月夜の守護者

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月夜の守護者

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アルノルトの腕に抱かれながら、レオンはしばしの安らぎを感じていた。いつもなら、儀式の後には体が重く、心が冷たくなるのを感じていたが、今は彼のぬくもりがその苦しみを和らげてくれているようだった。

「レオン、村を守ることも大切だが、お前の命もそれ以上に大切なんだ。それを忘れないでくれ」

アルノルトの低い声が、夜の静寂に溶け込むように響いた。レオンはただ頷き、彼の肩にそっと頭を預けた。

「でも、僕は神官として、命を懸けてでも守らなければならないものがある。これは…僕の生まれた意味でもあるんだ」

アルノルトは言葉を飲み込み、レオンの顔を見つめた。その瞳には、理解と共に悲しみも浮かんでいた。

「…それでも、お前一人で背負わせるつもりはない。俺がここにいる限り、どんなにお前が拒んでも、俺は共にいる」

「アルノルト…」

レオンは、長年自分の中で封じ込めていた感情が少しずつほころびるのを感じていた。彼の温かい言葉と、まっすぐな眼差しに、どれだけ救われたか――それを素直に伝えたくなる自分がいた。

「ありがとう。本当に…ありがとう」

レオンは小さな声で囁いた。アルノルトはただ無言で彼の肩に手を置き、そのまま夜の深い静寂に溶け込むように、二人は並んで立っていた。

その翌日、レオンは神殿で祈りを捧げながらも、アルノルトの言葉を思い返していた。今までは一人で背負い続けてきた役目も、彼の存在が心の支えになっているのを感じた。それでも、まだ心の奥には迷いが残っていた。

「村を守るためには、誰かが犠牲になるしかないのか…」

そんな風に考える自分がいることに、少しだけ罪悪感を覚える。しかし、今はその答えが見つからないままだ。

「レオン」

祈りの途中で、またしてもアルノルトが神殿に姿を現した。彼は普段よりも真剣な表情をしており、そのままレオンの前に立つと、深い瞳で見つめてきた。

「今夜、もう一度お前と一緒に儀式の場に行かせてくれ」

レオンは驚いた。「なぜ、そこまで…」

「お前が一人で苦しむ姿をもう見たくない。それに、村を守るための方法は他にもあるかもしれない。俺も力を貸すから、違う方法を一緒に探そう」

アルノルトの言葉に、レオンの胸がじんと熱くなった。彼は一人で戦い続けてきたが、アルノルトと共に道を見つけられるのかもしれない――そう思ったのだ。

「…わかった。一緒に行こう」

レオンはそう言いながら、アルノルトと共に森の奥へと向かって歩き始めた。月明かりが静かに二人の影を照らし、冷たい夜風が彼らを包んでいた。

森の奥深く、儀式の祭壇が置かれた場所に到着したレオンは、いつも通り祈りの準備を始めた。アルノルトは少し離れた場所で、彼を見守っている。夜の静寂の中で、レオンの小さな祈りの声が響き渡る。

だがその時、ふと風が強く吹き、森全体がざわめき始めた。不穏な空気が漂い、レオンの体が自然と緊張を感じる。何かが、封印の力を破ろうとしている――そう直感した。

「レオン!」

アルノルトの叫び声が聞こえた瞬間、祭壇の周りから闇の影が現れ、レオンに襲いかかろうとした。咄嗟にレオンは祈りの力で防御の結界を張るが、その闇の力は想像以上に強力だった。

「くっ…!」

結界が徐々に押し破られ、レオンはその場に倒れ込みそうになる。だが、その瞬間、アルノルトが駆け寄り、彼の前に立ちふさがった。

「アルノルト!危ない!」

「俺はお前を守ると決めたんだ!」

アルノルトは自分の剣を構え、闇に向かって立ち向かった。彼の決意と共に剣が光を帯び、闇の影を切り裂いていく。その姿を見つめながら、レオンは胸の奥で再び熱い感情がこみ上げるのを感じた。

「アルノルト…」

二人の力が合わさったその時、封印の結界が再び力を取り戻し、闇の影が徐々に消え去っていった。静寂が戻ると同時に、レオンはアルノルトに支えられながら立ち上がり、弱々しく微笑んだ。

「君がいてくれて、本当に助かったよ」

アルノルトは微笑み返し、レオンの手をそっと握りしめた。「これからも、ずっとお前のそばにいる。だから、もう一人で苦しむな」

レオンはその言葉に救われたような気持ちで、しっかりと頷いた。

こうして、二人は互いに支え合いながら、村を守るために新たな道を歩んでいくのだった。
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