115 / 274
第七章
狩猟大会・二日目の夜(一)
しおりを挟む
昨夜と同様、ベッドサイドのランプのみが二人を照らす中、ルシアナはシュミーズ姿でベッドに仰向けになる。そんなルシアナの頬を、ベッドの縁に座ったシャツ姿のレオンハルトが指の背で撫でた。
「今日は横を向かないのか?」
「……はい。向きませんわ」
昨日は突然のことに戸惑い、思わずレオンハルトから逃げるような行動を取ってしまったが、元より自分のすべてを差し出すつもりで嫁いでいるのだ。レオンハルトに曝け出せないものも、明け渡せないものもない。
(それに、閨事は裸体を晒すものだと教わったもの。シュミーズで照れていては仕方がないわ)
内心昨日の行動を反省しつつ、ルシアナは小首を傾げる。
「もしかして、横向きのほうがいいですか?」
「いや、どちらでもいい。貴女が楽な姿勢でいてくれ」
優しい声色でそう漏らすレオンハルトの口は、緩い弧を描いている。
(昨日から、よく笑ったお顔を見せてくださるわ)
暖かな橙の灯りを受けているからか、雰囲気もとても穏やかだ。昼間見かけた凛とした姿とは別の姿を見せてくれるのが嬉しくて、甘く胸が締め付けられる。
「……レオンハルト様」
両腕を伸ばせば、レオンハルトはそれに応じるように身を屈めてくれる。片手は首筋に添えながら、もう一方の手の指で、レオンハルトの唇に触れた。
それだけで、不思議と心が満たされていく。
レオンハルトは、唇に触れているルシアナの手を掴むと、その指先を食み、軽く歯を立てる。体の芯が徐々に熱を持ち、時折絡む舌の感触に、は、と息を漏らしながら、ルシアナはレオンハルトの首筋を撫でた。
温かな皮膚の感触に、これまで感じたことのない欲がじわじわと湧いてくる。
「……閨事は、何か作業のようなものだと思っていました。ただ子を授かるためだけにすることで、そこに何か感情や、別の感覚などはないのだ、と」
だからこそ、レオンハルトの言った「愛しているから触れたい」「愛したいから抱く」という言葉をうまく呑み込めず、処理することができなかった。
「けれど、あれから考えて……レオンハルト様以外には触れられたくないと思いました。レオンハルト様以外に触れたくない……こうして触れるなら、レオンハルト様がいい」
独り言のように呟きながら、シャツの襟元から覗く鎖骨に指を滑らせれば、手を掴むレオンハルトの力が強まる。それでも痛みを感じないのは、彼が気を付けてくれているからだと、強張った彼の手から伝わってくる。
指から口を離したレオンハルトは、掴んでいた手を放すとそのまま指を絡めて握り、シーツを巻き込んでベッドに縫い付ける。ぎし、という軋む音とともにベッドに乗り上げると、首元にあるルシアナの手首を掴み、それを自らの首の後ろに回して、ルシアナの上に覆い被さった。
ルシアナは促されるままレオンハルトの首裏に触れると撫で上げる。指通りのいい髪の感触と、頬を掠めたさらりとした毛先のくすぐったさに、つい笑みが漏れた。
頬に口付けたレオンハルトは、澄んだシアンの瞳で真っ直ぐルシアナを見つめる。
「貴女を愛してる」
「わたくしも、愛しています」
ふわりと微笑めば、レオンハルトもわずかに目尻を下げ、唇が重なった。もう言われなくても、そうすることが自然なことのように、口を開け舌を受け入れる。
(これが、愛し合うということなのだわ)
舌全体を絡めとるように舐められ、くちゅり、と音が鳴る。
「ふ……」
ぞわりとした感覚に、口の端から声が漏れる。時折舌先を吸われ、甘い痺れが昨夜知覚した下腹部へと流れていく。
レオンハルトとの深い口付けのときに感じる心地よさが、気持ちよさであることをやっと理解した。
「ン、む」
繋いでないほうの手で、レオンハルトが腰から脇腹を撫でた。その手はそのまま徐々に上へと移動し、柔らかな膨らみに少しだけ触れる。
ちゅ、と音を立て口を離したレオンハルトは、頭を下げ首筋に舌を這わせた。薄い皮膚をなぞるぬるりとした感覚に、握る手に力がこもる。
喉の奥が震え、声にならない吐息が漏れる。舐めたあとを辿るようにキスを落としながら、レオンハルトはルシアナの白い喉に軽く歯を立てた。
「っ……レオンハルトさま……」
自分で思うより遥かに心許なさそうな声が漏れた。
レオンハルトは、握っていた手を放すと体を起こす。それに合わせるように、後頭部に回していたルシアナの手も、するりとベッドに落ちた。
なすがままのルシアナを見下ろすその瞳は、どこかしっとりと濡れている。
レオンハルトは自由になった手を自らの唾液で濡れたルシアナの細い首に添えると、先ほどルシアナがしたように、指先で首筋と鎖骨を撫でた。
「ずっと……こうして貴女に触れたかった。浅ましい俺を、どうか許してくれ」
胸の下に触れていた手が、それをぐっと押し上げる。襟ぐりが大きく開いたシュミーズからは、押された分だけ盛り上がった膨らみが見える。
「ルシアナ。直に触れる許可を」
許しを請い、許可を得ようとする言葉とは裏腹に、その瞳は熱く揺れ、許されることが当然だと言っているようだった。
(……嬉しい)
羞恥がまったくないわけではない。しかし、レオンハルトが求めてくれることが、ただただ嬉しかった。
ルシアナは嫣然と一笑すると、鎖骨にあるレオンハルトの手に自らのそれを重ね、そのまま下の膨らみに移動させた。
「レオンハルト様のお好きなように。わたくしのすべてはあなた様のものですわ」
レオンハルトはわずかに眉を寄せると、小さく息を吞んだ。一度深呼吸をしてから、肩口にある短い袖を左右ともゆっくり腕のほうに下げていく。露わになった肩口に口付けながら、胸元の布に指をひっかけた。
「……俺のすべても、貴女のものだ」
そう呟きながら胸の間にキスをすると、レオンハルトはそのままシュミーズを引き下げた。
「今日は横を向かないのか?」
「……はい。向きませんわ」
昨日は突然のことに戸惑い、思わずレオンハルトから逃げるような行動を取ってしまったが、元より自分のすべてを差し出すつもりで嫁いでいるのだ。レオンハルトに曝け出せないものも、明け渡せないものもない。
(それに、閨事は裸体を晒すものだと教わったもの。シュミーズで照れていては仕方がないわ)
内心昨日の行動を反省しつつ、ルシアナは小首を傾げる。
「もしかして、横向きのほうがいいですか?」
「いや、どちらでもいい。貴女が楽な姿勢でいてくれ」
優しい声色でそう漏らすレオンハルトの口は、緩い弧を描いている。
(昨日から、よく笑ったお顔を見せてくださるわ)
暖かな橙の灯りを受けているからか、雰囲気もとても穏やかだ。昼間見かけた凛とした姿とは別の姿を見せてくれるのが嬉しくて、甘く胸が締め付けられる。
「……レオンハルト様」
両腕を伸ばせば、レオンハルトはそれに応じるように身を屈めてくれる。片手は首筋に添えながら、もう一方の手の指で、レオンハルトの唇に触れた。
それだけで、不思議と心が満たされていく。
レオンハルトは、唇に触れているルシアナの手を掴むと、その指先を食み、軽く歯を立てる。体の芯が徐々に熱を持ち、時折絡む舌の感触に、は、と息を漏らしながら、ルシアナはレオンハルトの首筋を撫でた。
温かな皮膚の感触に、これまで感じたことのない欲がじわじわと湧いてくる。
「……閨事は、何か作業のようなものだと思っていました。ただ子を授かるためだけにすることで、そこに何か感情や、別の感覚などはないのだ、と」
だからこそ、レオンハルトの言った「愛しているから触れたい」「愛したいから抱く」という言葉をうまく呑み込めず、処理することができなかった。
「けれど、あれから考えて……レオンハルト様以外には触れられたくないと思いました。レオンハルト様以外に触れたくない……こうして触れるなら、レオンハルト様がいい」
独り言のように呟きながら、シャツの襟元から覗く鎖骨に指を滑らせれば、手を掴むレオンハルトの力が強まる。それでも痛みを感じないのは、彼が気を付けてくれているからだと、強張った彼の手から伝わってくる。
指から口を離したレオンハルトは、掴んでいた手を放すとそのまま指を絡めて握り、シーツを巻き込んでベッドに縫い付ける。ぎし、という軋む音とともにベッドに乗り上げると、首元にあるルシアナの手首を掴み、それを自らの首の後ろに回して、ルシアナの上に覆い被さった。
ルシアナは促されるままレオンハルトの首裏に触れると撫で上げる。指通りのいい髪の感触と、頬を掠めたさらりとした毛先のくすぐったさに、つい笑みが漏れた。
頬に口付けたレオンハルトは、澄んだシアンの瞳で真っ直ぐルシアナを見つめる。
「貴女を愛してる」
「わたくしも、愛しています」
ふわりと微笑めば、レオンハルトもわずかに目尻を下げ、唇が重なった。もう言われなくても、そうすることが自然なことのように、口を開け舌を受け入れる。
(これが、愛し合うということなのだわ)
舌全体を絡めとるように舐められ、くちゅり、と音が鳴る。
「ふ……」
ぞわりとした感覚に、口の端から声が漏れる。時折舌先を吸われ、甘い痺れが昨夜知覚した下腹部へと流れていく。
レオンハルトとの深い口付けのときに感じる心地よさが、気持ちよさであることをやっと理解した。
「ン、む」
繋いでないほうの手で、レオンハルトが腰から脇腹を撫でた。その手はそのまま徐々に上へと移動し、柔らかな膨らみに少しだけ触れる。
ちゅ、と音を立て口を離したレオンハルトは、頭を下げ首筋に舌を這わせた。薄い皮膚をなぞるぬるりとした感覚に、握る手に力がこもる。
喉の奥が震え、声にならない吐息が漏れる。舐めたあとを辿るようにキスを落としながら、レオンハルトはルシアナの白い喉に軽く歯を立てた。
「っ……レオンハルトさま……」
自分で思うより遥かに心許なさそうな声が漏れた。
レオンハルトは、握っていた手を放すと体を起こす。それに合わせるように、後頭部に回していたルシアナの手も、するりとベッドに落ちた。
なすがままのルシアナを見下ろすその瞳は、どこかしっとりと濡れている。
レオンハルトは自由になった手を自らの唾液で濡れたルシアナの細い首に添えると、先ほどルシアナがしたように、指先で首筋と鎖骨を撫でた。
「ずっと……こうして貴女に触れたかった。浅ましい俺を、どうか許してくれ」
胸の下に触れていた手が、それをぐっと押し上げる。襟ぐりが大きく開いたシュミーズからは、押された分だけ盛り上がった膨らみが見える。
「ルシアナ。直に触れる許可を」
許しを請い、許可を得ようとする言葉とは裏腹に、その瞳は熱く揺れ、許されることが当然だと言っているようだった。
(……嬉しい)
羞恥がまったくないわけではない。しかし、レオンハルトが求めてくれることが、ただただ嬉しかった。
ルシアナは嫣然と一笑すると、鎖骨にあるレオンハルトの手に自らのそれを重ね、そのまま下の膨らみに移動させた。
「レオンハルト様のお好きなように。わたくしのすべてはあなた様のものですわ」
レオンハルトはわずかに眉を寄せると、小さく息を吞んだ。一度深呼吸をしてから、肩口にある短い袖を左右ともゆっくり腕のほうに下げていく。露わになった肩口に口付けながら、胸元の布に指をひっかけた。
「……俺のすべても、貴女のものだ」
そう呟きながら胸の間にキスをすると、レオンハルトはそのままシュミーズを引き下げた。
10
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
義兄様と庭の秘密
結城鹿島
恋愛
もうすぐ親の決めた相手と結婚しなければならない千代子。けれど、心を占めるのは美しい義理の兄のこと。ある日、「いっそ、どこかへ逃げてしまいたい……」と零した千代子に対し、返ってきた言葉は「……そうしたいなら、そうする?」だった。
毎週金曜日、午後9時にホテルで
狭山雪菜
恋愛
柳瀬史恵は、輸入雑貨の通販会社の経理事務をしている28歳の女だ。
同期入社の内藤秋人は営業部のエースで、よく経費について喧嘩をしていた。そんな二人は犬猿の仲として社内でも有名だったけど、毎週金曜日になると二人の間には…?
不定期更新です。
こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる