない状況にあることは疑いようがない。
手を伸ばす。彼女の温かな肌に触れ、ようやく一方通行だった視線が絡み合った。途端に微笑みを浮かべる彼女の顔には泣き顔ながらどこか安堵の表情を感じとれる。不安だったのだろうと勝手に推測する。こんな真っ暗な月光のみが光源の夜空の下、1人で命の火が消えかかっている父親の姿をじっと見つめていたのだ。俺だったら気がおかしくなっていても不思議ではない。
「強い人だ。さぁ、もう大丈夫だよ」
「クーリエさん——。父さんが、父さんが!!」
ようやく俺だと認識したのか、助けを求める彼女の声が一段と高くなった。俺は声を制するようジェスチャーを送ったが、一度緩めてしまった口はもう固く結ぶことができない。そして、その安堵の声をあいつも聞き逃すことはなかった。
「キィェェェェェェ!!!!」
再び怪物の口から奇声が発せられる。彼女に触れていた手を急いで耳元に持ってくるが、前の超音波攻撃のようなビリビリとした振動は伝わってこない。
「超音波じゃ——ない!!」
翼が高々と舞い上げられ、そのまま勢いよく地面に向かって振り下ろされる。地面にはそれによって生じた突風が砂埃となり俺たちがいるところにまで粉塵が襲いかかった。ここで俺は勘違いを犯していたことに遅れながら気がつく。今の奇声は攻撃のための超音波ではなく、こちら側に突進するための自分を鼓舞する雄叫びであることを!
先ほどまで皆で食事をしていたテーブルも吹き飛ばされ今では壁に突き刺さっている。そこには以前の原型はなく、ただ木材の破片が壁に亀裂を生み出している。ほんの数時間前のあの温かな食事が嘘のように思えるほどの惨劇がそこには広がっていた。そんなこと言う俺も立っていた場所から一気に壁にまで吹き飛ばされ、思い切り頭と壁が衝突する。壁に衝突の勢いからかピキピキと音をたて亀裂が縦に走る。鋭い痛みがすでに負っている傷と相まって襲いかかってくるがそんなことはどうでもいい。
「何が起きたんだ!? お父さんは大丈夫ですか??」
シンクがあった方に目をやる。だが、そこにあった景色は一度で完全に視認できるほど甘いものでもなかった。光源が全て吹き飛び部屋から明かりが奪われ、夜の暗闇が家中を覆っており状況を確認するのが困難であることも十二分にその要因としてあるが、何よりそこにあったはずのシンクが俺から少し離れた壁を突き抜けて外にまで飛ばされており、辺り一面シンク内の食器やらその後ろに設置されていた食器棚に入っていたものが破壊された残骸が散らばっている。ただでさえ視界が悪いのに、それを遮るものも多く地面に向かって倒れ込んでいた。それでも何度も強く瞬きをしながら父親の姿を探すが、そこにはいなかった。
「お——」
「父さん!父さん、しっかりしてよ!!」
泣き喚く甲高い声が俺の鼓膜をビリビリと震わせる。その声は上澄み、呼吸も大きく荒れている。だが、一瞬たりともその呼びかける声をやめようとはしない。精一杯の力を振り絞り意識をこちら側の世界に戻そうと試みている。天井が大きな音を立てながら崩れ落ち、地面に落下するや部屋全体を埋め尽くすほどの砂煙を巻き起こす。
声は聞こえてはいるが、それがどこから発されているのかこの暗闇の中では見当が付かない。かつてリビングだった場所からゆっくりと倒れていた身体を起こし、隣の壁の穴から外へと重い足取りで抜け出す。外にはこの大きな物音を聞いて駆けつけてくれた周りの住民の姿がうかがえた。その格好は皆ラフな格好でいかにこれが異常事態であるのかを物語っていた。
辺りを見渡す。しかし、どこにも彼女とその父親の姿は見つからない。
「ちっ!どこにいるんだ?」
焦る気持ちに当てられ身体は思い切りかけ出そうとするが、完治しきっていない怪我はそれを激痛という形で必死に阻止する。自分の思い通りに動かない身体に心底苛立ちを覚える。ここで動かなければいつ動くんだよ!
「おい!上をみろ!!」
無理をしてでも走り出そうとしたそのとき、心配で駆けつけてくれた住民の中からだろうかそんな声が上がった。その言葉に倣って上を見上げる。空には、地上を昼間のように照らす光源がこの町にはないためか、都心部では見られないほどの星が無数に光り夜空を綺麗に染め上げていた。だが、一部分だけ他の場所とはそぐわず真っ暗な漆黒を浮かべている部分があった。何かがその部分だけを遮断するようにして物体が浮遊している?周りで起こる悲鳴のせいか、はっきりと聞くことはできないが羽を動かすことによって生じる空気を振動させる音が微かに聞こえるような気がする。だが、その姿までもは暗闇のためしっかりと視認することまではできない。
「くそ、みんなこっからどこか遠くに逃げてくれ!空に何か敵らしき物体がいる!」
大声を出して避難を呼びかけるも、全員の耳には届いていないようで、誰もその場から動く気配は見せない。崩れゆく家から発生する瓦礫や木材が地面と連続して衝突する音の方が遥かに大きい。軽く舌打ちをすると、全員を避難させる道を諦めて、再び上空に存在する物体に目を向ける。
「いない——?どこに行ったんだ?」
ほんの数秒間目を逸らしただけだったが、今まで不自然なほど漆黒だった部分は空から払拭されており、一望して星が織りなす誰もが喉を唸らせるほどの絶景の夜空がそこには広がっていた。もしかして、俺の勘違いだったのか?それならば、一刻も早くお父さんを見つけて手当てを行いたい。俺は、そのままの流れで崩れゆく家に視線を戻した。
「キィェェェェェェ!!!!」
突如襲いかかる超高音の音波に咄嗟の反射で両手を使って耳を塞ぐ。それでも、手を伝って震わせる振動には頭が割れそうになる。駆けつけていた人の数人は耳を塞ぐのが僅かに遅れたことによって意識を飛ばしその場に声も出さずに倒れ込む姿があった。その音波の発生主は誰かはわかっている、先ほどまで空中で浮遊していたやつだ。一度目線を逸らした際に、上空から地上付近まで下降して家の影にへと潜り込んでいたのだ。それゆえ、先ほど空を見上げた際に見つけられなかったのだ。音による衝撃波でただでさえ崩壊を始めていた家が一気に大きな音と粉塵を撒き散らしながら瓦解する。
「コルル? 大丈夫か!!!」
俺がいる方とは家を挟んだ反対側に倒れ込む父親を膝に乗せているコルルの姿を発見する。彼女もこの音波のため耳を強い力で塞いでいるのがわかる。俺の声は届いていないようで、ずっと下を向いたまま父親の顔から目線を逸らすことはない。
「今行くからな!まってろよー!!」
再び大声でコルルに呼びかけるが返事は返ってくることはない。しかし、そんな態度をよそに俺は力強く、彼女の元に駆け寄る足を踏み出していた。超音波を発している怪物はちょうど俺とコルル達の真ん中ら辺に位置している。あいつに気付かれないように動けるのがベストだが、最悪気付かれてもこの視界の悪さだ。あいつだって少しくらいは影響を受けるだろうから、その戸惑っている合間に駆け寄れればそれでいい。
一通り破壊衝動が収まったのか気がつけば放たれていた超音波は止んでいた。だが、俺は耳を塞ぐ手を下ろす気は全く起きなかった。深い意味は特にないが、戦闘中になると時々俺は頭の中で本来なら行われるはずの思考がピタリと止まることがある。それは相手に対して周りの雑音が遮断されるほどの集中力が発揮されるからだが、今回の場合は少し異なっていた。思考が常に行われていた、その上で一度下げた状態で再び超音波の攻撃を喰らうと一瞬たじろぎ足が止まる可能性が高いこと、万が一防御が遅れることがあったら意識を飛ばされるかもしれないと、無意識のうちに数々の冒険をこなしてきた冒険者としての本能が咄嗟に働きこの行動を起こさせていた。
家を横断するように俺は極力物音を立てないよう忍足で破壊された家具などの影に入り込むようにしてコルルの元へ駆け寄っていく。怪物はまだ俺のことに気づいていないのか、首をいろんな角度に回しながら辺りの様子をキョロキョロと伺っている。何か俺以外に探しているものでもあるのかもしれない。怪物は基本的には単純思考しか行えないものだと、奴らの同種と幾度も戦闘を重ねる上でたどり着いた一つの仮説がある。
だが、今数メートル先で対峙している怪物はどうやらその答えから逸脱した存在であるようだ。本来の俺が今まで戦ってきた怪物ならば、俺を見失った時点で超音波攻撃をやめるようなことはしない。攻撃範囲を一段と広め、更に威力を上げた攻撃を撒き散らし見えない敵が炙り出されるのを待つのが定石通りだ。だが、そのような行動に移らない上に周りにいる怪物の彼等からして攻撃対象である自分や集まっている住民から目を背ける異常な行為に、明らかに誰かからの指示を受けてやっているように俺の目には映った。
だが、今はそんなことを気にしている暇はない。後からじっくり考えればいいと、俺は歩み寄るスピードを早める。コルルとの距離はほんの数秒駆け出せば届く距離まで詰めていた。怪物の方に目をやる。辺りを見渡すというおかしな行動はまだ続けていたが、こちら側に意識を向けているようには感じない。
「よし。いくか!」
ここからコルルのところまで影となる部分は一つもない。明るみに出るような形で俺は一気に距離を詰める。先ほどまでとは段違いに大きく彼女の泣いている声も耳に届く。父親の怪我の具合ははっきりとは分からないが、身体をピクリとも動かさないところを見ると、すぐにでも手当てをしなければいけない状況にあることは疑いようがない。
手を伸ばす。彼女の温かな肌に触れ、ようやく一方通行だった視線が絡み合った。途端に微笑みを浮かべる彼女の顔には泣き顔ながらどこか安堵の表情を感じとれる。不安だったのだろうと勝手に推測する。こんな真っ暗な月光のみが光源の夜空の下、1人で命の火が消えかかっている父親の姿をじっと見つめていたのだ。俺だったら気がおかしくなっていても不思議ではない。
「強い人だ。さぁ、もう大丈夫だよ」
「クーリエさん——。父さんが、父さんが!!」
ようやく俺だと認識したのか、助けを求める彼女の声が一段と高くなった。俺は声を制するようジェスチャーを送ったが、一度緩めてしまった口はもう固く結ぶことができない。そして、その安堵の声をあいつも聞き逃すことはなかった。
「キィェェェェェェ!!!!」
再び怪物の口から奇声が発せられる。彼女に触れていた手を急いで耳元に持ってくるが、前の超音波攻撃のようなビリビリとした振動は伝わってこない。
「超音波じゃ——ない!!」
翼が高々と舞い上げられ、そのまま勢いよく地面に向かって振り下ろされる。地面にはそれによって生じた突風が砂埃となり俺たちがいるところにまで粉塵が襲いかかった。ここで俺は勘違いを犯していたことに遅れながら気がつく。今の奇声は攻撃のための超音波ではなく、こちら側に突進するための自分を鼓舞する雄叫びであることを!
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