学園に男子学生は僕一人!? コミュ障の僕には、そこは天国ではなく、地獄です

卵くん

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38日目 見えなかった人影

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「ねぇ。私の方からも一つ聞いてもいいかな?」

 微笑みを空に発散させ、純華さんは僕を真正面から捉える。風向きが変わったのか、彼女の髪は先ほどよりも逆向きに靡いている。ついでに、僕の背中から吹いていた風も、正面から受け止められ、どこか胸に圧迫感を覚えた。

「この四葉のハンカチ・・・。誰かに貰ったものなんでしょうか? どこか・・・あなたに合ってないような気がして」

 その顔は真剣そのもの。そこに、一切の笑みも浮かべてはいない。僕は後頭部を自分の手でなぞりながら、少し首を歪ませる。

「それは・・・。変に思われるかもしれないけど、僕にも特に思い当たる節がないんだ。気がついたら持っていて、捨てるのもなんだし、って感じで今までとりあえず肌身離さず持っていたんだ」

「誰かから頂いたもの。ということなのでしょうか?」

 僕は更に角度をつけて首を傾げた。

「いや、どうなんだろうね。本当に身に覚えがなくて。なんとも言えないな~」

「そう・・ですか、すみません。変なことを聞いちゃって」

キーンコーン

 昼休み終了5分前を告げる鐘の音が校内中に響き渡る。例に漏れず、僕と純華さんのところにも。心休まる休憩の終了であり、同時に再び授業の始まりを知らせる理由も含まれるチャイム。生徒の落胆の声も風に乗って、二人の下にまで届いてくる。それに反応してか、純華さんは僕の前で僅かに目を細めた。

「もう・・・授業が始まりますから・・。戻りますか、それぞれの教室に」

「そうだね」

 僕の返答を待たずに先を歩き出した純華さん。その背中はとても大きいはずだが、なぜかこの時に限りとても小さく見えた。いや、もしかしたら実際に縮んでいたのかもしれない。それか、光による屈折がもたらしたのか。だが、僕には、それを彼女に追求するだけの時間と、勇気がなかった。

「って! 僕もこんなことしている場合じゃないじゃん!! 早く教室に戻らないと!」

 純華さんの背中が見えなくなるまで、その場にずっと立ちぼうけていた僕だったが、急に我に戻った。この場所は、僕の教室から少し距離が離れている。時間に余裕があるならまだしも、残り五分のチャイムが鳴ってからしばらく時間も進んでいる。

「ちょっと走らないと間に合わないかもな・・・」

 僕は誰にも聞こえることのない小さな声でそう呟くと、足に力を込めてその場から駆け出した。この場から時刻を伺うことが叶わなかったからか、僕は何か非常に焦り、駆られていたのかもしれない。だからこそ、集中力が散漫としていたのだ。この場に他に誰かいたことなど、僕は一ミリも気づくことなかった。そして、その人は一度静寂に包まれた場所に、再び振動と音を投下するのだった。

「四葉のクローバーのハンカチ。流石、鯛は腐っても鯛と言ったところ、彼女も小さいにしろ歴としたお嬢様だったのね。あれの存在に気付かずにしろ、違和感として覚えるなんて」

 校舎の影から飛び出し、自らの影を地面に移した。特徴的な頭から伸びる二つの触覚とも思える髪束が、しっかりと影にも反映されていた。

「でも、あくまでそれだけですけど・・・。私の方が、まだ彼に近い存在。彼にレッドカーペットを歩かせるのは、私の役目で、その時彼の手を引くのも私が独占するんだから・・・」

 手で少しずれたメガネをかけ直すと、影は再び校舎の中に溶け込んでいった。
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