異世界で「出会い掲示板」はじめました。

佐々木さざめき

文字の大きさ
50 / 102
第三章【イケメン掲示板放浪記】

第15話―目的不明

しおりを挟む

「あんた、一体どういう目的で掲示板を使っているんだい?」

「目的ですか?」

「そうさ、結婚相手を探しているのかめかけを探しているのか、それとも都合の良い女を探しているのかその辺ハッキリさせてもらいたいもんだね」

「あの、それと営業妨害というのに一体どんな関係があるのでしょうか?」

「ああ、自己紹介がまだだったね、私はヘルディナ・ピョン・クロンメリン。麗しき女神亭の女将さ」

「麗しき女神亭ですか? 確か掲示板が設置してある女性専用の酒場でしたよね?」

「そうさ、あんたが現れるまでは、女同士が気楽に集まって忌憚無く相談し合ったり愚痴をこぼし合ったりする楽しい酒場だったのさ。ところがあんたのせいで酒場の雰囲気は最悪なんだよ」

「すみません、やはりどうしてボクが関係あるのかがわかりません」

「だから最初に聞いたろう? あんたが掲示板を使う理由をさ」

 スパイクは無言で眉をしかめた。どうしてそこに繋がるのかが全くわからなかったのだ。

「今うちの店では、釘様……あんたに夢中なやつで溢れかえってるんだ。あんたに会えた奴らはまだいいさ、問題はいくら掲示板に書き込みをしても誘われない奴らさ。会えた人間と会えなかった人間で深い溝が出来てるんだよ」

 そこでようやくスパイクは漠然と状況を把握した。実際にはスパイクの理解と実際の状況に齟齬はあったのだが、状況的にあまり問題にならなかった。

 スパイクは自分の地位や財力だけに女性が魅力を感じていると理解したのだが、実際は彼の人格や容姿を含むすべてに女性たちが夢中になっていた。

「なんとなく理解はしましたが、ボクにどうにかできる問題では無い気がするのですが」

「そんなことはないよ、あんたがこの掲示板で目的を達成すればもう来なくなるんじゃないかと思って」

「なるほど、それは盲点でした」

「さて、改めて聞くよ、あんたが掲示板を使う理由をね」

 ヘルディナはうさ耳を震わせながらスパイクに詰め寄った。

 スパイクはしばらく腕を組んだまま無言であったが、ゆっくりと口を開いた。

「そうですね、どこから話したものか……実はボクは貴族なんです」

「ああ、そうらしいね。それがどうしたって言うんだい?」

「もしかしてご存知でしたか?」

「ああ、それもあまりあんたが自分のことを貴族だと知られたく無いようだったから、あんなタイトルで掲示板に書き込みをしたんだよ。食いついてくるかどうかは賭けだったけどね」

 ヘルディナと同じ作戦をとる人間がいなかったのは、釘様に夢中になりすぎて思いつけなかったのだろう。

 それを聞いてスパイクは、ヘルディナのことを頭の良い女性だと目を丸くした。

「それで、貴族様に一体どんな理由があって掲示板を利用するなんていうトンチキな結論に至ったんだい?」

「言いづらいことなのですが、実は最近親が大量のお見合いを持ってきまして、もちろんお相手はどの方も身元がしっかりした方なのですが、彼女たちのお目当ては私の地位であり財力なのです。それが悪いこととは思いませんが、彼女たちはそれだけが目的であり、ボクを見てくれる人は一人もいませんでした」

 スパイクはうつむきがちに話し出したのだが、ヘルディナは片手をひらひらと振って、スパイクの言葉をさえぎった。

「ああ、なるほどね。つまり自分という人間を見て欲しかったわけだ」

 スパイクは再び目を丸くしてヘルディナを見た。また話は序盤だというのにどういうわけか彼女はスパイクの本心を簡潔に言い当てた。

「た、多分そうだと思います」

「なるほどね……しかしそれだと困ったね、あんたを理解する女性が現れるまであんたは今まで通り掲示板を利用するってことになるわけだ」

「そうですね。仲の良くなった女性が何人かいますが、友達としては十分なのですが、もう一方進んだ関係となると少し難しいかもしれません。ですから掲示板の利用はもう少し続けたいと思うのです」

 てっきり難癖を付けられて無理やり止めさせられると思っていたのだが、意外にもヘルディナはスパイクの心情をくんでくれた。

「結局のところあんたが求めているお相手って言うのは、結婚相手って言うことになるんだよね」

「そうなるのでしょうか?」

「なんだい、はっきりしないね。そこら辺ハッキリしないなら掲示板を使って欲しくないんだけどね」

「す、すみません。結婚相手を探します」

「わかったよ、結婚相手が見つかるまでは掲示板を使っても良いけれど、見つかったらすぐにやめて欲しいもんだね」

「わ……わかりました。今まで自分でもどんな相手を求めていたのかよくわからなかったのです。今日から真剣に結婚相手を探してみます」

「そうして欲しいもんだね」

「でも……」

「なんだい?」

「い……いえ何でもありません」

 その時スパイクの視線が熱を帯びた物になっていることにヘルディナは気がついていなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...