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第三章【イケメン掲示板放浪記】
第16話―密会
しおりを挟む「ヘルディナさんメールが来ています」
「ああ、またかい……失敗したね、スパイク以外からもこんなにメールが来るとは思ってもいなかったよ」
「いえそれなんですが、そのスパイクさんからのメールも混じっているんです」
「なんだって?」
ヘルディナはメールの束を受け取りながらその場を去ろうとしていたのだが、ぴたりと立ち止まりミナーナを振り返った。
真面目に結婚活動をしているはずのスパイクがどうして私にメールを出してくるのか意味がわからなかった。
ヘルディナはとりあえず他のメールを無視してスパイクからのメールを取り出して開いた。
中身は活動に関して相談に乗って欲しいという内容のメールであった。
「いったいなんなんだろうね?」
ヘルディナはため息交じりに、ミナーナからわら半紙を受け取ると空けられる時間と日付を記入してスパイクに返事を出した。
■
返信を出した日から数日、ヘルディナはスパイクと初めて会った酒場で顔を見合わせていた。
スパイクの表情にはあまり困ったような感じは無く、どちらかというと機嫌が良いように見えた。
「あんた、本当に真剣にやっているのかい?」
「ええ、もちろんです。ボクはいつだって真剣ですよ」
「そうかねぇ、だったら私なんかと会ってないで、気に入った女の子ともっと親交を深めるべきなんじゃ無いのかい?」
「はいその通りだと思います」
ニコニコと答えるスパイクに、ヘルディナはいらただしげにスパイクに言葉を投げつけた。
「それで相談事があるって?」
「ええ実は最近気になる女性が出来たのですが、どうにもその方はわたしの思いにまるで気がついている様子がありません」
ヘルディナは片眉を持ち上げて驚きを表現した。スパイクに思い人が出来たのもそうだが、それに気がつかない女がいるというのも驚きであった。
その鈍い女はいったいどこの馬鹿なのだろうと、肩をすくめて呆れるしか無かった。
「それでどうしたら相手の方にアピールできるのか一緒に考えていただけないかと思いまして」
「それはかまわないけど、素直に好きっていったらどうなんだい?」
「そうですね……ただ現状であまりにも脈が無いように思えるもので、告白には躊躇してしまうのですよ」
「ああなるほどね」
確かに相手の気持ちが全く読めない状況で告白するというのは勇気以前に無謀という物だろう。そんな状況では誰かに相談したくなる気持ちもわからないでは無い。
ただ一つわからないのはその相談相手に私を選んだということだ。ヘルディナはうさ耳と首をかしげるしか無かった。
疑問は残るがこの男にはとっとと良いお相手を見つけて貰い、一刻でも速く掲示板をやめて貰いたいのだ。ヘルディナは嫌々ながら相談に乗ることにした。
それから一時間ほど話合ったのだがなかなかこれといった妙案は浮かばなかった。
ヘルディナは仕事に戻らねばならなくなったのでそこでお開きにしたのだが、半ば強引に再び相談に乗ること約束させられた。
そんな調子で、その日から週に二回は二人で会うようになっていた。
■
最近麗しき女神亭では、再び雰囲気が変化していた。あのギスギスしていた空気は薄れ、昔の雰囲気に戻りつつあった。
その事をヘルディナは不思議に思っていた。なんといってもスパイク本人が意中の人と上手くいっている様子が無いのだ。にもかかわらず本人が沈んでいる様子が無いのも気になるところだった。
酒場であまり客に深入りするのはどうかとも思ったが、ヘルディナは思いきって掲示板の常連の一人に話しかけてみた。
「なぁ、話したくなかったら言わなくて良いんだけど、最近釘様の話題が減ったと思わないかい?」
ヘルディナが話し掛けたのは、何度掲示板に書いても結局一度も釘様から返信メールをもらえなかった、地味子に絡んでいたヒステリック女だった。
女はつまらなそうに答えた。
「そりゃあねえ。ある日を境に釘様からのメールがパッタリと止まっちまったからね」
「なんだって?」
「もしかしたら意中のお相手が見つかったのかも知れないね。この酒場でそれらしい奴がいないから他の酒場の常連か、ポストの利用者かも知れないね」
ヘルディナは情報料がわりに、女の好きな酒をテーブルに置いて、その場を去ったが、どうにも納得がいかなかった。
何がどう納得いかないのかはヘルディナ本人にもよくわからなかった。
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