68 / 70
アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜
X-68話 ユウシの狙い
しおりを挟む
「当然じゃよ。そもそも、ワシらを騙し通せると思われたことが不愉快なくらいじゃよ!」
はっはっはっは、と大きな声で笑いをあげる白衣の老人。しかし、その声はどこか、寂しげであり、乾燥しきっている。周りの空気と同化していくまでも、そこまで時間はかからなかった。
「でも、僕は本当にひどいことをした。命ある人を奪う炎を、その程度の威力があると知りながらも、発動してしまったんだ!」
ユウシの叫びは、涙という水分を含み、先ほど同様にすぐに発散していくことはない。その場に留まり、しつこいほど残響してみせる。
「確かに。あなたは許されないことをしてしまったわ。断罪されても仕方ないほどに。でも、それは行われるべきじゃないことを知ってる。命を落とした人も悲しみに包まれているけど、あなただって苦しんで出した答えがそれだったのだから、あなたを憎んでも仕方ないのよ」
「あなたのところは・・・確かお父さんが亡くなられたのか。ユウシよ。後悔に身を滅ぼされながら生きていけとは、わしは言わん。じゃがな、人は誰しも生きているだけで、人を傷つけることがある。この事実を今回のことでしっかり肝に銘じてほしい」
俺は——目の前で行われている事象を現実のものと認識できなかった。ユウシが行ったことは、容認できることではないという考えで間違いないだろう。命を落とした人も多くいる。例えそれが、抑圧された状態から解放するために、振われた力だとしても。
トモキのお母さんは、愛する人を失ったのだ。それを、彼一人に業を背負わせぬために、彼女だけでなく野営地にいる全員で彼を擁護しようとしている。この考えは、俺にはなかったものだ。一人を守るために、胸の悲しみや憎悪を押さえ込んで、誰かに接することは。
「ところで、ユウシよ」
「なんだい?」
白衣の医師が声のトーンを変え、ユウシに問いかける。
「お主が、わざわざカーブスのところまで近寄って、欲しかったものとはなんじゃ?」
しばらくの静寂。それを口にすることを躊躇っているかのようであった。
「再生の炎。これが、僕が夢みたものだよ。それに一番近づけるのが、あの犯罪者だって思ったんだけど。どうやら、あいつは僕をここにいる、クーリエさんを呼び寄せる罠として使ったようだ。この僕が、掌の上で踊らされるなんて」
「え? 俺を引き寄せるって、なんのこと?」
話の流れが見えない展開の中、突如として自分の名前が浮上したことに驚きを覚える。そして、なんとも情けない声がこの野営地に響き渡った。
はっはっはっは、と大きな声で笑いをあげる白衣の老人。しかし、その声はどこか、寂しげであり、乾燥しきっている。周りの空気と同化していくまでも、そこまで時間はかからなかった。
「でも、僕は本当にひどいことをした。命ある人を奪う炎を、その程度の威力があると知りながらも、発動してしまったんだ!」
ユウシの叫びは、涙という水分を含み、先ほど同様にすぐに発散していくことはない。その場に留まり、しつこいほど残響してみせる。
「確かに。あなたは許されないことをしてしまったわ。断罪されても仕方ないほどに。でも、それは行われるべきじゃないことを知ってる。命を落とした人も悲しみに包まれているけど、あなただって苦しんで出した答えがそれだったのだから、あなたを憎んでも仕方ないのよ」
「あなたのところは・・・確かお父さんが亡くなられたのか。ユウシよ。後悔に身を滅ぼされながら生きていけとは、わしは言わん。じゃがな、人は誰しも生きているだけで、人を傷つけることがある。この事実を今回のことでしっかり肝に銘じてほしい」
俺は——目の前で行われている事象を現実のものと認識できなかった。ユウシが行ったことは、容認できることではないという考えで間違いないだろう。命を落とした人も多くいる。例えそれが、抑圧された状態から解放するために、振われた力だとしても。
トモキのお母さんは、愛する人を失ったのだ。それを、彼一人に業を背負わせぬために、彼女だけでなく野営地にいる全員で彼を擁護しようとしている。この考えは、俺にはなかったものだ。一人を守るために、胸の悲しみや憎悪を押さえ込んで、誰かに接することは。
「ところで、ユウシよ」
「なんだい?」
白衣の医師が声のトーンを変え、ユウシに問いかける。
「お主が、わざわざカーブスのところまで近寄って、欲しかったものとはなんじゃ?」
しばらくの静寂。それを口にすることを躊躇っているかのようであった。
「再生の炎。これが、僕が夢みたものだよ。それに一番近づけるのが、あの犯罪者だって思ったんだけど。どうやら、あいつは僕をここにいる、クーリエさんを呼び寄せる罠として使ったようだ。この僕が、掌の上で踊らされるなんて」
「え? 俺を引き寄せるって、なんのこと?」
話の流れが見えない展開の中、突如として自分の名前が浮上したことに驚きを覚える。そして、なんとも情けない声がこの野営地に響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
召喚失敗から始まる異世界生活
思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。
「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。
ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる