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春
2人
しおりを挟む「で?なーに見てたのさ、メガネ」
昇降口の近くで、靴を履き替える俺の後ろから聞こえた声は不機嫌そうで。
振り返れば、佐山春希がにこりともせずこちらを見ていた。
「別に。たまたまあの自販機に用があったんだよ」
「あっそ。目つき悪いからすぐ気付く。眉間のシワ、やばかったよ」
先ほどとは打って変わって、かわいさの欠片もない失笑。片手にはスクールバッグ。ぬいぐるみのような黄色のくまがゆらゆら揺れている。
もう片方の手には。
先程買ったピンク色ではなくて。
黒い缶が握られていた。
「………コーヒー、飲んでんの?」
「え?なに、悪い?コーヒー飲んでるよ、ブラックね」
「あれ、いちごミルクは?」
「あぁ。あれは」
クイっと。
顎を後ろにむける。
「は、はるき!早いよ」
黒髪の長身が駆けてくる姿が見えた。
ーーーーー
ーー
帰路にはついた。
いつもいない2人を連れて。
「で、篠原がいちごミルクなんだな」
そう。
この2人、お互いの飲み物を買い合っていたらしく。全くイメージの違う飲み物を片手にしている。
小柄で可愛らしい容姿の佐山がコーヒーを。
高身長で世に言うイケメンらしい篠原が、いちごミルクをだ。
「はぁ?そんなの勝手でしょ。僕、甘いの無理なんだよ」
「あはは。俺は苦いの無理でさ」
「イメージ変わるな、そうなると」
「それ、本当にうざい。勝手なイメージの押し付けでしょ?」
斜め下から飛んでくる視線はチクチク痛い。
こいつ、全然可愛くない。
「春希、言い過ぎだって。俺甘いもの好きだけど、こんなでかい高校生がいちごミルクじゃ変だよね」
逆に俺の斜め上から飛んでくる苦笑い混じりの声音はやさしい。
「で?結局なにしてたのさ、メガネ。放課後のあんな時間にさ」
「担任に頼まれごと。学級長だからだと」
「だっさ。捕まってんじゃん。学級長とか、メガネが寝てたからでしょ?自業自得だねぇ」
「お疲れ様。俺らも暇してたし手伝えばよかったね」
「………篠原、いい奴だなお前」
2人の間。
天使と悪魔の間。
「僕のかわいいにこにこ笑顔見といて、いい度胸じゃん」
にこにこ。小悪魔が嗤う。
ふわふわ揺れるミルクティー色の髪の毛が、夕方の風に揺れて。夕陽を照らしていた。
そんな、放課後。
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