野獣公爵の執愛

ゆき真白

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第二章

五※

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「……お前は、余程俺を酷い男にしたいらしいな」

 ジルヴィウスの言葉の意味がわからず、シーラは小首を傾げる。
 ジルヴィウスはシーラの頬に軽く口付けると、いまだ欲を吐き出していない彼のものを引き抜いた。
 大事なものを奪われたような空虚な感覚に、シーラな濡れていた瞳をさらに潤ませる。

「ゃ、どうして……」
「すぐに挿れてやるから、今は大人しく身を委ねてろ」
「ん……ふ、」

 敏感になりすぎたシーラの肌を撫でながら、ジルヴィウスは優しく唇を重ね、啄むように何度も口付けた。

「っふ……ジ、ぅ……ジル……」

 もっとジルヴィウスを感じたくて、あ、と口を開けて乞う。
 ジルヴィウスはそれに応じるようにゆっくり舌を挿し入れると、丁寧に絡めた。舌の裏側を舐め、側面を舌先でなぞり、唾液を交換するように舌同士を擦り合わせる。
 慰撫するようなその口付けに、シーラはほうっと息を吐き出した。
 強烈な快感に支配されていた脳と体が徐々に落ち着きを取り戻していき、揺蕩うような心地よさが広がっていく。

(ジルとのキス、きもちい)

 じわじわと身の内を溶かしていくような口付けに、シーラは耽溺する。もっとジルヴィウスの唾液が欲しくて彼の舌に吸い付けば、ジルヴィウスはおもむろに顔を離した。
 緩慢なその動きは、二人を透明な糸で繋ぐ。名残惜しそうにたゆみながら糸が切れると、ぽたりとシーラの上に水滴が落ちた。

「少しは落ち着いたか?」

 落ちた唾液を拭いながら、ジルヴィウスが問う。
 感じ過ぎたシーラを気遣ってくれているのだとすぐにわかったが、シーラの視線は彼の濡れた唇に釘付けで、思考もそれに絡めとられていた。
 艶やかに濡れた血色のいい唇は熟れた果実のようで、シーラは目を蕩けさせながら、手を伸ばす。

「ジル、もっと……」

 頬を撫で、指先で輪郭をなぞりながら、もっとキスがしたい、と訴える。しかし、ジルヴィウスは片眉を上げてそれを無視すると、シーラの手を剥ぎ取り首筋に吸い付いた。

「ふっ、ぅ」

 薄い皮膚を吸われる、くすぐったくてほんのり痛い独特な感覚に、シーラは息を震わせる。
 シーラの体には、すでに数えきれないほどの赤い痕が残されている。
 付けすぎは怖いから加減してほしいと伝えて以来、彼なりに抑えてはくれているようだったが、それでもジルヴィウスは抱くたびにシーラの肌に痕を残した。色が薄くなればその上から吸い付き、彼の痕跡が完全になくなることはなかった。
 これから暖かくなって薄着になったり、夜会に出ることになったときに、隠すことができるだろうか。
 そんなことをぼんやりと思いつつ、シーラはジルヴィウスの髪を軽く引っ張った。

「キスしたい……」
「自分の指でもしゃぶってろ」

 言いながら、ジルヴィウスはシーラの胸に舌を這わせ、ぷくりと膨れた頂を口に含んだ。
 温かな舌が乳嘴を転がし、柔らかく押し込む。反対側は指で摘ままれ、捏ねるように潰される。

「ぁ、ジルっ……っは、んッ……」

 まるで前戯のように、ジルヴィウスはゆっくりとシーラを高めていく。それなのに、すべての神経が胸に集中したのかと思うほど、シーラは簡単に快楽を拾い上げ、背をしならせた。
 キスがしたいのに、胸への刺激が気持ち良すぎて、シーラは押し付けるように胸を揺らす。
 ジルヴィウスはそれに応えるように、徐々に刺激を強めていった。爪の先で弾くように叩きながら、もう一方には強く吸い付く。それを数秒続けたかと思うと、突然、片方をつねり、もう片方を奥歯で潰した。

「――っ」

 シーラは奥歯を噛み締めながら、背をのけ反らせる。
 体が痙攣し、双丘がふるふると震えた。
 果てを迎えたあとの独特な倦怠感に、ふっと体の力を抜くと、ジルヴィウスが顔を上げ、自らの口元を拭った。

「うまく躾けられすぎだ、お前は」
「……ジルが、したくせに」

 先ほどキスしてもらえなかったことを少々根に持ちながら、拗ねたように顔を背ける。するとすかさず顎を掴まれ、ジルヴィウスのほうを向かされた。

「お前のしゃぶり癖は躾けた覚えがないが?」

 呆れたように言いつつ、ジルヴィウスは真っ赤な舌をシーラに向け差し出す。
 シーラは、はっと瞳を輝かせると、素早くジルヴィウスの首に両腕を回し、彼の舌に吸い付いた。
 ジルヴィウスはされるがままになりながら、片腕をシーラの腰に回すと、上下を入れ替える。
 ジルヴィウスの上に重なるように寝転びながら、シーラは両手で彼の頬を掴み、肉厚の舌を舐めしゃぶる。

(ん……ジルの当たってる)

 硬さを失っていない彼のものが太腿に当たっていることに気付き、シーラは少し足を動かす。少々ぬめっとした陽根を太腿で挟むと、擦り付けるように太腿を揺らした。
 ジルヴィウスは、ぴくりと眉を揺らすと、シーラの顎を掴んで顔を引き離し、シーラの真っ白な尻を叩いた。

「足癖が悪すぎるぞ」
「気持ちよくない?」

 ジルヴィウスの体に手を這わせながら問えば、彼は眉根を寄せ押し黙った。
 シーラは、ふふ、と笑みを漏らすと、足を揺らしながらジルヴィウスの唇を食む。味などしないはずなのに甘く感じて、シーラは時折歯を立てながら、ぺろぺろと舐める。
 ジルヴィウスは特に抵抗することなく、諦めたように息を吐き出した。

「本当に……今日はどうしたんだ」

 シーラの髪を梳きながら背中を撫でるジルヴィウスに、シーラは、うーんと首を傾けると、指先で彼の胸元をくすぐった。

「嫉妬、かなぁ」
「……嫉妬?」

 今日の自分の行動を思い返しながら、シーラはジルヴィウスの太い首に唇を寄せる。

「朝焦らされたから……っていうのもあるけど、ジルの肌を他の女の人が見たっていうのが……理由はあったんだろうけど、どうしても呑み込めなくて。……過去はしょうがないけど、今はわたしのジルなのに」

 わずかに頬を膨らませながらそう呟けば、彼はぴたりと動きを止めた。
 彼は彼なりの考えを持って行ったことなのに、この言い方は少々子どもっぽかっただろうか、とシーラはおずおずと顔を上げる。
 そうして視界に入った彼の姿に、シーラは大きく目を見開いた。
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