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キリの村編 〜クーリエ 30歳〜
X-21話 お釣りはいらねー
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夜が明けた。教会の一室の窓から注がれる朝日を全身で受け止め、大きく伸びをして凝り固まった身体をほぐしていく。同時に口から欠伸も弛緩した筋肉に釣られて出てくるが、それを気にすることなくストレッチを続けている。
結局、あの後箱の中身を確認し終わるとすぐに帰路についた。コルルはどうしたのかというと、俺が中身全てを目を通し終わると、そのタイミングで入っていた隙間から出て来た。不服そうに何もなかったと愚痴をこぼしていたが、その割には両手に何か握っているように拳を作っていたのだが、あえてそれについて触れるような真似は取らなかった。大人しくクローゼットを見つけたと言う旨をコルルに報告すると、納得したように笑顔を浮かべ、寝泊まりさせてもらっている教会に戻って来たのだ。
教会内部は夜遅くに着いた時は寝静まり静寂に包まれていたが、昼が近くなっているこの刻には、そのような光景が嘘かのように人で溢れていた。窓から見てもそれがうかがえる。扉の先の廊下を先程から何度も人が行き来している音もそれを物語っていた。
「流石にお腹が空いたな。でも、こんな時間だしアンディー牧師もこの人数を相手にするのはまだ時間がかかるよな。仕方ない。村の方に行って何か食べれるものを口にするかー」
俺は適当に身支度を済ますと、部屋の扉を開け人混みに紛れるようにして教会に人に見つからないように村へと向かって行った。案の定外は人で溢れかえっていて、その人数は一目みるだけでざっと50人以上。窓から眺めているよりも、実際に参拝者と同じ場所に立つと人の熱気や、人混みの圧は段違いだ。それに気圧されながらも、少しばかり歩いていくと次第に人だかりは後方に下がり、目の前には落ち着いたキリの村が広がっていた。
俺はしばらく適当に村の中をフラついて営業中と書かれた飲食店を見つけるとそこに吸い込まれるようにして入っていった。飲食店といっても実際に店舗を構えていると言うことはなく、屋台のような形でカウンターを挟んで椅子が3つほど並んでいるだけの簡易的なものだ。だが、それでもそこから醸し出される芳醇な食事の香りが俺の食欲を激しく刺激し、気がついたら設置された椅子に腰掛けていた。
「いらっしゃい! お、あんた見ない顔だね。ご注文はお決まりですかい?」
頭に白いタオルを巻きつけ、好青年のような風貌の店主が声をかけてくる。
「久々にこの村を訪ねた身でね。この店で一番おすすめのものは何かな?」
「そりゃもちろん。こちらの、うさぎ肉のステーキになりますが。少々値段の方を張りますが、構いませんか?」
「なぁに。こちらも少しばかりは貯蓄がある。今ざっと12リーク金貨ある。これで足りるかな」
あの怪物との戦闘が終わった後、アンディー牧師から村人からの感謝の気持ちとして頂いたお金をカウンターに全て並べて見せる。すると、店主は驚くような顔を見せると、驚嘆の声を出しながら両手を自分との視界を遮るように金貨の前に突き出す。
「お、お客さん! 困りますよ、こんなの出されたら。今、この村は怪物の襲撃を受けてみんな一文無しなんですよ。それなのに、あなたがこんな大金を持っているって知ったらどうなりますか! それに、高いっていってもうちの料理は1リーク金貨の100分の1の価値しかないリーク銀貨50枚です。ウチの店まで風評被害を受けたらどうするんですか、これを早くしまってください!」
「す、すまない。それは配慮が足りてなかった」
俺は勢いに負けてそそくさと並べた金貨をポケットにしまう。しかし、たかだか金貨を並べたくらいで大袈裟なと言う気持ちに少なからずなってしまう俺であったが、ここは大都市と言うわけでもなく、どちらかというと辺鄙な村。住んでいる人の数も大都市と比べると天と地ほどの差がある。
そんな中で一人が大金を所持しているという噂が出回ると、その伝達速度も人数が少ない分こちらの方が早く回る上に、それが生み出す余波もこちらの方が影響力があるのか、と渋々納得した。
しばらくして俺の目の前にジュージューと音を立てながら、芳香を湯気と共に奏でている肉料理が現れた。ここはひとまず落ち着いて、すぐそこで店主も見ているわけだから冷静な食事っぷりを見せようかと思案したが、結局それはすぐに破綻した。こんな刺激的な料理の前に、自分の理性が保てるわけがなかったのだ。俺は無心となり、ただこの欲の塊である料理を食することだけにしばらくの間全神経を注ぐことになった。
「ところで、一つ尋ねたいのだが」
あらかた食事が終わると、使っていた食器を皿の横に置き俺は店主に声をかける。
「なんでしょうか? お金の隠し方以外の相談なら乗りましょう」
「そんなんじゃないよ。この村でさ、病気や怪我とかしたら大変じゃないのかい?ここに辿り着くまでに病院らしき建物を一つも見かけなかった気がしたんだが」
「この村に病院はありませんよ。その代わり、ここから北に10キロほど歩いた場所に一つ大きな集落がありましてね。確か名前を、アルゴーと称していたかな。そこにおる医者がここに月に数度足を運び、薬を持ってきたり、怪我人や病人にその時に必要な処置などを施したりしてくれているのですよ」
「なるほどな~。そういう仕組みになっていたのか。それじゃあこの村に病院は必要ねーわけだ。ところでさ、そういう関係はいつから続いているんだい?」
「さぁ? それは存じ上げませんが、私が幼い頃からすでにそのような関係にあったと思いますよ。変なことを尋ねるのですね」
「なぁに。少しばかり気になっただけだよ」
その言葉を言い終えると、俺は1リーク金貨を店主に渡し、釣りはいらねーと言い残しこの場から立ち去った。
結局、あの後箱の中身を確認し終わるとすぐに帰路についた。コルルはどうしたのかというと、俺が中身全てを目を通し終わると、そのタイミングで入っていた隙間から出て来た。不服そうに何もなかったと愚痴をこぼしていたが、その割には両手に何か握っているように拳を作っていたのだが、あえてそれについて触れるような真似は取らなかった。大人しくクローゼットを見つけたと言う旨をコルルに報告すると、納得したように笑顔を浮かべ、寝泊まりさせてもらっている教会に戻って来たのだ。
教会内部は夜遅くに着いた時は寝静まり静寂に包まれていたが、昼が近くなっているこの刻には、そのような光景が嘘かのように人で溢れていた。窓から見てもそれがうかがえる。扉の先の廊下を先程から何度も人が行き来している音もそれを物語っていた。
「流石にお腹が空いたな。でも、こんな時間だしアンディー牧師もこの人数を相手にするのはまだ時間がかかるよな。仕方ない。村の方に行って何か食べれるものを口にするかー」
俺は適当に身支度を済ますと、部屋の扉を開け人混みに紛れるようにして教会に人に見つからないように村へと向かって行った。案の定外は人で溢れかえっていて、その人数は一目みるだけでざっと50人以上。窓から眺めているよりも、実際に参拝者と同じ場所に立つと人の熱気や、人混みの圧は段違いだ。それに気圧されながらも、少しばかり歩いていくと次第に人だかりは後方に下がり、目の前には落ち着いたキリの村が広がっていた。
俺はしばらく適当に村の中をフラついて営業中と書かれた飲食店を見つけるとそこに吸い込まれるようにして入っていった。飲食店といっても実際に店舗を構えていると言うことはなく、屋台のような形でカウンターを挟んで椅子が3つほど並んでいるだけの簡易的なものだ。だが、それでもそこから醸し出される芳醇な食事の香りが俺の食欲を激しく刺激し、気がついたら設置された椅子に腰掛けていた。
「いらっしゃい! お、あんた見ない顔だね。ご注文はお決まりですかい?」
頭に白いタオルを巻きつけ、好青年のような風貌の店主が声をかけてくる。
「久々にこの村を訪ねた身でね。この店で一番おすすめのものは何かな?」
「そりゃもちろん。こちらの、うさぎ肉のステーキになりますが。少々値段の方を張りますが、構いませんか?」
「なぁに。こちらも少しばかりは貯蓄がある。今ざっと12リーク金貨ある。これで足りるかな」
あの怪物との戦闘が終わった後、アンディー牧師から村人からの感謝の気持ちとして頂いたお金をカウンターに全て並べて見せる。すると、店主は驚くような顔を見せると、驚嘆の声を出しながら両手を自分との視界を遮るように金貨の前に突き出す。
「お、お客さん! 困りますよ、こんなの出されたら。今、この村は怪物の襲撃を受けてみんな一文無しなんですよ。それなのに、あなたがこんな大金を持っているって知ったらどうなりますか! それに、高いっていってもうちの料理は1リーク金貨の100分の1の価値しかないリーク銀貨50枚です。ウチの店まで風評被害を受けたらどうするんですか、これを早くしまってください!」
「す、すまない。それは配慮が足りてなかった」
俺は勢いに負けてそそくさと並べた金貨をポケットにしまう。しかし、たかだか金貨を並べたくらいで大袈裟なと言う気持ちに少なからずなってしまう俺であったが、ここは大都市と言うわけでもなく、どちらかというと辺鄙な村。住んでいる人の数も大都市と比べると天と地ほどの差がある。
そんな中で一人が大金を所持しているという噂が出回ると、その伝達速度も人数が少ない分こちらの方が早く回る上に、それが生み出す余波もこちらの方が影響力があるのか、と渋々納得した。
しばらくして俺の目の前にジュージューと音を立てながら、芳香を湯気と共に奏でている肉料理が現れた。ここはひとまず落ち着いて、すぐそこで店主も見ているわけだから冷静な食事っぷりを見せようかと思案したが、結局それはすぐに破綻した。こんな刺激的な料理の前に、自分の理性が保てるわけがなかったのだ。俺は無心となり、ただこの欲の塊である料理を食することだけにしばらくの間全神経を注ぐことになった。
「ところで、一つ尋ねたいのだが」
あらかた食事が終わると、使っていた食器を皿の横に置き俺は店主に声をかける。
「なんでしょうか? お金の隠し方以外の相談なら乗りましょう」
「そんなんじゃないよ。この村でさ、病気や怪我とかしたら大変じゃないのかい?ここに辿り着くまでに病院らしき建物を一つも見かけなかった気がしたんだが」
「この村に病院はありませんよ。その代わり、ここから北に10キロほど歩いた場所に一つ大きな集落がありましてね。確か名前を、アルゴーと称していたかな。そこにおる医者がここに月に数度足を運び、薬を持ってきたり、怪我人や病人にその時に必要な処置などを施したりしてくれているのですよ」
「なるほどな~。そういう仕組みになっていたのか。それじゃあこの村に病院は必要ねーわけだ。ところでさ、そういう関係はいつから続いているんだい?」
「さぁ? それは存じ上げませんが、私が幼い頃からすでにそのような関係にあったと思いますよ。変なことを尋ねるのですね」
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