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第2章 取り込まれる者
17,伝説と枢機卿
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「枢機卿さん、やっぱり白い花も少し入れたいです」
「じゃあ、あちらの奥も見てみましょうか」
メイのお見舞いに持っていく花を選ぶために庭園へ来たけど、リオルドはどこか上の空だ。
それも仕方がないのだろう。
カナーディルは今、かつて無い程の危機に晒されていた。
西の森に存在する穢れ、穢れに取り込まれ魔族に成り下がった人間、その魔族に殺されたミシェル。
そのミシェルを殺した魔族が今どこに潜んでいるのかも全くわからない。
それに併せて今回の毒薬騒ぎで、ルーツの子であるユウトが命を狙われていることも判明した。
現状、カナーディルの王家の血を継ぐ子を成せる可能性があるのはリオルド夫妻しかおらず、ユウトが息絶えてしまうことがあればカナーディルはゆくゆく滅びる可能性もある。
王子であるリオルドは今、大変な局面に立たされているのだ。
ーーーでも、こんな時に不謹慎だけど昨日は嬉しかったな。
リオルドと両想いだったとは思いもしなかった。
“好き”という言葉は聞けなかったけど、それに近い言葉は貰えた。
それだけでも大進歩だし、今はそれで満足だ。
そういえば、リオルドはクリスとイチャイチャするのはもうやめると言っていた。
僕と相思相愛になったし…僕が命を狙われているからと。
もしかして、クリスも以前は命を狙われたりしていたのだろうか?
だからリオルドはクリスとイチャつくことで敵を威嚇していた…とか?
うーん。
モヤモヤしながら花を選んでいると枢機卿が庭の一角を指差した。
「ユウト様、ダリアはどうですか?」
枢機卿が指差した先には白いダリアが咲いていた。堂々と元気よく咲くダリアの大輪はまるでメイのようで、気に入って貰える気がした。
枢機卿に切って貰い、黄色やオレンジの花が入った籠の中に白いダリアを入れるとさっきよりぐんと華やかに見える。
「うん、綺麗ですな。メイも喜ぶでしょう。早く渡して花瓶に入れるといいですよ」
「枢機卿さん、有難うございます」
「こんな事でお役に立てるならいつでもどうぞ」
枢機卿は目尻の皺を更に深めてウィンクをした。
痩せて気難しそうな外見とは裏腹にお茶目な枢機卿は話しやすくて親しみが湧く。
「それにしてもこの庭園はすごいですね。外国では季節によって咲く花が決まっているそうです。カナーディルは精霊レノディアの加護により、どんな花も季節問わずに咲きますし…特に城の庭園は花の種類も管理も素晴らしいです」
「ユウト様は勉強熱心ですなぁ」
「いえ、本で読んだだけです。読書が趣味で」
「ふむ。では、精霊レノディアの伝説は読みましたか?」
「はい、勿論。というか…幼い頃から聞いています」
♢ ♢ ♢
昔々、この地にまだ名前もついていない頃のお話。一人の男が建国の為に立ち上がった。
男の名前はロイド・カナーディル。無口で武骨な大男だったが民を愛する気持ちは強く、荒れ果てた土地を開拓しカナーディルを豊かな土地へと変えていった。
やがて、ロイドは領土の片隅に居ついていた精霊レノディアと恋に落ちる。
二人の恋は領民にも祝福されたが、神の大きな怒りをかうことになる。
二人は引き裂かれ、神は二人と領民に罰を与えた。
これからカナーディルの王家で王位を継承出来るのはルーツの子と結婚し産まれた王子のみ。ルーツの子は四大公爵家の男子に限る。
神は二人を引き裂き精霊レノディアを連れ帰ろうとしたが、レノディアは最後の力を振り絞りカナーディルに大きな加護を与え、力尽きた。
♢ ♢ ♢
“だからね、私達カナーディルに生まれたものは感謝しなきゃいけないよ。精霊レノディアとカナーディル王家、ルーツの子のおかげで毎日を無事に過ごせているのだから”
カナーディルに生を受けたものは小さな頃から毎日この話を聞かされて育つ。わざわざ本など読まなくても伝説を知らないものはいないのだ。
「僕達は精霊レノディアに感謝しなくてはなりませんね。命に変えて加護を残し守り続けてくれているのですから...」
ーーーそれなのに、今カナーディルは危機に瀕している。
「そうかなぁ」
「?」
「いやね、加護は…感謝してます。だけど、そもそもロイド・カナーディルと精霊レノディアが恋仲などにならなければ…領民は普通に暮らせたんじゃないですかな?」
「なる…ほど?」
「一番迷惑を被ってるのはルーツの子ですよ。男なのに、男に嫁がされて…儀式までして体を変え子供まで産まなきゃならない。精神的にも身体的にも負担は大きい」
どうしたものか。
いつも穏やかな枢機卿が、レノディア教会の枢機卿なのに伝説に否定的な発言をしている。
「しかも、精霊レノディアは男ではない」
「え?そうなんですか…。ルーツの子の経緯でてっきり男性かと…」
「精霊に男女といった性別は無いですが、どちらかといえばレノディアは女性よりですよ。男性をルーツの子にしたのは神からの罰、嫌がらせみたいなものです」
「嫌がらせ…」
「ユウト様はそれを聞いてどう思いますか?ルーツの子、私は被害者だと思っています」
どう思うと言われても長年伝説を聞いて育ってきたし、今の自分には答えはこれしかない。
「どう、と聞かれても正直良く分かりません。僕は伝説を聞いて育ってきたから、やっぱり精霊レノディアや王家を崇拝する気持ちがあります」
「そうですか...」
ユウトを見る枢機卿の目はどこか悲しげでユウトを通り越して遠くを見ているようだった。
「でも、ルーツの子になったのは良かったです」
「良かった?」
「正直、今まで誰かを好きになったことは無かったですし。最初は身代わり妃なんてって気持ちもあったけど…今は、そのちゃんとリオルド様を想っていて…でも、ルーツの子じゃなきゃ無理だから。だから、僕個人はルーツの子で良かったなって思ってます」
「そうですか」
「はい」
「それは、安心しました」
枢機卿はいつも通りの笑顔に戻り、庭園の入り口に目をやった。
「あぁ、リオルド様がこちらを気にしてらっしゃる。もう行きましょうか?」
枢機卿に促されるまま花を入れた籠を持ち二人でリオルドの元へ向かった。
「ユウト様がそのようなお気持ちなら良かったです。それに一番悪いのは精霊レノディアではない。ロイド・カナーディルですよ」
枢機卿の言葉が気になり聞き返そうとしたが、あっという間にリオルドの元についてしまった。
「もう花は選べたか?」
「あぁ、うん。選びました」
「じゃあ、行くぞ。枢機卿世話になったな」
「いえいえ、またいつでもどうぞ」
リオルドに急かされながら回廊を歩き、ふと気になって振り向くと、目があった枢機卿は嬉しそうに手を振ってくれた。
「じゃあ、あちらの奥も見てみましょうか」
メイのお見舞いに持っていく花を選ぶために庭園へ来たけど、リオルドはどこか上の空だ。
それも仕方がないのだろう。
カナーディルは今、かつて無い程の危機に晒されていた。
西の森に存在する穢れ、穢れに取り込まれ魔族に成り下がった人間、その魔族に殺されたミシェル。
そのミシェルを殺した魔族が今どこに潜んでいるのかも全くわからない。
それに併せて今回の毒薬騒ぎで、ルーツの子であるユウトが命を狙われていることも判明した。
現状、カナーディルの王家の血を継ぐ子を成せる可能性があるのはリオルド夫妻しかおらず、ユウトが息絶えてしまうことがあればカナーディルはゆくゆく滅びる可能性もある。
王子であるリオルドは今、大変な局面に立たされているのだ。
ーーーでも、こんな時に不謹慎だけど昨日は嬉しかったな。
リオルドと両想いだったとは思いもしなかった。
“好き”という言葉は聞けなかったけど、それに近い言葉は貰えた。
それだけでも大進歩だし、今はそれで満足だ。
そういえば、リオルドはクリスとイチャイチャするのはもうやめると言っていた。
僕と相思相愛になったし…僕が命を狙われているからと。
もしかして、クリスも以前は命を狙われたりしていたのだろうか?
だからリオルドはクリスとイチャつくことで敵を威嚇していた…とか?
うーん。
モヤモヤしながら花を選んでいると枢機卿が庭の一角を指差した。
「ユウト様、ダリアはどうですか?」
枢機卿が指差した先には白いダリアが咲いていた。堂々と元気よく咲くダリアの大輪はまるでメイのようで、気に入って貰える気がした。
枢機卿に切って貰い、黄色やオレンジの花が入った籠の中に白いダリアを入れるとさっきよりぐんと華やかに見える。
「うん、綺麗ですな。メイも喜ぶでしょう。早く渡して花瓶に入れるといいですよ」
「枢機卿さん、有難うございます」
「こんな事でお役に立てるならいつでもどうぞ」
枢機卿は目尻の皺を更に深めてウィンクをした。
痩せて気難しそうな外見とは裏腹にお茶目な枢機卿は話しやすくて親しみが湧く。
「それにしてもこの庭園はすごいですね。外国では季節によって咲く花が決まっているそうです。カナーディルは精霊レノディアの加護により、どんな花も季節問わずに咲きますし…特に城の庭園は花の種類も管理も素晴らしいです」
「ユウト様は勉強熱心ですなぁ」
「いえ、本で読んだだけです。読書が趣味で」
「ふむ。では、精霊レノディアの伝説は読みましたか?」
「はい、勿論。というか…幼い頃から聞いています」
♢ ♢ ♢
昔々、この地にまだ名前もついていない頃のお話。一人の男が建国の為に立ち上がった。
男の名前はロイド・カナーディル。無口で武骨な大男だったが民を愛する気持ちは強く、荒れ果てた土地を開拓しカナーディルを豊かな土地へと変えていった。
やがて、ロイドは領土の片隅に居ついていた精霊レノディアと恋に落ちる。
二人の恋は領民にも祝福されたが、神の大きな怒りをかうことになる。
二人は引き裂かれ、神は二人と領民に罰を与えた。
これからカナーディルの王家で王位を継承出来るのはルーツの子と結婚し産まれた王子のみ。ルーツの子は四大公爵家の男子に限る。
神は二人を引き裂き精霊レノディアを連れ帰ろうとしたが、レノディアは最後の力を振り絞りカナーディルに大きな加護を与え、力尽きた。
♢ ♢ ♢
“だからね、私達カナーディルに生まれたものは感謝しなきゃいけないよ。精霊レノディアとカナーディル王家、ルーツの子のおかげで毎日を無事に過ごせているのだから”
カナーディルに生を受けたものは小さな頃から毎日この話を聞かされて育つ。わざわざ本など読まなくても伝説を知らないものはいないのだ。
「僕達は精霊レノディアに感謝しなくてはなりませんね。命に変えて加護を残し守り続けてくれているのですから...」
ーーーそれなのに、今カナーディルは危機に瀕している。
「そうかなぁ」
「?」
「いやね、加護は…感謝してます。だけど、そもそもロイド・カナーディルと精霊レノディアが恋仲などにならなければ…領民は普通に暮らせたんじゃないですかな?」
「なる…ほど?」
「一番迷惑を被ってるのはルーツの子ですよ。男なのに、男に嫁がされて…儀式までして体を変え子供まで産まなきゃならない。精神的にも身体的にも負担は大きい」
どうしたものか。
いつも穏やかな枢機卿が、レノディア教会の枢機卿なのに伝説に否定的な発言をしている。
「しかも、精霊レノディアは男ではない」
「え?そうなんですか…。ルーツの子の経緯でてっきり男性かと…」
「精霊に男女といった性別は無いですが、どちらかといえばレノディアは女性よりですよ。男性をルーツの子にしたのは神からの罰、嫌がらせみたいなものです」
「嫌がらせ…」
「ユウト様はそれを聞いてどう思いますか?ルーツの子、私は被害者だと思っています」
どう思うと言われても長年伝説を聞いて育ってきたし、今の自分には答えはこれしかない。
「どう、と聞かれても正直良く分かりません。僕は伝説を聞いて育ってきたから、やっぱり精霊レノディアや王家を崇拝する気持ちがあります」
「そうですか...」
ユウトを見る枢機卿の目はどこか悲しげでユウトを通り越して遠くを見ているようだった。
「でも、ルーツの子になったのは良かったです」
「良かった?」
「正直、今まで誰かを好きになったことは無かったですし。最初は身代わり妃なんてって気持ちもあったけど…今は、そのちゃんとリオルド様を想っていて…でも、ルーツの子じゃなきゃ無理だから。だから、僕個人はルーツの子で良かったなって思ってます」
「そうですか」
「はい」
「それは、安心しました」
枢機卿はいつも通りの笑顔に戻り、庭園の入り口に目をやった。
「あぁ、リオルド様がこちらを気にしてらっしゃる。もう行きましょうか?」
枢機卿に促されるまま花を入れた籠を持ち二人でリオルドの元へ向かった。
「ユウト様がそのようなお気持ちなら良かったです。それに一番悪いのは精霊レノディアではない。ロイド・カナーディルですよ」
枢機卿の言葉が気になり聞き返そうとしたが、あっという間にリオルドの元についてしまった。
「もう花は選べたか?」
「あぁ、うん。選びました」
「じゃあ、行くぞ。枢機卿世話になったな」
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