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第一章【異世界出会い掲示板始めました】
第12話―はじめてのトラブル
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「おい! どういう事だ!」
マッシュは出会い掲示板【ファインド・ラブ】の窓口カウンターに座っていた、黒髪の青年の襟首を掴んだ。
客に紛れていた女エルフがすっと立ち上がったが、目つきの悪い青年はそれを片手で制した。
むかつく態度だった。
「どういう事というのは?」
「さっきの話は聞こえていたんだろう! 酒場中に響き渡ってたんだ! あれは……えりかさんは……」
「規約を読んでないのか? ⑥会員間のトラブルには一切関知いたしませんってな」
「ぐっ?!」
マッシュはパンチでも喰らったように、顔をしかめた。
「な、ならえりかさんの事を教えてくれ! 頼む! どうしても確認したいことが……!」
青年は胸ぐらを掴まれているというのに、鋭い目つきのまま冷静に返した。
「個人情報を教えるわけがねぇだろ。うちの商売の生命線だぞ? 逆に女がお前の個人情報を知りたいと言ってきても教えねえ。従業員にも徹底してる。全員わざわざ冒険者ギルドにいって、見届け人の前で、契約書にサインさせてるほどだ。ギルドに確認してもらってもかまわねぇよ」
マッシュの横に、いつの間にか先ほどの女エルフが移動していた。手も口も出してこないが、いつでも腰のレイピアを抜けるようにピリピリとした殺気を放っていた。
おそらく相当の使い手だ……いや、どこかで見たことがあるとマッシュが記憶をたどる。最近解散した74区画で有名だったパーティーの一人だった。たしかB級冒険者だったはずだ。マッシュに敵う相手ではない。
「個人情報は教えられない。たとえ殺されても。だ。」
青年の暗い瞳がその決意を伝えていた。マッシュの身体から力が抜けて、その場にストンと崩れ落ちる。
「俺は……俺は……」
そもそも、俺は彼女にあってどうしたいというのだ?
マッシュは自問自答する。
一晩良い思いをした……それで十分じゃ無いか……。たとえ彼女が商売女だったとしても……。
そこで強く首を振った。
それは無い。それだけは無い! 俺が信じないんでどうするんだ!
そこで、マッシュはようやく気づいた。
ああ……俺、あの娘に惚れちまったんだ……。
自らの気持ちに気づいて、呆然としてしまう。
そこに黒髪の青年が見下ろす位置に移動する。馬鹿にしに来たのだろうか?
「……そうそう、今はまだ、掲示板の書き込みにしか返信メールを出せないが、一度やり取りした相手とは、相手が受け取り拒否をしない限り、メールを出せるぜ?」
「……なん、だって?」
マッシュがゆっくりと顔を上げる。青年がニヤリと笑った。
「20ラブポイントだ。どうする?」
マッシュは返事もせずにブースに駆け込んだ。
■
マッシュはわら半紙に思いの丈をしたためた。
74区画は狭いようで広い。この区画だけで1万人以上の人間が住んでいるだろう。
だが、それでもマッシュはこの区画で彼女に会った記憶が無い。
あれほどの美人だ。しかも自分好みの。一瞬でも見かけたことがあれば、記憶の隅に引っかかってなければおかしい。
つまり彼が毎日路地裏の隅々まで歩き回るこの74区画の住人では無いのだ。
74区画以外となれば、事実上、王都を全てを探さなくてはいけなくなる。そんな事は不可能だった。
正式な数は公表されていないが、間違いなく100万人を越えるこの王都から、たった一人の女性を見つけ出すことなど……。
祈るような気持ちで、スタッフにメールを預けた後、マッシュは酒場を後にした。とても飲む気分ではなかった。
いや、むしろ浴びるように飲みたい気分でもあった。だが明日からまた仕事だ。
マッシュはうなだれて自室に帰っていった。
マッシュは出会い掲示板【ファインド・ラブ】の窓口カウンターに座っていた、黒髪の青年の襟首を掴んだ。
客に紛れていた女エルフがすっと立ち上がったが、目つきの悪い青年はそれを片手で制した。
むかつく態度だった。
「どういう事というのは?」
「さっきの話は聞こえていたんだろう! 酒場中に響き渡ってたんだ! あれは……えりかさんは……」
「規約を読んでないのか? ⑥会員間のトラブルには一切関知いたしませんってな」
「ぐっ?!」
マッシュはパンチでも喰らったように、顔をしかめた。
「な、ならえりかさんの事を教えてくれ! 頼む! どうしても確認したいことが……!」
青年は胸ぐらを掴まれているというのに、鋭い目つきのまま冷静に返した。
「個人情報を教えるわけがねぇだろ。うちの商売の生命線だぞ? 逆に女がお前の個人情報を知りたいと言ってきても教えねえ。従業員にも徹底してる。全員わざわざ冒険者ギルドにいって、見届け人の前で、契約書にサインさせてるほどだ。ギルドに確認してもらってもかまわねぇよ」
マッシュの横に、いつの間にか先ほどの女エルフが移動していた。手も口も出してこないが、いつでも腰のレイピアを抜けるようにピリピリとした殺気を放っていた。
おそらく相当の使い手だ……いや、どこかで見たことがあるとマッシュが記憶をたどる。最近解散した74区画で有名だったパーティーの一人だった。たしかB級冒険者だったはずだ。マッシュに敵う相手ではない。
「個人情報は教えられない。たとえ殺されても。だ。」
青年の暗い瞳がその決意を伝えていた。マッシュの身体から力が抜けて、その場にストンと崩れ落ちる。
「俺は……俺は……」
そもそも、俺は彼女にあってどうしたいというのだ?
マッシュは自問自答する。
一晩良い思いをした……それで十分じゃ無いか……。たとえ彼女が商売女だったとしても……。
そこで強く首を振った。
それは無い。それだけは無い! 俺が信じないんでどうするんだ!
そこで、マッシュはようやく気づいた。
ああ……俺、あの娘に惚れちまったんだ……。
自らの気持ちに気づいて、呆然としてしまう。
そこに黒髪の青年が見下ろす位置に移動する。馬鹿にしに来たのだろうか?
「……そうそう、今はまだ、掲示板の書き込みにしか返信メールを出せないが、一度やり取りした相手とは、相手が受け取り拒否をしない限り、メールを出せるぜ?」
「……なん、だって?」
マッシュがゆっくりと顔を上げる。青年がニヤリと笑った。
「20ラブポイントだ。どうする?」
マッシュは返事もせずにブースに駆け込んだ。
■
マッシュはわら半紙に思いの丈をしたためた。
74区画は狭いようで広い。この区画だけで1万人以上の人間が住んでいるだろう。
だが、それでもマッシュはこの区画で彼女に会った記憶が無い。
あれほどの美人だ。しかも自分好みの。一瞬でも見かけたことがあれば、記憶の隅に引っかかってなければおかしい。
つまり彼が毎日路地裏の隅々まで歩き回るこの74区画の住人では無いのだ。
74区画以外となれば、事実上、王都を全てを探さなくてはいけなくなる。そんな事は不可能だった。
正式な数は公表されていないが、間違いなく100万人を越えるこの王都から、たった一人の女性を見つけ出すことなど……。
祈るような気持ちで、スタッフにメールを預けた後、マッシュは酒場を後にした。とても飲む気分ではなかった。
いや、むしろ浴びるように飲みたい気分でもあった。だが明日からまた仕事だ。
マッシュはうなだれて自室に帰っていった。
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