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アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜

X-47話 アルゴーの集落からの旅たち

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 ユウシは真剣に集中して手紙の中身を読み始めると、ものの数分でその内容を網羅してみせた。紙いっぱいに文字が書かれていて、俺でも読み上げてしまうのに時間がかかってしまったものなんだが。読み終わるとユウシは、ふーん、と声を漏らして紙を丁寧に畳むと俺の方に戻した。

「一応聞くけど、この時の記憶とかってないの?」

 彼の問いに俺はすぐさま否定してみせる。

「ないな。不思議なことに全くと言っていいほどこの時の記憶はないんだ。どちらかというともう少し前の記憶の方があるくらいだ」

「やっぱり、あなたは面白い人だね。それに、奇妙でもある」

「どういう意味だ?」

 尋ねる俺に今度はユウシが笑って答えてみせる。

「記憶とは基本的に幼少期から行われるもので、特に昔に遡るほど記憶というものが曖昧になっていく。そういう意味ではあなたの記憶の朧げさは違和感がないのかもしれないが、親の存在も分からず、何も知らされずカーブスのクソ野郎に連れられてキリに連れて行かれたにしたら記憶が無さすぎる。

特に朧げになりがちな幼少期の記憶だが、特筆して楽しかったことや印象的に残ったことは生涯忘れることないほどの影響を記憶に与える。それなのに、それが一つもないのは奇妙だと言わざるを得ないよ。それに、このような手紙という形式でしかこの事実を伝えられないコルルのお父さんもね」

 不意に話を振られたコルルは肩をビクッとさせると、疑うような視線でユウシの方を見つめた。不審の塊のようだなと俺は思ったりもした。亡くなったお父さんのことを触れられて、疑問にでも思ったのだろうか。

「お父さんが奇妙? 何がどうして奇妙なのかしら。それより、周りの環境じゃないかしら、おかしいのは。こう言った形で口にするのを躊躇うような状況を作り上げたのは特に異常だわ。私のお父さんは何かいつも奥歯に詰めたような言い草をしていたけど、嘘をつく人ではなかったわ」

「分かってるよ。まだ、駒が揃ってないんだ。だから、僕も直感的に違和感としか表せられない。まぁ、とりあえずこの話はここまでにしよう。また、次の機会にでもよりじっくり語ろうじゃないか」

 ユウシがそう言いながら顎で自分の後ろを見るよう促してくる。すると、そこにはチラホラと目を覚ました野営地の親であったり、子供たちがゾロゾロとテントから出てこようとしていた。咄嗟に気付いたユウシはこれは人に聞かせる話ではないと判断したのだろう。英断だ、とすら俺は思った。

「あぁ。また、次の機会に。もしかしたら、その時は俺たちはここにはいないかもしれないが・・・」

 嫌味のようにそういう俺を振り返りながら、彼は笑って答えてみせた。

神童なんだから、どこに至って見つけるさ。と。
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