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第二章【入会されますか?】
第3話―「貴様! 騎士を愚弄するか?!」
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黒髪で黒目の青年は自らをサイゾー・ミズタニと名乗った。異国文化が大量流入するこのガルドラゴン王国の王都にしても、あまり聞き慣れない響きの名前だった。
「お前がこの怪しい掲示板を設置したのか?」
キシリッシュは王宮騎士らしく、大仰に尋ねた。
「ああそうだぜ。それで随分と美人な騎士さんだが、入会希望かい?」
「びっびじっ?!」
キシリッシュは覿面に狼狽えた。生まれてこの方、正面から美人だなどと言われた事が、もちろん生まれて初めての経験だった。
彼女は自分の事を美人だと認識していなかった。
「きっ! 貴様! 騎士を愚弄するか?!」
「うをおおおお! だから剣はやめろ! 褒めたのになんで愚弄だよ?! ……ああ、お世辞だと思ったのか? そんな綺麗な銀髪を見たのは初めてだし、顔かたちだって、俺好みの美人……ああ、庶民が好みとかいったら不敬罪になるのか……?」
黒髪の青年サイゾーは急に困惑し始めた。
「い、いや! そんな法は無い! 安心しろ! しかし……私が……美人?」
後半ぶつぶつと呟くキシリッシュ。自分の事には自信が無いらしい。
「そうか、それなら良かった。それで入会じゃないのか?」
何人か入会のために客が並んでいたのだが、キシリッシュの登場で、蜘蛛の子を散らすように酒場の隅へと散ってしまった。
とんだ営業妨害だとサイゾーは内で苦笑した。
しばらく呆然としていたキシリッシュだったが、首を振って気持ちを入れ直す。これが噂になっていた詐欺商売に間違いは無いはずだ。ならば摘発しなくてはならない。
「おい、サイゾーと言ったな。貴様を詐欺罪で逮捕する!!」
「うををを! だから剣はやめ……なんだって?」
「聞こえなかったのか? 貴様を——!」
「いやいや! そんな大声なら外にいたって聞こえるだろ! 俺のなにが詐欺罪だっていうんだ? 顔か?! 本物だぞ!」
「顔で逮捕などするものか! それに貴様の顔はなかなか……いや違う! 貴様が経営しているというこの掲示板の事だ!」
「だからいちいち剣を向けるな! この掲示板は至極真っ当な商売だ! 掲示板が違法だと言うのなら、根拠法を示してくれ、王国法の第何条何項だ?! でなければ断固抵抗する!」
サイゾーの意外な抵抗に、キシリッシュはほうと感心した。普通、騎士が逮捕と言って逆らう奴はそうはいない。いや、罪を誤魔化す人間は多々いるが、こちらにそれを指摘しろと言ってきた奴は始めてだ。
キシリッシュは、少々楽しくなって、一つ咳払いをした。
「ならば説明してやろう! まず——!」
そして気づいた。この掲示板がどんな商売なのか何も知らないことを。
「……まず?」
「ま、まずはだな……」
キシリッシュの額から汗が流れる。悪い癖が出てしまった。彼女は思い込んだら周りが見えなくなる性格なのだ。
「まずは……うん。この掲示板の説明を聞いてやろう!」
「……さいで」
キシリッシュは上手く誤魔化せたと思ったが、黒髪の青年は頭の後ろを掻きながらカウンターに腰を下ろした。
「とりあえずどうぞ。入会する人にする説明をするから、問題があるようなら指摘してくれ」
「う、うむ。良かろう。聞いてやる」
キシリッシュは場違いなほど慇懃に席に着いた。実際に場違いだった。
「うーん。じゃあキシリッシュさんが入会すると仮定して進めるぜ?」
「うむ」
ようやく落ち着いた彼女は、相手がすぐにボロを出すだろうと、安易に青年に乗ってしまった。
それが青年のやり口だとも知らずに……。
「お前がこの怪しい掲示板を設置したのか?」
キシリッシュは王宮騎士らしく、大仰に尋ねた。
「ああそうだぜ。それで随分と美人な騎士さんだが、入会希望かい?」
「びっびじっ?!」
キシリッシュは覿面に狼狽えた。生まれてこの方、正面から美人だなどと言われた事が、もちろん生まれて初めての経験だった。
彼女は自分の事を美人だと認識していなかった。
「きっ! 貴様! 騎士を愚弄するか?!」
「うをおおおお! だから剣はやめろ! 褒めたのになんで愚弄だよ?! ……ああ、お世辞だと思ったのか? そんな綺麗な銀髪を見たのは初めてだし、顔かたちだって、俺好みの美人……ああ、庶民が好みとかいったら不敬罪になるのか……?」
黒髪の青年サイゾーは急に困惑し始めた。
「い、いや! そんな法は無い! 安心しろ! しかし……私が……美人?」
後半ぶつぶつと呟くキシリッシュ。自分の事には自信が無いらしい。
「そうか、それなら良かった。それで入会じゃないのか?」
何人か入会のために客が並んでいたのだが、キシリッシュの登場で、蜘蛛の子を散らすように酒場の隅へと散ってしまった。
とんだ営業妨害だとサイゾーは内で苦笑した。
しばらく呆然としていたキシリッシュだったが、首を振って気持ちを入れ直す。これが噂になっていた詐欺商売に間違いは無いはずだ。ならば摘発しなくてはならない。
「おい、サイゾーと言ったな。貴様を詐欺罪で逮捕する!!」
「うををを! だから剣はやめ……なんだって?」
「聞こえなかったのか? 貴様を——!」
「いやいや! そんな大声なら外にいたって聞こえるだろ! 俺のなにが詐欺罪だっていうんだ? 顔か?! 本物だぞ!」
「顔で逮捕などするものか! それに貴様の顔はなかなか……いや違う! 貴様が経営しているというこの掲示板の事だ!」
「だからいちいち剣を向けるな! この掲示板は至極真っ当な商売だ! 掲示板が違法だと言うのなら、根拠法を示してくれ、王国法の第何条何項だ?! でなければ断固抵抗する!」
サイゾーの意外な抵抗に、キシリッシュはほうと感心した。普通、騎士が逮捕と言って逆らう奴はそうはいない。いや、罪を誤魔化す人間は多々いるが、こちらにそれを指摘しろと言ってきた奴は始めてだ。
キシリッシュは、少々楽しくなって、一つ咳払いをした。
「ならば説明してやろう! まず——!」
そして気づいた。この掲示板がどんな商売なのか何も知らないことを。
「……まず?」
「ま、まずはだな……」
キシリッシュの額から汗が流れる。悪い癖が出てしまった。彼女は思い込んだら周りが見えなくなる性格なのだ。
「まずは……うん。この掲示板の説明を聞いてやろう!」
「……さいで」
キシリッシュは上手く誤魔化せたと思ったが、黒髪の青年は頭の後ろを掻きながらカウンターに腰を下ろした。
「とりあえずどうぞ。入会する人にする説明をするから、問題があるようなら指摘してくれ」
「う、うむ。良かろう。聞いてやる」
キシリッシュは場違いなほど慇懃に席に着いた。実際に場違いだった。
「うーん。じゃあキシリッシュさんが入会すると仮定して進めるぜ?」
「うむ」
ようやく落ち着いた彼女は、相手がすぐにボロを出すだろうと、安易に青年に乗ってしまった。
それが青年のやり口だとも知らずに……。
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