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キリの村編 〜クーリエ 30歳〜
X-20話 不思議な箱の中身-2
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『これは私が旧教会で護衛隊長を勤めていたときに聞いた話だ。そのころはいくつかの宗派に分かれて教会が乱立していた時代で、そのどれもが互いにそれぞれの考えや主張を尊敬しながら成立していた。そんな時、新しくこの村に新たな宗教派のウェルム教を信仰する教会が建設された。私は、そのことについて当初は何ら疑問を抱くことはなかった。苦しい生活を虐げられている村人にとっては神しか救いの手を差し伸べてくれるものがいないことは重々理解していたのもその背景にあるだろう。
だが、異変はすぐに起きた。まず、その当時最大権力を握っていた宗派の教会がウェルムと合併した。そして、その後も立て続けに合併と、解体が相次いで行われたることになったのだ。詳しい理由は分からない。だが、ウェルムが掲げる"天恵"と呼ばれる、それぞれに与えられた才能があるんだというキャッチコピーに村人全員が即座に惹かれ、魅了されていったのは私もこの村に生活していて肌で感じていた。なので、この流れにやましいことはなかったと、そう信じたい。村人の総意でそのような流れに至ったのだと。
そんな最中に君が村にやってきた。家族でやって来たのではない。ある医師に連れられてやって来たのだ。私が君を最初見かけた時声をかけたのは覚えているだろうか。君は頷くだけで返事を返してはくれなかったが、そのことをきっかけに連れてきた医師と日頃からよく無駄話をする関係になった。
医師の名前はカーブス。丁度その時、私が護衛していた教会も潰れることになり最後の挨拶にと思って彼の元を尋ねた。私の教会では酒を飲むことは禁じられていてね。初めてその日やつと酒を飲んで一晩を共にしたものだ。ひょんな会話の流れで最後に君の話が話題になった。
私は彼に問うとのだよ。彼は君の子供かと。彼はこう答えた。私は家内も持たない身だよ、と。ではなぜ彼とこの村を訪れたのだ、と聞いた。最後に捨てるように彼はこう言い放った。私が彼に世界を見せてやると、そう約束したからね、と』
文章はこれで締め括られていた。まだ続きの文字は書き込まれていたが、文字が掠れて認識することが叶わなかった。
頭が割れそうだった。これが自分が歩んで来た過去なのかと本当に疑ってしまうほど、そこに書かれている内容は自分の記憶しているものと大きな齟齬がある。俺をこの村に連れて来た男、それが医師なのか。全く記憶にない。それどころか、この村にどのような経緯で訪れるようになったのか、10歳になる時には記憶もはじまっているはずだ。それなのに、全く見当もつかないほど、俺の中の記憶は存在していなかった。
箱の一番底に置かれた、これまでとは毛色がちがう紙に手を伸ばす。それは先ほどよりも黄ばんでおり、時の経過を一番感じさせる。幾重にも折り重なったそれを丁重に外していく。次第に神秘性に包まれた中身が明らかになっていき、中身を月明かりの下に照らし出されていく。
それは一枚の絵。雑に色鉛筆で描かれたそれは何を書いているのか分からない。だが、把握できるもので描かれているのは4人の人間。大きく描かれている人が3人で小さく描かれているのが1人。地面は緑色で塗りつぶされており、所々に黒い点であったり、茶色の線が描かれている。空には太陽と月が同時に現れており、丁度真ん中で昼と夜が分断されているように見てとれる。そして、同様に空にも黒い点と茶色の線が乱れるように描き込まれていた。
だが、異変はすぐに起きた。まず、その当時最大権力を握っていた宗派の教会がウェルムと合併した。そして、その後も立て続けに合併と、解体が相次いで行われたることになったのだ。詳しい理由は分からない。だが、ウェルムが掲げる"天恵"と呼ばれる、それぞれに与えられた才能があるんだというキャッチコピーに村人全員が即座に惹かれ、魅了されていったのは私もこの村に生活していて肌で感じていた。なので、この流れにやましいことはなかったと、そう信じたい。村人の総意でそのような流れに至ったのだと。
そんな最中に君が村にやってきた。家族でやって来たのではない。ある医師に連れられてやって来たのだ。私が君を最初見かけた時声をかけたのは覚えているだろうか。君は頷くだけで返事を返してはくれなかったが、そのことをきっかけに連れてきた医師と日頃からよく無駄話をする関係になった。
医師の名前はカーブス。丁度その時、私が護衛していた教会も潰れることになり最後の挨拶にと思って彼の元を尋ねた。私の教会では酒を飲むことは禁じられていてね。初めてその日やつと酒を飲んで一晩を共にしたものだ。ひょんな会話の流れで最後に君の話が話題になった。
私は彼に問うとのだよ。彼は君の子供かと。彼はこう答えた。私は家内も持たない身だよ、と。ではなぜ彼とこの村を訪れたのだ、と聞いた。最後に捨てるように彼はこう言い放った。私が彼に世界を見せてやると、そう約束したからね、と』
文章はこれで締め括られていた。まだ続きの文字は書き込まれていたが、文字が掠れて認識することが叶わなかった。
頭が割れそうだった。これが自分が歩んで来た過去なのかと本当に疑ってしまうほど、そこに書かれている内容は自分の記憶しているものと大きな齟齬がある。俺をこの村に連れて来た男、それが医師なのか。全く記憶にない。それどころか、この村にどのような経緯で訪れるようになったのか、10歳になる時には記憶もはじまっているはずだ。それなのに、全く見当もつかないほど、俺の中の記憶は存在していなかった。
箱の一番底に置かれた、これまでとは毛色がちがう紙に手を伸ばす。それは先ほどよりも黄ばんでおり、時の経過を一番感じさせる。幾重にも折り重なったそれを丁重に外していく。次第に神秘性に包まれた中身が明らかになっていき、中身を月明かりの下に照らし出されていく。
それは一枚の絵。雑に色鉛筆で描かれたそれは何を書いているのか分からない。だが、把握できるもので描かれているのは4人の人間。大きく描かれている人が3人で小さく描かれているのが1人。地面は緑色で塗りつぶされており、所々に黒い点であったり、茶色の線が描かれている。空には太陽と月が同時に現れており、丁度真ん中で昼と夜が分断されているように見てとれる。そして、同様に空にも黒い点と茶色の線が乱れるように描き込まれていた。
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