世界の深淵を0歳までの退化デバフをかけられた俺が覗くとき

卵くん

文字の大きさ
37 / 70
アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜

X-37話 衝撃の実験内容

しおりを挟む
「死んでる——のか? でも、一体どうして・・・。ここには常にお医者さんがいたし、毎夜俺も様子を確認しにきていた。というか、ついさっきまで呼吸も正常だったはずなのに」

「後悔しても遅いよ。その人は死ぬ運命だったんだから」

 寝転びながら言い放つ彼に、俺は勢いよく近寄ると両手を伸ばし胸ぐらを掴むと、一気に自分の身体に手繰り寄せる。不意に持ち上がる身体に彼は驚きの顔を浮かべていたが、俺の表情に笑みはなかった。

「この世に生まれた以上、無駄に散らしていい命なんてあるはずがない。それを、いや、彼が死ぬと、もしくは殺されると分かっていたのならそれを無理してでも止めるのが人間が取るべき行為なんじゃないのか!!」

 彼の顔から笑顔が再び消えた。そして、宿るのは底知れぬ負の感情。決して表に出してはいけないそれが顔を出す。

「彼はこの世に生まれた命を助ける医者でもありながら、無駄に命を散らしていたんだよ。それでも助ける価値があるっていうの?」

「どういう意味だ?」

「天恵の複数所持。口で言うのは簡単だけど実験はそう簡単に進むはずがない。多数の人体実験が行われてきたんだよ? この集落でね!!

あなたは、いやあんたは何にも分かっちゃいない!! 天恵とは本来宿もの。それを複数にするとは、どう言うことか! どう言うのか!!」

「ま、まさか・・・。命のキャパシティ超過が引き起こされるのか? 人の身を超えた天恵を所持した際には。もし、そうなるであれば——」

「死ぬんだよ。身体の中で天恵が暴発してね。でもね、あなたはまだ甘い! その天恵を、他の人に宿らせるためのそれをどうやって集めてきたと思う? 。 

最初は、もう寿命が間近な老人であったり、治療を受けにきた人から。次第に、それは孤児に移り変わり、最終的には優れた天恵を持つものから積極的にかつ強引に奪うようになった。

彼らはどうなったんだろうね・・・。天恵を奪われ、生きる意味を見いだせなくなった人も多くいたと聞く。そんな犠牲の上に成り立つ実験がこの集落で行われており、それら全てを招いたそのおっさんを!!!」

 彼の口から吐き出される言葉に時折嗚咽が混じる。気がつけば彼の頬を一滴の水滴が一筋の線を描きながら、ベットに落ちシーツに吸い込まれていった。

「なぜ無駄なリスクを背負ってまで助けなければいけないんだ?」

 俺は何も答えることができず、静寂の中に時折混じる涙と共に喉を鳴らす音がただ虚しくこのテント内を響かせていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ファンタジー成り上がり譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

処理中です...