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第三章
二十五
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強く腰を叩きつけられ、びくんっと体が跳ねる。腹の奥で陽根が震え、もう何度目かわからない精が胎を満たしていく。
一滴残らず胎に残そうと切っ先を押し付けてくるジルヴィウスに応えるように、濡襞は彼のものにまとわりついた。
何度注がれても足りないというように、シーラのそこはジルヴィウスに絡み付いて離さない。
「んん……ジル……」
荒い呼吸を繰り返しながら、シーラは後ろを振り向く。
ジルヴィウスは鬱陶しそうに前髪をかき上げると、上体を倒しシーラの唇に吸い付いた。
「疲れたか?」
「まだ、だいじょぶ」
汗に濡れた彼の頬を指先で撫でれば、ジルヴィウスは目を細め、彼のものを引き抜いた。追い縋るように蜜口がひくつくのを感じながら、どうして、と睨めば、ジルヴィウスはシーラの体を仰向けにして、頬に噛み付いてくる。
「少し休憩しろ。のぼせたんだから、水分取れ」
言うのと同時に彼は片手を上げ、もう一方の手でシーラを引き起こした。水差しとグラスが宙に浮かび、ジルヴィウスは上げた手で水差しを掴むと、グラスに水を注いでいく。
水がなみなみと注がれたグラスと、それを差し出すジルヴィウスを交互に見たシーラは、ふいっと顔を横に背ける。
「おい――」
「ジルが飲ませて」
「なに……?」
シーラはジルヴィウスに視線を戻すと、グラスを彼のほうへ押し返す。首を伸ばし、雛鳥のように、あ、と口を開ければ、ジルヴィウスは片眉を上げた。
深く息を吐き出し、水を口に含むと、シーラの後頭部に手を添え、口内に水を移していく。
ぬるい水を飲み込みながら、熱い彼の舌に吸い付けば、軽く尻を叩かれた。
「休憩だと言ってるだろ」
「キスだけだもん」
両腕を彼の首に回し、頬やこめかみに口付けを繰り返せば、ジルヴィウスは諦めたように息を吐き、グラスに口を付けた。
「もうお酒は飲まないの?」
上下する彼の喉仏に触れながら問えば、ジルヴィウスは軽くシーラの頬をつねった。
「俺を酔わせてどうする気だ?」
「んー……可愛いジルが見たい? お酒飲んだジル、目がうるうるしてて可愛かったから」
言葉を失ったように押し黙ったジルヴィウスに、シーラは、ふふ、と笑みを漏らす。ジルヴィウスから離れ、彼の手からグラスを取ると、ぐびぐびと中身を飲んでく。
冷たい水が体を巡っていく感覚に、気持ちが少しだけ落ち着く。水を飲み干し、はーっ、と大きく息を吐くと、シーラは明るい笑みを浮かべた。
「ごめんね。ジルがたくさん甘やかしてくれるから、つい甘えすぎちゃった。ジルは明日出掛けるようだし、今日はもうこのまま寝ちゃおうか?」
(あ、でも体は綺麗にしないと)
様々な体液で汚れた自分の体を見下ろしたシーラは、何か拭くものがないかと室内に目を向ける。しかし、すぐに視界が揺れ動き、気が付けばジルヴィウスに押し倒されていた。
持っていたグラスは宙に浮いていた水差しとともにどこかに消え、シーラはただ呆けたようにジルヴィウスを見上げる。
「ジル……?」
どうしたのだろう、と首を傾げれば、彼は優しくシーラの頬を撫でた。
「別にいくらでも甘えていい。好きなだけ……」
言いかけて、彼は口を閉じる。何か迷うように口元に力を入れたかと思うと、ジルヴィウスはシーラの首元に顔を埋めた。
「……本当に気にしてないのか?」
何を、と問う必要はなかった。今日、彼が何でもかんでも自分の言うことを聞いてくれるのは、南部公爵――彼と関係を持った女性と会ってしまったことが理由だとわかっているからだ。
(罪悪感で落ち込んでるジルが可愛いからって調子乗っちゃったかも。そもそも落ち込んでる相手にわがまま放題って……)
常識的に考えていかがなものだろうか、と途端に冷静になる。もしかしたら、怒っているからわがまま放題しているのだ、と彼が勘違いしているのかもしれない。
シーラは誤解を解くべく、慌てたように首を横に振った。
「本当に気にしてないよ! いっぱいわがまま言っちゃったのは、ジルが過去のこと気にして落ち込んで、何でも言うこと聞いてくれるのが可愛くて、それでちょっと魔が差したっていうか……! 落ち込んでるのがわかってるのに、よくなかったよね!? ざ、罪悪感に付け込んでやりたい放題してごめんね……?」
宥めるように彼の頭を撫で、汗で少ししっとりとした髪を梳けば、ジルヴィウスはのっそりと上体を起こした。見えたジルヴィウスの表情は、ひどく不愉快そうだ。
(や、やっぱり罪悪感に付け込んだことを怒って――)
「少しも嫉妬しないのか?」
「え……?」
思いがけない言葉に目を瞬かせれば、ジルヴィウスは不機嫌そうに鼻を鳴らした。「もういい」と呟き、彼は背を向けた状態で隣に寝てしまう。
ジルヴィウスの広い背中を見つめながら、シーラはぽかんと口を開ける。
(え……え? つまり……わがまま放題やりたい放題に怒ったんじゃなくて、わたしが南部公爵様のこと……過去の女の人たちのことを気にしてないことが気に障ったってこと……?)
その事実に気付いた瞬間、愛おしさに胸が甘く締め付けられた。
なんて可愛い人なのだろう。
そういえば、以前嫉妬されて嬉しそうだったな、ということを思い出しながら、シーラは体を起こし、ジルヴィウスの肩に手を置く。
「ジル。ジル、ごめんね」
ちゅ、ちゅ、と頬への口付けを繰り返せば、ジルヴィウスは横目でシーラを見た。何がだ、と問いかけるような視線に、シーラは彼の目尻へと口付ける。
「ジルは嫉妬が嬉しいのに嫉妬しなくてごめんね」
ぐっと眉根を寄せ、顔を顰めるジルヴィウスに、シーラは「あのね」と言葉を続ける。
「昔は……嫉妬したよ。ジルと会えなかったときと、結婚してすぐのとき。わたし以外にもジルとこうして過ごした人がいたんだって……嫌な気持ちになった」
ジルヴィウスは、はっとしたようにシーラを見ると、体を起こし、シーラの頬を撫でた。その慰撫するような手つきは、「ごめん」と告げているようで、自然と顔が綻んでしまう。
シーラは気持ちよさそうに頬をすり寄せると、「でもね」とジルヴィウスの手を取った。
「ジルが、わたしだけが特別って。わたしだから大切にするんだって、言葉や態度でたくさん示してくれたから、もう気にならなくなったの。ジルにとって大切なのは……価値のあるものはわたしだけなんだって、そう思ったから。……自惚れも入ってるかもしれないけど」
「いや……」
揺れる金色の瞳が、そんなことはない、と伝えてくれる。彼がこれほど情の籠った目で見つめるのは、きっと自分だけ。そう思わせる眼差しだ。
(ジルからの愛情は、疑いようがないもの)
「だから、嫉妬しない……というよりする必要ないの。ジルが、そう思わせてくれたんだよ」
シーラは笑みを深めると彼の首に抱き着き、触れるだけの口付けを贈った。
「大好きよ、ジル」
「……ああ」
同じ言葉は返って来ないが、代わりにとびきり優しい口付けが贈られた。割れ物にでも触れるかのような口付けを数度繰り返し、ジルヴィウスは舌を侵入させる。歯列をなぞり、上顎を舌先でくすぐり、シーラの舌を絡めとる。
混ぜて一つにするかのように丹念に舌をすり合わせ、ジルヴィウスはそっと顔を離した。二人を繋ぐ透明な糸が名残惜しそうに伸び、ぷつり、と途切れた瞬間、再び唇が重ねられる。
「っふ、んん……」
丹念に舌を絡めとりながら、ジルヴィウスはシーラを押し倒す。こくりと喉を鳴らし、二人分の唾液を飲み込めば、ジルヴィウスは舌を解放し、唇を食んだ。
「シーラ……」
情欲を滾らせながら呼ばれる名は、「愛してる」の代弁のようで。シーラは笑みを深めると、彼を受け入れるように腰に足を絡ませた。
一滴残らず胎に残そうと切っ先を押し付けてくるジルヴィウスに応えるように、濡襞は彼のものにまとわりついた。
何度注がれても足りないというように、シーラのそこはジルヴィウスに絡み付いて離さない。
「んん……ジル……」
荒い呼吸を繰り返しながら、シーラは後ろを振り向く。
ジルヴィウスは鬱陶しそうに前髪をかき上げると、上体を倒しシーラの唇に吸い付いた。
「疲れたか?」
「まだ、だいじょぶ」
汗に濡れた彼の頬を指先で撫でれば、ジルヴィウスは目を細め、彼のものを引き抜いた。追い縋るように蜜口がひくつくのを感じながら、どうして、と睨めば、ジルヴィウスはシーラの体を仰向けにして、頬に噛み付いてくる。
「少し休憩しろ。のぼせたんだから、水分取れ」
言うのと同時に彼は片手を上げ、もう一方の手でシーラを引き起こした。水差しとグラスが宙に浮かび、ジルヴィウスは上げた手で水差しを掴むと、グラスに水を注いでいく。
水がなみなみと注がれたグラスと、それを差し出すジルヴィウスを交互に見たシーラは、ふいっと顔を横に背ける。
「おい――」
「ジルが飲ませて」
「なに……?」
シーラはジルヴィウスに視線を戻すと、グラスを彼のほうへ押し返す。首を伸ばし、雛鳥のように、あ、と口を開ければ、ジルヴィウスは片眉を上げた。
深く息を吐き出し、水を口に含むと、シーラの後頭部に手を添え、口内に水を移していく。
ぬるい水を飲み込みながら、熱い彼の舌に吸い付けば、軽く尻を叩かれた。
「休憩だと言ってるだろ」
「キスだけだもん」
両腕を彼の首に回し、頬やこめかみに口付けを繰り返せば、ジルヴィウスは諦めたように息を吐き、グラスに口を付けた。
「もうお酒は飲まないの?」
上下する彼の喉仏に触れながら問えば、ジルヴィウスは軽くシーラの頬をつねった。
「俺を酔わせてどうする気だ?」
「んー……可愛いジルが見たい? お酒飲んだジル、目がうるうるしてて可愛かったから」
言葉を失ったように押し黙ったジルヴィウスに、シーラは、ふふ、と笑みを漏らす。ジルヴィウスから離れ、彼の手からグラスを取ると、ぐびぐびと中身を飲んでく。
冷たい水が体を巡っていく感覚に、気持ちが少しだけ落ち着く。水を飲み干し、はーっ、と大きく息を吐くと、シーラは明るい笑みを浮かべた。
「ごめんね。ジルがたくさん甘やかしてくれるから、つい甘えすぎちゃった。ジルは明日出掛けるようだし、今日はもうこのまま寝ちゃおうか?」
(あ、でも体は綺麗にしないと)
様々な体液で汚れた自分の体を見下ろしたシーラは、何か拭くものがないかと室内に目を向ける。しかし、すぐに視界が揺れ動き、気が付けばジルヴィウスに押し倒されていた。
持っていたグラスは宙に浮いていた水差しとともにどこかに消え、シーラはただ呆けたようにジルヴィウスを見上げる。
「ジル……?」
どうしたのだろう、と首を傾げれば、彼は優しくシーラの頬を撫でた。
「別にいくらでも甘えていい。好きなだけ……」
言いかけて、彼は口を閉じる。何か迷うように口元に力を入れたかと思うと、ジルヴィウスはシーラの首元に顔を埋めた。
「……本当に気にしてないのか?」
何を、と問う必要はなかった。今日、彼が何でもかんでも自分の言うことを聞いてくれるのは、南部公爵――彼と関係を持った女性と会ってしまったことが理由だとわかっているからだ。
(罪悪感で落ち込んでるジルが可愛いからって調子乗っちゃったかも。そもそも落ち込んでる相手にわがまま放題って……)
常識的に考えていかがなものだろうか、と途端に冷静になる。もしかしたら、怒っているからわがまま放題しているのだ、と彼が勘違いしているのかもしれない。
シーラは誤解を解くべく、慌てたように首を横に振った。
「本当に気にしてないよ! いっぱいわがまま言っちゃったのは、ジルが過去のこと気にして落ち込んで、何でも言うこと聞いてくれるのが可愛くて、それでちょっと魔が差したっていうか……! 落ち込んでるのがわかってるのに、よくなかったよね!? ざ、罪悪感に付け込んでやりたい放題してごめんね……?」
宥めるように彼の頭を撫で、汗で少ししっとりとした髪を梳けば、ジルヴィウスはのっそりと上体を起こした。見えたジルヴィウスの表情は、ひどく不愉快そうだ。
(や、やっぱり罪悪感に付け込んだことを怒って――)
「少しも嫉妬しないのか?」
「え……?」
思いがけない言葉に目を瞬かせれば、ジルヴィウスは不機嫌そうに鼻を鳴らした。「もういい」と呟き、彼は背を向けた状態で隣に寝てしまう。
ジルヴィウスの広い背中を見つめながら、シーラはぽかんと口を開ける。
(え……え? つまり……わがまま放題やりたい放題に怒ったんじゃなくて、わたしが南部公爵様のこと……過去の女の人たちのことを気にしてないことが気に障ったってこと……?)
その事実に気付いた瞬間、愛おしさに胸が甘く締め付けられた。
なんて可愛い人なのだろう。
そういえば、以前嫉妬されて嬉しそうだったな、ということを思い出しながら、シーラは体を起こし、ジルヴィウスの肩に手を置く。
「ジル。ジル、ごめんね」
ちゅ、ちゅ、と頬への口付けを繰り返せば、ジルヴィウスは横目でシーラを見た。何がだ、と問いかけるような視線に、シーラは彼の目尻へと口付ける。
「ジルは嫉妬が嬉しいのに嫉妬しなくてごめんね」
ぐっと眉根を寄せ、顔を顰めるジルヴィウスに、シーラは「あのね」と言葉を続ける。
「昔は……嫉妬したよ。ジルと会えなかったときと、結婚してすぐのとき。わたし以外にもジルとこうして過ごした人がいたんだって……嫌な気持ちになった」
ジルヴィウスは、はっとしたようにシーラを見ると、体を起こし、シーラの頬を撫でた。その慰撫するような手つきは、「ごめん」と告げているようで、自然と顔が綻んでしまう。
シーラは気持ちよさそうに頬をすり寄せると、「でもね」とジルヴィウスの手を取った。
「ジルが、わたしだけが特別って。わたしだから大切にするんだって、言葉や態度でたくさん示してくれたから、もう気にならなくなったの。ジルにとって大切なのは……価値のあるものはわたしだけなんだって、そう思ったから。……自惚れも入ってるかもしれないけど」
「いや……」
揺れる金色の瞳が、そんなことはない、と伝えてくれる。彼がこれほど情の籠った目で見つめるのは、きっと自分だけ。そう思わせる眼差しだ。
(ジルからの愛情は、疑いようがないもの)
「だから、嫉妬しない……というよりする必要ないの。ジルが、そう思わせてくれたんだよ」
シーラは笑みを深めると彼の首に抱き着き、触れるだけの口付けを贈った。
「大好きよ、ジル」
「……ああ」
同じ言葉は返って来ないが、代わりにとびきり優しい口付けが贈られた。割れ物にでも触れるかのような口付けを数度繰り返し、ジルヴィウスは舌を侵入させる。歯列をなぞり、上顎を舌先でくすぐり、シーラの舌を絡めとる。
混ぜて一つにするかのように丹念に舌をすり合わせ、ジルヴィウスはそっと顔を離した。二人を繋ぐ透明な糸が名残惜しそうに伸び、ぷつり、と途切れた瞬間、再び唇が重ねられる。
「っふ、んん……」
丹念に舌を絡めとりながら、ジルヴィウスはシーラを押し倒す。こくりと喉を鳴らし、二人分の唾液を飲み込めば、ジルヴィウスは舌を解放し、唇を食んだ。
「シーラ……」
情欲を滾らせながら呼ばれる名は、「愛してる」の代弁のようで。シーラは笑みを深めると、彼を受け入れるように腰に足を絡ませた。
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