異世界で「出会い掲示板」はじめました。

佐々木さざめき

文字の大きさ
94 / 102
第五章【ガルドラゴン王国】

第16話―王都とヴァグランツァ

しおりを挟む

 天を突くような巨大な尖塔と、重厚にして荘厳な城壁。

 切り出した大量の石を隙間無く積み上げて出来た人口の岩山。人の手で作り出したとは思えない巨大な王城の一角にその部屋はあった。

 ガルドラゴン王国王城の執務室で仕事をしていたのは、この国の国王ヴァグランツァ・ガルドラゴン・ウォルポール52歳である。

 最近、処理しなければならない仕事が増えて、自室では無くわざわざ執務室で仕事をするようになった。職員達は目に見えて緊張しているが、構っている暇は無い。この国を左右する案件が山積みなのだ。

 帝国との戦争が終わってから経済規模は肥大化したが、それに伴って急激な人口増加がおき、それに付随する幾多の社会問題が続けて起きる。

 ヴァグランツァ国王は今日も頭を抱えながら、万年筆・・・を走らせていた。

 この国の執務室は国王専用のものと、官僚が作業する二つの執務室があるのだが、今国王がいるのは後者だ。本来国王がこちらで仕事をする事は無いのだが、ヴァグランツァは情報の取捨を官僚に一任するのを嫌って、最近はこちらで作業している。

 さすがの官僚達も目の前で国王が仕事をしているので、細かい情報も上げざるをえない。

 まだ慣れていない官僚が時々緊張で書類をひっくり返すのも、もはやこの部屋の風物詩と化していた。

 床にばらばらに散らばる書類を見てため息を吐く国王。官僚が平謝りするのを片手で許して拾わせる。

 そこに入り口を派手に鳴らして誰かが乱入してきた。そんな事をする人物はたった一人なので、国王は重いため息を吐いた。

「シャルロット……」

 今まで上の兄や姉を厳しく育ててしまった反省で、シャルロットはかなり自由に育てるようしていたのだが、奔放なだけではなくワガママに育ってしまい頭を抱える要因の一つになってしまった。こんな性格なので今のところ結婚相手が決まらない。

 もちろん申し込み自体は色々なルートから上がっては来るのだが、とても現状のシャルロットを出す訳にはいかない。相手の迷惑になる事がハッキリしているからだ。

「この部屋には来るなと何度も……」

 いつものように注意しようとするが、今日のシャルロットは表情がどこか違った。

「父上! これを見るのじゃ!」

 国王の言葉を無視してずかずかと一番立派な机の上に、青色の見慣れる物を叩きつけるように置いた。

「……なんだこれは?」

「バインダーなのじゃ! 便利なのじゃ!」

 ヴァグランツァは聞いた事の無い品物に顎髭を撫でた。このシャルロット自由奔放に生きている分、発想が自由でたまにだが国益につながる意見を述べる事がある。ごくたまにだが。

 最近では彼女が着ているゴスロリ系の新しい服装が庶民や貴族に流行り、新しい産業が生まれたと聞く。その経済効果は決して馬鹿に出来ない物だった。

 もっともシャルロットは自分にとって面白いものや楽しいものを集めているだけのようなのだが。だがその感性で探してくる物は一見の価値がある。

 ただし、きちんと順番を守って提出してくれればとは思う。

 ヴァグランツァ国王は苦笑した。

「シャルロット。説明をしなさい」

「うむなのじゃ。これは……ちょうどいいのじゃ、その書類を貸すのじゃ」

「え!?」

 シャルロットが走り寄ってきた突風で再びまき散らされた書類をかき集めていた官僚が声を上げる。

「キシリッシュ!」

「はっ」

 シャルロットの一歩後ろで頭を下げていた銀色装束の近衛騎士であるキシリッシュが顔を上げた。そして国王と視線が合い、覿面に緊張する。

 それを悟った国王が、視線で続けるように指示した。

「そ……それでは」

 キシリッシュは一礼した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...