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第一章
二十七
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「……お前に疑われたくなかった。俺がお前を求めたのも、傍に置くのも、お前が魔力消化体質者だからだと……。最初からすべて知っていたと俺が説明したら……自分の体質のためにお前を利用したんだと、そう思われそうで……言えなかった。一瞬でも、お前に疑いの眼差しを向けられたくなかったんだ」
視線はシーラの唇に向けたまま、ジルヴィウスは訥々と語った。
素直に心の弱い部分を晒してくれたジルヴィウスに、シーラは「うん」と小さく返す。
「ごめんね。確かに疑っちゃった。ジルがわたしを大切にしてくれるのは、わたしが魔力消化体質者で、手放したくないからかなって」
もう一度「ごめんね」と告げると、ジルヴィウスは「いや」と漏らした。
「俺がお前の立場でもそう考える。お前のように話し合いの場を設けることなく、信用はできないとすぐに切り捨てるだろう」
「好きな相手でもそうする?」
「感情など重要じゃない。感情に振り回されて判断を誤るような愚行はしない」
「……じゃあ、相手がわたしだったら?」
唇を撫でていた手がぴたりと止まる。
伏せられていた目がシーラの双眸を捉えた。
「……騙されてやりたいと……思うだろう。お前の紡ぐ言葉が、想いが、たとえ嘘だとしても」
凪いだ金の瞳は、ただ愚直にシーラだけを映している。
それが痛々しいほど無垢に思えて、シーラはまた泣きそうになった。
(……わたし、ジルにちゃんと愛されてるのね)
彼が言った「憎い」「恨めしい」という言葉を素直に信じていたわけではない。
彼にとって自分が特別であることも、決して嫌われているわけではないことも、きちんと理解している。
けれど、彼が自分に抱いている感情は愛ではなく、所有欲に近いものなのだろうと思っていた。支配欲や強すぎる独占欲が愛に成り代わるなど、考えもしなかったのだ。
愛というものはもっと優しく、柔らかで、温かなものだと思っていた。
(ジルの愛は刺々しくて暴力的で……それでもやっぱりあったかい)
シーラは、ふっと目尻を下げると、慰撫するように彼の頬を撫でた。
「わたしも同じ。ジルが嘘をついて、それが嘘だってわかっても、言われたことを信じるよ」
「お前は嘘が嫌いだろう」
気持ちよさそうに頬をすり寄せるジルヴィウスに、彼は撫でられるのが好きなのだろうか、と思いながら、「うーん」と首を傾げる。
「まぁ、ジルとの間にはなるべく嘘がないといいな、とは思うけど……でも、全部いつだって本当のこと言わなくちゃいけないってなると、しんどくない? わたしに言いたくないこと、ジルが言わなくていいって判断すること、きっとあるでしょ? そういうときはそのまま『言えない』『言いたくない』って言ってほしいけど、やっぱり、どうしても嘘になっちゃう場面ってあると思う」
「……そうだな」
「だからね、多少の嘘は仕方ないと思うの。何もかも全部が嘘! とかだったら嫌だけど……でも、たとえそうだとしても、わたしはジルが直接伝えてくれた言葉をそのまま信じるよ。それが嘘でも、理由があるんだって思う。わたし、ジルが思ってるよりもずっと、ちゃんとジルのこと好きなんだよ」
撫でていないほうの頬にちゅっと口付ければ、ジルヴィウスはわずかに睫毛を震わせた。そのまま目を伏せ、シーラを抱き締めながら「そうか」と呟く。
その姿が、お気に入りのおもちゃを取られないようにしている子どものようで、つい顔が緩みそうになる。しかし、すぐに顔を引き締めると、シーラは咳払いをした。
「わたしに直接話してくれなかった理由はわかったから次ね。さっき、最初からすべて知っていた、って言ってたけど、それって、わたしが魔力消化体質者だってわかってて領地に来たってこと?」
「いや……ノルティーン辺境伯領に行ったのは、ほぼ無理やりにお前の兄に連れて行かれた結果だ。妹がいるとは聞いていたが、魔力消化体質者だとは知らなかった」
“お前の兄”などと、ずいぶん他人行儀な呼び方をするな、と思いつつ、シーラは「そうなの?」と返す。
「ジルってお友だちからのそういうお誘い受けたりするんだね? すごい今更だけど意外かも」
「お前、俺の言葉をそのまま信じるんじゃなかったのか? “ほぼ無理やり”と言ったんだ」
「でも、嫌だったら絶対に行かないし、捕まらないよう逃げるのも隠れるのも簡単でしょ?」
ジルヴィウスは口をへの字にして、ぐっと押し黙る。
(ジルってなんだかんだ素直なのね)
否定せず、嘘をつくわけでもないジルヴィウスの姿に、ついに我慢できず、シーラは吹き出した。
「……俺を笑うとはいい度胸だな、シーラ?」
「ふふっ、ごめんなさ――きゃっ」
一瞬、体が浮いたかと思うと、次の瞬間にはソファに仰向けで寝転がっていた。ジルヴィウスはそんなシーラに被さるように上体を預けると、胸元に顔を埋める。腰にはしっかりと両腕が回され、彼の重さと相まって少々苦しかったが、その窮屈さがすでに心地よかった。
「……服越しでも魔力って抜けるの?」
ジルヴィウスの頭を撫でながら問えば、彼はぴくりと体を揺らした。顔を上げ、シーラの胸元に顎を乗せながら、ジルヴィウスはシーラを見た。
「ある程度は。だが、一番効果的なのは直接肌を触れ合わせることだ」
「魔力が抜けすぎたりしない? そのせいで逆に体調不良になったり……」
「魔力がなくても生きてる奴がいるんだ。魔力がない分には問題ない。魔法が使えなくなるだけだからな」
「それって逆に困るんじゃ……」
「一日中お前を抱いても俺の魔力が完全に底をつくことはない。王家や公爵家には魔力量が多く生成速度が速い者が産まれやすいが、俺はその中でもここ数百年で一番の規格外だ」
視線を逸らし溜息をつくその姿は、自分の特出さに辟易しているように見えた。
シーラにとってジルヴィウスはずっと大人の男性だったが、彼にだっていろいろ思い悩む子ども時代はあっただろう。そもそも魔力過多症は心身の苦痛が伴うと言われている。
「魔力過多症って……生まれつきだよね? 子どものころからずっと辛かった?」
今はいない幼いころの彼を慰めるように、彼の髪を梳く。
ジルヴィウスは顔を横に向けると、「さあな」と答えた。
(素直じゃないんだから)
先ほどはまったく逆のことを思いながら、これだけでも効果はあるだろう、と彼の頬に触れる。
「辛かったり、苦しかったりしたら……ううん、そうなる前に、我慢しないでわたしのところに来てね?」
言外にいつでも抱いていいと言っているようなものなので少々気恥ずかしいが、ジルヴィウスにとっては大事なことだとその気持ちを呑み込む。
シーラにとってはジルヴィウスを想って言った言葉だったが、ゆっくりと上体を起こしたジルヴィウスは、不愉快そうに顔を顰めていた。
視線はシーラの唇に向けたまま、ジルヴィウスは訥々と語った。
素直に心の弱い部分を晒してくれたジルヴィウスに、シーラは「うん」と小さく返す。
「ごめんね。確かに疑っちゃった。ジルがわたしを大切にしてくれるのは、わたしが魔力消化体質者で、手放したくないからかなって」
もう一度「ごめんね」と告げると、ジルヴィウスは「いや」と漏らした。
「俺がお前の立場でもそう考える。お前のように話し合いの場を設けることなく、信用はできないとすぐに切り捨てるだろう」
「好きな相手でもそうする?」
「感情など重要じゃない。感情に振り回されて判断を誤るような愚行はしない」
「……じゃあ、相手がわたしだったら?」
唇を撫でていた手がぴたりと止まる。
伏せられていた目がシーラの双眸を捉えた。
「……騙されてやりたいと……思うだろう。お前の紡ぐ言葉が、想いが、たとえ嘘だとしても」
凪いだ金の瞳は、ただ愚直にシーラだけを映している。
それが痛々しいほど無垢に思えて、シーラはまた泣きそうになった。
(……わたし、ジルにちゃんと愛されてるのね)
彼が言った「憎い」「恨めしい」という言葉を素直に信じていたわけではない。
彼にとって自分が特別であることも、決して嫌われているわけではないことも、きちんと理解している。
けれど、彼が自分に抱いている感情は愛ではなく、所有欲に近いものなのだろうと思っていた。支配欲や強すぎる独占欲が愛に成り代わるなど、考えもしなかったのだ。
愛というものはもっと優しく、柔らかで、温かなものだと思っていた。
(ジルの愛は刺々しくて暴力的で……それでもやっぱりあったかい)
シーラは、ふっと目尻を下げると、慰撫するように彼の頬を撫でた。
「わたしも同じ。ジルが嘘をついて、それが嘘だってわかっても、言われたことを信じるよ」
「お前は嘘が嫌いだろう」
気持ちよさそうに頬をすり寄せるジルヴィウスに、彼は撫でられるのが好きなのだろうか、と思いながら、「うーん」と首を傾げる。
「まぁ、ジルとの間にはなるべく嘘がないといいな、とは思うけど……でも、全部いつだって本当のこと言わなくちゃいけないってなると、しんどくない? わたしに言いたくないこと、ジルが言わなくていいって判断すること、きっとあるでしょ? そういうときはそのまま『言えない』『言いたくない』って言ってほしいけど、やっぱり、どうしても嘘になっちゃう場面ってあると思う」
「……そうだな」
「だからね、多少の嘘は仕方ないと思うの。何もかも全部が嘘! とかだったら嫌だけど……でも、たとえそうだとしても、わたしはジルが直接伝えてくれた言葉をそのまま信じるよ。それが嘘でも、理由があるんだって思う。わたし、ジルが思ってるよりもずっと、ちゃんとジルのこと好きなんだよ」
撫でていないほうの頬にちゅっと口付ければ、ジルヴィウスはわずかに睫毛を震わせた。そのまま目を伏せ、シーラを抱き締めながら「そうか」と呟く。
その姿が、お気に入りのおもちゃを取られないようにしている子どものようで、つい顔が緩みそうになる。しかし、すぐに顔を引き締めると、シーラは咳払いをした。
「わたしに直接話してくれなかった理由はわかったから次ね。さっき、最初からすべて知っていた、って言ってたけど、それって、わたしが魔力消化体質者だってわかってて領地に来たってこと?」
「いや……ノルティーン辺境伯領に行ったのは、ほぼ無理やりにお前の兄に連れて行かれた結果だ。妹がいるとは聞いていたが、魔力消化体質者だとは知らなかった」
“お前の兄”などと、ずいぶん他人行儀な呼び方をするな、と思いつつ、シーラは「そうなの?」と返す。
「ジルってお友だちからのそういうお誘い受けたりするんだね? すごい今更だけど意外かも」
「お前、俺の言葉をそのまま信じるんじゃなかったのか? “ほぼ無理やり”と言ったんだ」
「でも、嫌だったら絶対に行かないし、捕まらないよう逃げるのも隠れるのも簡単でしょ?」
ジルヴィウスは口をへの字にして、ぐっと押し黙る。
(ジルってなんだかんだ素直なのね)
否定せず、嘘をつくわけでもないジルヴィウスの姿に、ついに我慢できず、シーラは吹き出した。
「……俺を笑うとはいい度胸だな、シーラ?」
「ふふっ、ごめんなさ――きゃっ」
一瞬、体が浮いたかと思うと、次の瞬間にはソファに仰向けで寝転がっていた。ジルヴィウスはそんなシーラに被さるように上体を預けると、胸元に顔を埋める。腰にはしっかりと両腕が回され、彼の重さと相まって少々苦しかったが、その窮屈さがすでに心地よかった。
「……服越しでも魔力って抜けるの?」
ジルヴィウスの頭を撫でながら問えば、彼はぴくりと体を揺らした。顔を上げ、シーラの胸元に顎を乗せながら、ジルヴィウスはシーラを見た。
「ある程度は。だが、一番効果的なのは直接肌を触れ合わせることだ」
「魔力が抜けすぎたりしない? そのせいで逆に体調不良になったり……」
「魔力がなくても生きてる奴がいるんだ。魔力がない分には問題ない。魔法が使えなくなるだけだからな」
「それって逆に困るんじゃ……」
「一日中お前を抱いても俺の魔力が完全に底をつくことはない。王家や公爵家には魔力量が多く生成速度が速い者が産まれやすいが、俺はその中でもここ数百年で一番の規格外だ」
視線を逸らし溜息をつくその姿は、自分の特出さに辟易しているように見えた。
シーラにとってジルヴィウスはずっと大人の男性だったが、彼にだっていろいろ思い悩む子ども時代はあっただろう。そもそも魔力過多症は心身の苦痛が伴うと言われている。
「魔力過多症って……生まれつきだよね? 子どものころからずっと辛かった?」
今はいない幼いころの彼を慰めるように、彼の髪を梳く。
ジルヴィウスは顔を横に向けると、「さあな」と答えた。
(素直じゃないんだから)
先ほどはまったく逆のことを思いながら、これだけでも効果はあるだろう、と彼の頬に触れる。
「辛かったり、苦しかったりしたら……ううん、そうなる前に、我慢しないでわたしのところに来てね?」
言外にいつでも抱いていいと言っているようなものなので少々気恥ずかしいが、ジルヴィウスにとっては大事なことだとその気持ちを呑み込む。
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