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春
2人と1人
しおりを挟む入学式を終えて数週間が経った。
高校生活にも慣れてきた頃。
放課後、学級長だからという理由でなぜか担任に拘束され、雑務を手伝うはめになった。
それらをやっと終えて、帰路に着く前に。
校内の自販機で飲み物でも買おうかと立ち寄れば。見知った2人が目に入った。
「僕、それね。彼方(かなた)はこっちでいいでしょ?」
「あ、それでいいよ。春希(はるき)はこれね」
「彼方よくこんなの飲めるよね。ま、いつものことだけど」
「春希こそ。それ、美味しいんだね。いつもそれな気がする」
見知った2人。
それは、同じクラスの佐山春希と篠原彼方だった。
小柄で明るい髪色の佐山が、紙パックの自販機前でしゃがみこみ飲み物を取り出していた。
その横で缶の自販機前で黒髪の篠原が財布を握り、逆の手にはコーヒーの缶を握りしめていた。
遠巻きに見守る、複数の女子たちの中で。
「………あの2人、1年?」
「え、黒い方背高くない?」
「いやいや、小さい方かわいすぎでしょ」
「今年の1年生いいね…」
どうやら、部活動中の女子高校生で先輩であるみなさんの目にはあの2人なかなかいいらしい。
体育館に近いこの自販機には、部活動中に使う水道がある。先輩たちは、そこで休憩中に2人を見つけたんだろう。
佐山が立ち上がりにこやかにピンク色のパックを握り締めているのが目に入ると、先輩たちの歓声はより大きなものへ。
「………いちごミルクとか。かわいすぎ」
たしかに、あざといが。
黄色い歓声。飛び交うかわいい、かっこいいの声。
あの2人、聞こえてるのか?
ぱちり。
佐山がこちらを見た。
苦笑いで片手を挙げる。
佐山の大きな黒目がちな目が、ゆっくり細められた。
「(み…る…な?)」
にこにこ顔の佐山の目は笑っていない。
口パクでの訴えが怖い。
手まで振っているくせに。
隣に立つの篠原はこちらに気づかない。
体育館側の通路にいた俺と逆方向に歩き始めた2人。
近くにいた女子たちは佐山に手を振っている。
黄色い歓声も落ち着いてきた。
桜がすっかり散り、青葉が茂る木々の合間に。
2人が握る黒とピンクが目立って見えた。
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