Dream of Center Mother

弥代 楓

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第一話 運び屋

7.「事務所2」

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 うちの事務所は決して広くはない。
そんな室内で暴れ回るとどうなるかなんて、火を見るよりもずっと明らかだろう。

後片付けをするシオンの事を思うと涙を禁じ得ないが、部屋の掃除の心配をする前に考えなければならない事がある。

一先ずは、この状況をどう切り抜けるか。

 フードの男は既に二発の鉄杭を発射した。
あの手の杭打ち機は小型化により携帯性は向上しているが、それ故に装填数はそこまで多くはない筈だ。

見たところ、あと三発といったところか。
さて、どう来る…

「…やはり、こちらの方が、いいか。」

ドンッと踏み込み距離を詰めてくる男。
その巨体に似合わず、なんという速さだ。

考える間もなく、ゴッ、と鈍い音が響く。

「が、ぁ……」

土手っ腹に男の拳を貰ってしまったらしい。
重く、鋭い一撃。呼吸が止まる。

「ヤマトさん!!」

「い…いから、お前は、逃げろ!」

「で、でも…アンタ……」

「ゲホッ…このまま全滅よりは…マシだろうが。」

シオンは黙っている。だがその目は語っている。
荷物なんて置いていけばいいじゃないか、と。

だがそれは、その選択は俺の中には無い。
それがわかっているから、何も言えないのだろう。

「シオン…」

「…ッ」

出口の方向へ走り出すシオン。
そうだ、それで良い。
悪いな、頑固な雇い主で…

「仲間を救う為、犠牲に、なるか。」

「…生憎、死んでやるつもりはないさ。」

痛む腹部を抑えつつ、向き直る。
虚勢ではあるが、本心でもある。ここで死ぬつもりなんて毛頭ない。

「荷物を、渡せば、命まで奪いは、しない。」

「悪いな。アレを渡す気はないんだ。
こちらにも意地ってものがある。」

「…強情、だな。」



「全くだ。だがその意地とやらはどこまで張れるだろうね?」



「!!」

 いつの間にか、フード男の相方らしい老紳士が事務所まで上ってきていた。
首元に仕込み杖の刃を当てがわれたシオンと共に。

「ヤマトさん、すみません…俺…」

瞬時に状況を理解する。
どうやらここまでのようだ。

「…いや、お前は悪くないさ。こうなる想像はついた筈なんだ。俺の考えが及ばなかった。」

相手の方が一枚上手だった。それだけの話。

「……わかった、わかったよ。
降参だ。荷物は渡す。
だからそいつを離してくれ。」

「いいね、素直なのは良い事だと思うよ。
本音を言えば最初からそうしてくれた方が助かったけれど。」

老紳士はそう言ってシオンを解放する。

「でもね、事情が変わったんだ。君が君である以上、生かしておくわけにはいかなくてね。という訳でトキサダくん、よろしく。」

「…どういう、意味だ?」

トキサダ、と呼ばれた目の前のフードの男も困惑しているらしい。
老紳士は続ける。

「…上からのお達しだよ。彼は『  』だ。」

「…!」

………?
今、彼はなんと言った……?
うまく、聞き取れなかった。

「ヤマトさん!!!!!!」

シオンの声が響き、ハッと我に帰る。
だが、遅かったらしい。

発射された三本の鉄杭が、俺の身体を貫いた。
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