ルシアナのマイペースな結婚生活

ゆき真白

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第七章

狩猟大会・二日目の夜(一)

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 昨夜と同様、ベッドサイドのランプのみが二人を照らす中、ルシアナはシュミーズ姿でベッドに仰向けになる。そんなルシアナの頬を、ベッドの縁に座ったシャツ姿のレオンハルトが指の背で撫でた。

「今日は横を向かないのか?」
「……はい。向きませんわ」

 昨日は突然のことに戸惑い、思わずレオンハルトから逃げるような行動を取ってしまったが、元より自分のすべてを差し出すつもりで嫁いでいるのだ。レオンハルトに曝け出せないものも、明け渡せないものもない。

(それに、閨事は裸体を晒すものだと教わったもの。シュミーズで照れていては仕方がないわ)

 内心昨日の行動を反省しつつ、ルシアナは小首を傾げる。

「もしかして、横向きのほうがいいですか?」
「いや、どちらでもいい。貴女が楽な姿勢でいてくれ」

 優しい声色でそう漏らすレオンハルトの口は、緩い弧を描いている。

(昨日から、よく笑ったお顔を見せてくださるわ)

 暖かな橙の灯りを受けているからか、雰囲気もとても穏やかだ。昼間見かけた凛とした姿とは別の姿を見せてくれるのが嬉しくて、甘く胸が締め付けられる。

「……レオンハルト様」

 両腕を伸ばせば、レオンハルトはそれに応じるように身を屈めてくれる。片手は首筋に添えながら、もう一方の手の指で、レオンハルトの唇に触れた。
 それだけで、不思議と心が満たされていく。
 レオンハルトは、唇に触れているルシアナの手を掴むと、その指先を食み、軽く歯を立てる。体の芯が徐々に熱を持ち、時折絡む舌の感触に、は、と息を漏らしながら、ルシアナはレオンハルトの首筋を撫でた。
 温かな皮膚の感触に、これまで感じたことのない欲がじわじわと湧いてくる。

「……閨事は、何か作業のようなものだと思っていました。ただ子を授かるためだけにすることで、そこに何か感情や、別の感覚などはないのだ、と」

 だからこそ、レオンハルトの言った「愛しているから触れたい」「愛したいから抱く」という言葉をうまく呑み込めず、処理することができなかった。

「けれど、あれから考えて……レオンハルト様以外には触れられたくないと思いました。レオンハルト様以外に触れたくない……こうして触れるなら、レオンハルト様がいい」

 独り言のように呟きながら、シャツの襟元から覗く鎖骨に指を滑らせれば、手を掴むレオンハルトの力が強まる。それでも痛みを感じないのは、彼が気を付けてくれているからだと、強張った彼の手から伝わってくる。
 指から口を離したレオンハルトは、掴んでいた手を放すとそのまま指を絡めて握り、シーツを巻き込んでベッドに縫い付ける。ぎし、という軋む音とともにベッドに乗り上げると、首元にあるルシアナの手首を掴み、それを自らの首の後ろに回して、ルシアナの上に覆い被さった。
 ルシアナは促されるままレオンハルトの首裏に触れると撫で上げる。指通りのいい髪の感触と、頬を掠めたさらりとした毛先のくすぐったさに、つい笑みが漏れた。
 頬に口付けたレオンハルトは、澄んだシアンの瞳で真っ直ぐルシアナを見つめる。

「貴女を愛してる」
「わたくしも、愛しています」

 ふわりと微笑めば、レオンハルトもわずかに目尻を下げ、唇が重なった。もう言われなくても、そうすることが自然なことのように、口を開け舌を受け入れる。

(これが、愛し合うということなのだわ)

 舌全体を絡めとるように舐められ、くちゅり、と音が鳴る。

「ふ……」

 ぞわりとした感覚に、口の端から声が漏れる。時折舌先を吸われ、甘い痺れが昨夜知覚した下腹部へと流れていく。
 レオンハルトとの深い口付けのときに感じる心地よさが、気持ちよさであることをやっと理解した。

「ン、む」

 繋いでないほうの手で、レオンハルトが腰から脇腹を撫でた。その手はそのまま徐々に上へと移動し、柔らかな膨らみに少しだけ触れる。
 ちゅ、と音を立て口を離したレオンハルトは、頭を下げ首筋に舌を這わせた。薄い皮膚をなぞるぬるりとした感覚に、握る手に力がこもる。
 喉の奥が震え、声にならない吐息が漏れる。舐めたあとを辿るようにキスを落としながら、レオンハルトはルシアナの白い喉に軽く歯を立てた。

「っ……レオンハルトさま……」

 自分で思うより遥かに心許なさそうな声が漏れた。
 レオンハルトは、握っていた手を放すと体を起こす。それに合わせるように、後頭部に回していたルシアナの手も、するりとベッドに落ちた。
 なすがままのルシアナを見下ろすその瞳は、どこかしっとりと濡れている。
 レオンハルトは自由になった手を自らの唾液で濡れたルシアナの細い首に添えると、先ほどルシアナがしたように、指先で首筋と鎖骨を撫でた。

「ずっと……こうして貴女に触れたかった。浅ましい俺を、どうか許してくれ」

 胸の下に触れていた手が、それをぐっと押し上げる。襟ぐりが大きく開いたシュミーズからは、押された分だけ盛り上がった膨らみが見える。

「ルシアナ。直に触れる許可を」

 許しを請い、許可を得ようとする言葉とは裏腹に、その瞳は熱く揺れ、許されることが当然だと言っているようだった。

(……嬉しい)

 羞恥がまったくないわけではない。しかし、レオンハルトが求めてくれることが、ただただ嬉しかった。
 ルシアナは嫣然と一笑すると、鎖骨にあるレオンハルトの手に自らのそれを重ね、そのまま下の膨らみに移動させた。

「レオンハルト様のお好きなように。わたくしのすべてはあなた様のものですわ」

 レオンハルトはわずかに眉を寄せると、小さく息を吞んだ。一度深呼吸をしてから、肩口にある短い袖を左右ともゆっくり腕のほうに下げていく。露わになった肩口に口付けながら、胸元の布に指をひっかけた。

「……俺のすべても、貴女のものだ」

 そう呟きながら胸の間にキスをすると、レオンハルトはそのままシュミーズを引き下げた。
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