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第1章 魔犬
3.メイのナイショ話
「アハハハハッ」
メイの大きくて快活な笑い声が室内に響き渡る
「そんなに笑わなくてもいいだろう。本当に焦ったんだ」
メイに入れて貰った紅茶を飲みながらユウトは膨れてみせた。
メイド長はユウトを部屋の中に入れると苦々しげな顔をして「メイがユウト様の担当になります」と言った。
「ユウト様宜しくね~」と気さくに話しかけるメイに「だからあなたは…!!くぅ~!本当はもっと年配のちゃんとしたメイドをおつけしたかったのに!」とワナワナと震えだし、そのあまりの形相に今にも怒りで眼鏡のガラスがパーンと割れてしまうのでは無いかとユウトは心配した。
ーーー生真面目なメイド長と奔放なメイ、うん、合わないだろうなぁ…
「あの、メイド長。大丈夫ですよ、メイは以前から知っていますし…お世話になったので...」
ユウトが助け船を出すと、メイド長は震えを止め、こめかみに浮かべていた青筋を抑え込み「左様ですか。ユウト様が良ければそれが一番です。担当はメイになりますが、私も補佐致しますのでご心配なさらないで下さいませ。では」
と一礼し、メイをキッと睨み付け部屋を出ていった。
部屋を去るメイド長の後ろ姿にメイはアッカンベーと舌を出し、ドアを閉める際にそれに気づいたメイド長は見る見る顔を赤くしてバターーーン!と扉を雑に閉めた。
ーーー一応、王子の部屋なんだけどな。ドア壊れちゃうよ。でもあの態度を見るに自分はメイド長に嫌われてはいないのかな…
「メイド長と上手く言ってないの?」
とユウトが尋ねると、メイは「うーん」と首を傾げて腕を組み「あの人にとって私が頭痛の種だということは間違いないですね」と言ってニヤリと笑った。
「さぁさぁ、そんな事よりその堅苦しいベールを取ってお茶でも飲みましょう!お部屋にご案内しますから」
「お部屋に…ご案内?ここじゃないの?」
「ユウト様のお部屋はリオルド王子の続き部屋になります。あそこにドアが見えますでしょ?一旦王子の部屋を通らなきゃ行けませんが、一応ユウト様だけの個室ですよ」
ーーー続き部屋、個室。別室……家庭内別居?ということは、夫婦関係は無し。良かったぁ~
ユウトは安心してヘロヘロとその場に座り込んだ。
「あらあら、ユウト様そんなに疲れました?早く部屋に行きましょう」
驚いたメイに手を引かれて、部屋の右側に位置するシンプルな白いドアの中に入った。
広さは15畳くらいになるだろうか
部屋の中にはシンプルな木のベッドと応接用のテーブルに椅子が4脚、キャビネット、小さいながら洗面台にトイレまで常備されている。
リオルドの部屋の天蓋付きのベッドや見るからに高価なソファーセットと比べれば惨めなものだが、一人で過ごせると思えばユウトにとっては天国のような空間だ。
「なんだか、小ぢんまりした部屋で申し訳ないです」
さすがのメイもリオルドの部屋との違いにユウトが可哀想になったのだろう。
「え!いや、有り難いよ?本当に!悩みの一つが消えたというか?」
「どういうことです?」
「いや、別に…」
「ユウト様、メイには何でもお話して下さいよ」
「…じゃ、じゃあお茶でも飲みながら…」
そうしてここまで悶々としていた思いをメイに話し、大笑いされていた。
「は~面白かった。ユウト様は最高ですね」
「俺…僕にしたら死活問題なんだよ!」
「うんうん。そうですよね、アハハ。でも、リオルド様って氷の情炎なんて二つ名がつくほど冷酷で有名ですけど、見た目は完璧じゃないですか?男性でも抱かれたいなんて迫る人がいるんです。ユウト様はだめです?」
ーーー氷の情炎、妙な二つ名だ。普段は氷のように冷たいのに戦では炎のように燃え上がり、必ずや勝利を掴む…だったか?クリスには随分情熱的だったようだが。
「メイ、僕はこの17年間ずっと女の子が好きだったんだ。兄さん達を否定する訳じゃない。ただ、王族と結婚するのは4大侯爵家の中で1侯爵家から一人がルールのはずだ」
うんうん、とメイは頷く。
「それが急に一ヶ月前に王室から手紙が届いて、一ヶ月後に第二王子と結婚するようにって…もう何がなんだか…」
「そうですわね、誠に遺憾です。我が主に変わってメイがお詫び致します」
ふぅとユウトは溜め息をついた
「ごめん、謝って貰おうと思った訳じゃないんだ。僕だって覚悟をして最後は自分の意思で来たのだから」
ーーーそうだ、最終的に決めたのは自分だ。
リオルドが第一王子の妃クリスに秘めたる思いがあるというのは貴族の間では有名な話だ。
通常カナーディルの王子は18迄には婚姻関係を結ぶ
アーノルドとクリスも二人が18になった年に結婚し、もう3年もの月日がたった。
ルールに乗っ取れば、リオルドはロッドランド家の息子と結婚する予定だった。
リオルドと歳も同じでご学友でもあり、スムーズに話は進むと思われていた。
しかし、リオルド本人が一向に首を立てに振らない。
王や王妃が説得しても話を受け付けようともしなかった。
20歳になったある日、リオルドは唐突に言った。
「マグドー家にはクリスの下に次男がいるそうだな。顔も瓜二つだと聞いた。俺はそれと結婚する」
そこからは王家も侯爵家も大騒ぎだった。
今まで以上に王や王妃はリオルドを説得したし、クリスも大反対した。
マグドー侯爵家も「跡継ぎがいなくなってしまいます」と何度も嘆願書を出した。
しかしリオルドにとってはそんなことは瑣末な事だ
リオルドには第一王子を凌ぐ程の頭脳と力があり、強靭な肉体と強固な心がある。
最終的には、王が折れた。
断り続ければいつかリオルドは実力行使をしてクリスをアーノルドから奪うかも知れない
そうなれば国は戦となり、領民達を巻き込んでしまう
それならば、クリスに瓜二つだというその少年に身代わりとして妃になって貰えないだろうか。
王と王妃は夜に馬車を走らせ隠密でマグドー侯爵家に来て頭を下げた。
「酷い話だとは思っておる。だが、国の為にお願い出来ないだろうか、嫁いできたら悪いようにはしない」
王直々に頭を下げられて断れるものなどいない。
それでも、マグドー侯爵家の当主ジョン・マグドーは首を立てに振れなかった。
横で黙って聞いていたユウトは王に会って初めて口を開いた
「分かりました。俺、行きます」
その言葉を聞いたジョンと妻のマリエッタは泣き崩れ、王と王妃はユウトの手を固く握り感謝した
ーーー懐かしいことを思い出したな
これから開かれるパーティーの準備のためにメイがテーブルに大きな三面鏡を置いた
鏡に写る自分を見ながらユウトは思った。
「まさか、顔はそっくりでも髪と目の色がこんなに違うとは思わなかったんだろうな」
「え?」
思ったつもりが、うっかり口に出してしまっていたらしい。
「随分静かだと思っていたら、そんな事を考えていらっしゃったんですね」
「あー、うん。まぁ…何か騙したみたいになっちゃったかなぁなんて思ってさ」
メイは準備の手を止めて鏡越しにユウトに話しかけた。
「ユウト様、確かにクリス様はお綺麗です。キラキラした春の木漏れ日のようなお方に見えます。でもね、ユウト様にはユウト様の魅力があります。メイはユウト様の魅力は唯一無二、誰にも負けないと思っています」
ーーー唯一無二の魅力?
ユウトは婚約してから初めてマグドー家にリオルドが来た時のことを思い出した。
ユウトを見るなり顔は固まり、それっきり目を合わせようともしなかった。
次にあったのは今日の婚姻式だ。
クリスと余りに違うからショックだったのだろう
「メイ、ありがとう」
「私はいつでもユウト様の味方ですから。あと、一つ言い忘れておりました。しばらくリオルド王子との営みは無いと思いますので安心してお休みくださいね」
「え!本当に?」
ーーー何だその嬉しいビッグニュースは!
「これは王族のみ知る話しですから秘密ですよ。いくら精霊のルーツであると言ってもそのままでは子供が作れる体ではありません。王子と共に教会で儀式を終え、初めて子を為す体に変わるのです」
「そうなんだ、儀式、何だか怖いな」
「私は受けたことは無いですが…きっと大丈夫ですよ。それに儀式が終わるまでは王子も手を出さないでしょうし、終わってもすぐには何もしないでしょう」
「そっか。まぁ、クリスも生きてるし、命までは取られないよね」
「ふふっユウト様って本当に…!」
「あ、またばかにしてるな?」
「いえいえ、ユウト様を担当出来てメイは幸せです。さあ、時間も近づいてきたしパーティーの衣装に着替えましょう!」
メイは楽しそうに手を叩き箱の中からキラキラした衣装を出した
メイの大きくて快活な笑い声が室内に響き渡る
「そんなに笑わなくてもいいだろう。本当に焦ったんだ」
メイに入れて貰った紅茶を飲みながらユウトは膨れてみせた。
メイド長はユウトを部屋の中に入れると苦々しげな顔をして「メイがユウト様の担当になります」と言った。
「ユウト様宜しくね~」と気さくに話しかけるメイに「だからあなたは…!!くぅ~!本当はもっと年配のちゃんとしたメイドをおつけしたかったのに!」とワナワナと震えだし、そのあまりの形相に今にも怒りで眼鏡のガラスがパーンと割れてしまうのでは無いかとユウトは心配した。
ーーー生真面目なメイド長と奔放なメイ、うん、合わないだろうなぁ…
「あの、メイド長。大丈夫ですよ、メイは以前から知っていますし…お世話になったので...」
ユウトが助け船を出すと、メイド長は震えを止め、こめかみに浮かべていた青筋を抑え込み「左様ですか。ユウト様が良ければそれが一番です。担当はメイになりますが、私も補佐致しますのでご心配なさらないで下さいませ。では」
と一礼し、メイをキッと睨み付け部屋を出ていった。
部屋を去るメイド長の後ろ姿にメイはアッカンベーと舌を出し、ドアを閉める際にそれに気づいたメイド長は見る見る顔を赤くしてバターーーン!と扉を雑に閉めた。
ーーー一応、王子の部屋なんだけどな。ドア壊れちゃうよ。でもあの態度を見るに自分はメイド長に嫌われてはいないのかな…
「メイド長と上手く言ってないの?」
とユウトが尋ねると、メイは「うーん」と首を傾げて腕を組み「あの人にとって私が頭痛の種だということは間違いないですね」と言ってニヤリと笑った。
「さぁさぁ、そんな事よりその堅苦しいベールを取ってお茶でも飲みましょう!お部屋にご案内しますから」
「お部屋に…ご案内?ここじゃないの?」
「ユウト様のお部屋はリオルド王子の続き部屋になります。あそこにドアが見えますでしょ?一旦王子の部屋を通らなきゃ行けませんが、一応ユウト様だけの個室ですよ」
ーーー続き部屋、個室。別室……家庭内別居?ということは、夫婦関係は無し。良かったぁ~
ユウトは安心してヘロヘロとその場に座り込んだ。
「あらあら、ユウト様そんなに疲れました?早く部屋に行きましょう」
驚いたメイに手を引かれて、部屋の右側に位置するシンプルな白いドアの中に入った。
広さは15畳くらいになるだろうか
部屋の中にはシンプルな木のベッドと応接用のテーブルに椅子が4脚、キャビネット、小さいながら洗面台にトイレまで常備されている。
リオルドの部屋の天蓋付きのベッドや見るからに高価なソファーセットと比べれば惨めなものだが、一人で過ごせると思えばユウトにとっては天国のような空間だ。
「なんだか、小ぢんまりした部屋で申し訳ないです」
さすがのメイもリオルドの部屋との違いにユウトが可哀想になったのだろう。
「え!いや、有り難いよ?本当に!悩みの一つが消えたというか?」
「どういうことです?」
「いや、別に…」
「ユウト様、メイには何でもお話して下さいよ」
「…じゃ、じゃあお茶でも飲みながら…」
そうしてここまで悶々としていた思いをメイに話し、大笑いされていた。
「は~面白かった。ユウト様は最高ですね」
「俺…僕にしたら死活問題なんだよ!」
「うんうん。そうですよね、アハハ。でも、リオルド様って氷の情炎なんて二つ名がつくほど冷酷で有名ですけど、見た目は完璧じゃないですか?男性でも抱かれたいなんて迫る人がいるんです。ユウト様はだめです?」
ーーー氷の情炎、妙な二つ名だ。普段は氷のように冷たいのに戦では炎のように燃え上がり、必ずや勝利を掴む…だったか?クリスには随分情熱的だったようだが。
「メイ、僕はこの17年間ずっと女の子が好きだったんだ。兄さん達を否定する訳じゃない。ただ、王族と結婚するのは4大侯爵家の中で1侯爵家から一人がルールのはずだ」
うんうん、とメイは頷く。
「それが急に一ヶ月前に王室から手紙が届いて、一ヶ月後に第二王子と結婚するようにって…もう何がなんだか…」
「そうですわね、誠に遺憾です。我が主に変わってメイがお詫び致します」
ふぅとユウトは溜め息をついた
「ごめん、謝って貰おうと思った訳じゃないんだ。僕だって覚悟をして最後は自分の意思で来たのだから」
ーーーそうだ、最終的に決めたのは自分だ。
リオルドが第一王子の妃クリスに秘めたる思いがあるというのは貴族の間では有名な話だ。
通常カナーディルの王子は18迄には婚姻関係を結ぶ
アーノルドとクリスも二人が18になった年に結婚し、もう3年もの月日がたった。
ルールに乗っ取れば、リオルドはロッドランド家の息子と結婚する予定だった。
リオルドと歳も同じでご学友でもあり、スムーズに話は進むと思われていた。
しかし、リオルド本人が一向に首を立てに振らない。
王や王妃が説得しても話を受け付けようともしなかった。
20歳になったある日、リオルドは唐突に言った。
「マグドー家にはクリスの下に次男がいるそうだな。顔も瓜二つだと聞いた。俺はそれと結婚する」
そこからは王家も侯爵家も大騒ぎだった。
今まで以上に王や王妃はリオルドを説得したし、クリスも大反対した。
マグドー侯爵家も「跡継ぎがいなくなってしまいます」と何度も嘆願書を出した。
しかしリオルドにとってはそんなことは瑣末な事だ
リオルドには第一王子を凌ぐ程の頭脳と力があり、強靭な肉体と強固な心がある。
最終的には、王が折れた。
断り続ければいつかリオルドは実力行使をしてクリスをアーノルドから奪うかも知れない
そうなれば国は戦となり、領民達を巻き込んでしまう
それならば、クリスに瓜二つだというその少年に身代わりとして妃になって貰えないだろうか。
王と王妃は夜に馬車を走らせ隠密でマグドー侯爵家に来て頭を下げた。
「酷い話だとは思っておる。だが、国の為にお願い出来ないだろうか、嫁いできたら悪いようにはしない」
王直々に頭を下げられて断れるものなどいない。
それでも、マグドー侯爵家の当主ジョン・マグドーは首を立てに振れなかった。
横で黙って聞いていたユウトは王に会って初めて口を開いた
「分かりました。俺、行きます」
その言葉を聞いたジョンと妻のマリエッタは泣き崩れ、王と王妃はユウトの手を固く握り感謝した
ーーー懐かしいことを思い出したな
これから開かれるパーティーの準備のためにメイがテーブルに大きな三面鏡を置いた
鏡に写る自分を見ながらユウトは思った。
「まさか、顔はそっくりでも髪と目の色がこんなに違うとは思わなかったんだろうな」
「え?」
思ったつもりが、うっかり口に出してしまっていたらしい。
「随分静かだと思っていたら、そんな事を考えていらっしゃったんですね」
「あー、うん。まぁ…何か騙したみたいになっちゃったかなぁなんて思ってさ」
メイは準備の手を止めて鏡越しにユウトに話しかけた。
「ユウト様、確かにクリス様はお綺麗です。キラキラした春の木漏れ日のようなお方に見えます。でもね、ユウト様にはユウト様の魅力があります。メイはユウト様の魅力は唯一無二、誰にも負けないと思っています」
ーーー唯一無二の魅力?
ユウトは婚約してから初めてマグドー家にリオルドが来た時のことを思い出した。
ユウトを見るなり顔は固まり、それっきり目を合わせようともしなかった。
次にあったのは今日の婚姻式だ。
クリスと余りに違うからショックだったのだろう
「メイ、ありがとう」
「私はいつでもユウト様の味方ですから。あと、一つ言い忘れておりました。しばらくリオルド王子との営みは無いと思いますので安心してお休みくださいね」
「え!本当に?」
ーーー何だその嬉しいビッグニュースは!
「これは王族のみ知る話しですから秘密ですよ。いくら精霊のルーツであると言ってもそのままでは子供が作れる体ではありません。王子と共に教会で儀式を終え、初めて子を為す体に変わるのです」
「そうなんだ、儀式、何だか怖いな」
「私は受けたことは無いですが…きっと大丈夫ですよ。それに儀式が終わるまでは王子も手を出さないでしょうし、終わってもすぐには何もしないでしょう」
「そっか。まぁ、クリスも生きてるし、命までは取られないよね」
「ふふっユウト様って本当に…!」
「あ、またばかにしてるな?」
「いえいえ、ユウト様を担当出来てメイは幸せです。さあ、時間も近づいてきたしパーティーの衣装に着替えましょう!」
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いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。