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1日目 全ての始まり

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私立天龍丘高校。そこは、明治から続く由緒ある高校で、地域住民からの信望も厚く、在学する生徒にはそれ相応の所作を身につけることも学習の一環にあるほどだ。また、入学する際にも高い学力を求められ、平凡な人間を篩い落とす。まさに神秘に包まれた学校の一つである。そして、極め付けに女性しか入学ができないという規定があり、男子からは羨望の眼差しで常に見上げられてきた。

だが、まさか思いもしなかった。そんな場所に、男の僕が通うことになるなんて——!

それはまるで僕、北村龍馬の人生を奈落の底に落とす天啓であるように思えた。雨が降る前期高校受験の合格発表の日に張り出された合格番号が羅列された複数枚の紙に自分の番号だけ飛ばされていたのを見た時はまさにそうとしか思えなかった。傘を通じて手に感じる降り注ぐ雨を感知することすらできなくなり、次第に傘を支える力すらいれることができなくなり、手から自然と傘が抜け落ちていったのを今でも覚えている。

私立高校を滑り止めとして受けていなかった僕は紛れもなく人生が詰んだと思っていた。でも、そんな時だった。不合格者だけ中学校の教室に集められた際、個別で担任の先生と対談をした内容はまさに突飛なものであるとしか思えなかった。この人は僕を騙そうとしているのか。そんなことすら疑ってしまうほどに。

「私立天龍丘高校の受験はどうですか」と言われ、すぐに首を縦に振ることはなかった。僕だって、少なからずこの高校の情報は知っている。特に、女子校であることはこの近辺に住んでいる男子生徒なら知らない人はいないくらいだ。僕だって友達に唆されて何度かその学校の校門付近まで行ったことだってある。

しかし、その次に繋げた言葉が更に僕を驚かせる。

「私立天龍丘高校は今年から共学制を導入しまして。それに伴って、学力テストでの足切りのレベルを撤廃したんです。加えて、この高校は後期受験でしか採用を行わないため、よほどの生徒は受験することすらできないんですよ!更にですね——」

 そして現在に至る。僕の今目の前にあるのは、大事なお知らせと大きく筆字で書かれた白い封筒。恐る恐るその中身を取り出してみると、中には一枚の紙が封入されていた。そこに書かれていたのは、『私立天龍丘高校合格のお知らせ』とだけ書かれた味気ないものだけだったが、これからの僕の人生を大きく変化させる出来事が静かに幕をあげたのであった。
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