魔法学園最弱の俺が英雄に

結城 もみじ

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第四十三話 ハーフ

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 次の日。
 アイは学校に来なかった。
 理由は教師にも述べずにだと。

 アイが居ない代わりなのか、今日の学園全体の雰囲気は何だか嫌なものに感じていた。
 だがそれはホールに生徒全員が集められたときにすぐに分かった。
 
 「この学園の中に呪われた種族。ハーフが居るという情報を手にした。そこで今から一人一人調べていく。逃げたものはすぐに処罰を下すので覚悟しとけ」

 貴族が来たのだ。

 この区にはいい貴族が比較的多いが、全部が良いとは言っていない。中には悪い貴族も存在しているのだ。主に悪い貴族は亜人、つまりエルフやドワーフや獣族といった種族を嫌い奴隷等にしている者も居る。
そして今回この学園に居る生徒の保護者の悪い貴族が学園に押しかけ、検査をしようとしているのだ。

 これには亜人や人間族の一部からも冷たい眼差しを送っている。
 中でも視線だけでは耐え切れなくなった生徒が飛び出し、暴力を振るおうとしていたところを専属の騎士が押さえ込んだことによって、周りは諦めるしかなかった。

 そんな中カケルはあることが疑問に思っていた。

 「何故学園長は止めなかったのか。普通なら学園の安全と信頼の為に断り、追い出すはずなのに」

 カケルが思っているように普通ならだ。
 だが、普通ではなく異常事態だったらどうだろうか。
 例えば秘密を握られたり。
 例えば身内が捕らわれていたり。
 まあでも、身内が捕らわれてもすぐに力でねじ伏せることが可能だからそれは無いと判断できる。

 そういった事を考えながら、カケルは自分の番が来るまで考え続けていた。
 そして自分の番が来て、貴族の前に立つと考えをやめ、真正面を見る。

 「腕を差し出せ」

 言われた通りに腕を差し出す。

 「はい」

 そしてしばらく腕を見つつげ、『よし。帰ってよし』と言われ席のほうへカケルは戻っていく。
 席にはセレスの姿もあった。
 どうやらカケルより早く検査が終わってたようだ。

 「セレスさん。検査どうだった?」

 カケルが声を掛けたことで気がついたセレスはひらひらと手を振る。

 「大丈夫だった。問題は無いと言われたよ。そっちは?」

 「こっちも大丈夫だったよ」

 「私は別にカケルさんがハーフだったとしても好きという気持ちは変わりませんけど」

 「そ、そう? それは嬉しい」

 少し戸惑ったのか、カケルは苦笑いで返す。
 そしてそこに、検査を終えたミア、クレアが合流してきた。
 二人の顔はむすっとしていて不機嫌気味の様子。
 そのことに気がついたカケルは二人に声を掛ける。

 「何かあったんですか?」

 「いや、少し嫌なことをされてね」

 「そうそう。ミアに興味を持っていたらしく、検査だと言って胸を触ろうとしていたんだよ。まあそれを私が止めたけどさ」

 そう言うとクレアは大きくも無く、小さくも無い一般的なサイズの胸を張りながら自慢する。
 自慢したのは、胸ではなく話のほうだと思うが。

 「もうこの話は良いでしょう。それとカケル、後で用があるからこれが終わったら少しここで待っていて。セレスとクレアは先に行っていて」

 その話を聞いたクレアは何かに気がついた様子で二人を茶化すように笑う。

 「分かった。分かった。二人の時間は邪魔しないよ……ププッ」

 「今笑ったような気がしたけど、まあ良いや。じゃあカケル後で」

 ミアはそう言い残すと、自分たちの学年の席に戻っていた。
 その後を『待って~私が悪かったよ~』と言いながら追いかけていくクレアを見たときは、二人とも苦笑いするしかなかった。


 その後検査が終了した。
 話によると、今ここに居る学園生徒にハーフは居なかったという。
 検査をしていた貴族は情報を提供した者なのか、生徒に詰め寄り時々大きな声を発していた。
 それを周りは良い目で見るわけが無く、氷のように冷たい視線を浴びさせる。
 それに耐え切れなくなった貴族は大きな足音をたてながら、その場を去った。去るときカケルとすれ違うとき、何故かは知らないが、舌打ちをしていた。まあそれを受けた張本人は気にしていない様子だが。

 カケルは検査が終わった後この場で待っていろと言われ、待っている。
 すると彼の姿が見れたからなのか、笑みを浮べながら近づいていく。

 「良かった、待っていてくれたんだね」

 「ミアさんが待っていてと言ったんですよ?」

 「そうだったね。ごめん、ごめん。それで早速本題に入るけど良いかな?」
 
 「はい」

 ミアは一呼吸置き、話の一区切りを作る。
 そして言いたくなさそうに、重たい口を開く。

 「さっきハーフの種族の者を探すために検査していたでしょ。あれ実はアイを探すために行っている行為なの」

 「えっ?」

 まだ話に付いていけてないカケルは状況を飲み込めず、『えっ?』の一言を言うので精一杯だった。
 その後もミアの話は続いていく。

 「実はアイは人間とエルフのハーフなの。でもエルフの特徴的なものが何も出ていない。その理由はハーフは見た目、寿命、魔力と大きく分けて三つにそれぞれ親の個性が出るの。そしてアイの場合は見た目は人間。寿命はエルフ。魔力はエルフと見た目以外はエルフなんだ。これについてはまだ習っていないと思う」

 「はい。呪われた種族のハーフが存在することしか」

 「それでアイは悪目立ちしないようにと、ワザと最下位になり。時々秘密が知られそうになった時学園を早退しているらしい。これは昨日全部学園長に聞いたこと」

 確かにカケルには少しおかしな行動をとっているアイを何度か見たことがあった。
 それも最近。
 闘技場でのパートナーとの連携の練習のときも妙にサポート側に回りたがっていたし、練習中に早退してもいた。その行動は全て自分の素性を隠すために行ったことで、理由があったのだ。

 そしてそのことを知り、カケルは申し訳ない気持ちと、何とかしてあげたいという二つの気持ちが出てきた。

 「ミアさん。僕たちに何か出来ることはありませんか? 少しでも役に立ちたいんです」

 その事を聞いたミアは考え込む素振りを見せる。

 「じゃあこれからはなるべく一緒に居てあげて。そうしたら少しは不安感を無くせると思うから」

 「分かりました!」

 「でも、たまには私とも一緒に居てね。それじゃあ話はおしまい。帰りましょう」

 
 
 ******************

 「今の進行状況はどうなっている?」

 何処かの建物の一室。
 そこでは会議が行われていた。

 「はい。今のところ危害が及ぶ段階には入っていません。ですが警戒はしておいて下さい。以上です」

 一人の男性が報告書を読むと、その場に居た皆の顔が厳しい様子に変わる。
 
 「ちょっと聞きたいのだが、危害に及ぶ段階には後どれくらいの期間で入りそうなのだ?」

 先ほど話していた男が報告書を何枚か捲り、発言者の質問に答える。

 「後二、三ヶ月ぐらいだと思います」

 すると皆の顔がより厳しい顔に変わる。

 「早いな……」

 「早いですね……」

 「でも、今の彼なら何とか出来るまでの力を持っているのでは?」

 「そうか! 確かにそうだ! あなたもそう思いますか?」

 「そうですね……一度力試しをしてみますか」
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