異世界で「出会い掲示板」はじめました。

佐々木さざめき

文字の大きさ
95 / 102
第五章【ガルドラゴン王国】

第17話―王都と告げ口

しおりを挟む

 官僚から奪い取った書類をシャルロットから受け取ると、キシリッシュは書類が端まで文字が書かれていない事を確認する。

「20枚程度の書類を綺麗に重ねます。一番上の書類を二つ折りにして、ちょっと印を付けます」

 緊張はしているが始めて自分・・を前にしても堂々と説明している女騎士に感心しながら国王は続きを聞いた。

「この二穴パンチに差し込み、印と印を合わせたら……この様に押し込むと、書類に穴が空きます」

 見れば綺麗な穴が二つ空いている。腕の良い鍛冶が作っているのだろう。

「穴を開けた書類は、バインダーに挟みます。バネ仕掛けで開いてから差し込み、手で閉じます」

「……ほう」

 そこで始めて国王は声を出した。キシリッシュから恭しく差し出されたバインダーをめつすがめつ確認する。

「これは……良いな」

「そうなのじゃ! 便利なのじゃ!」

「シャルロット。これはどこで見つけてきた?」

「冒険者ギルドが生産中なのじゃ! 王家に優先させるよう話してきたのじゃ!」

「ふむ……」

 国王は万年筆・・・を手に取り、刻印されたマークを見る。それは冒険者ギルドのマークであった。バインダーとパンチにも同じマークが刻印されていた。

 おそらくシャルロットが話をせずとも、向こうからそのうち営業には来ただろうが、これを見つけてきたシャルロットの感性は評価するしか無い。

「そうか、シャルロットはサイモスと仲が良かったな」

 国王はガルドラゴン冒険者ギルドのギルドマスターであるサイモス・ランドバーグの濃い顔を思い出した。

「サイモス爺とは良く遊ぶのじゃ。じゃが今回は違うのじゃ。とにかく役に立ったのならお願いを聞いて欲しいのじゃ!」

 国王は無言で続きを促した。

「これを考えた黒髪の男が、妾を馬鹿にするのじゃ! お仕置きをして欲しいのじゃ!」

「……ふむ?」

 ヴァグランツァがキシリッシュに視線を移すと、彼女は無言で首を何度も左右に振った。

「……明日、その男に会いに行こう」

「さすが父上なのじゃ! がつーんと言って欲しいのじゃ! 覚えておるのじゃ! 馬鹿サイゾー!」

「サイゾー」

 国王はぼそりとその名を呟いた。

 ◆

 酒場兼宿屋「海が恋しいアホウドリ亭」は夕方の鐘が鳴り終わると一番の混雑を迎える。経済的に裕福になったガルドラゴン王国では、外食が増え、昔であれば皆が自宅へ一直線に帰宅していた頃とは比べものにならないほど夜営業の店が溢れていた。

 アホウドリ亭はそんな店の中でもこの時間帯の混雑は想像を超えていた。まず本業である宿屋として、この時間に滑り込んでくる商人達。特にアホウドリ亭は大型の馬車置き場を多数揃える宿屋であり、暗くなり始めるこの時間には大勢の商人達が宿泊に来る。

 その宿泊客が食事をするのはもちろんこの宿の一階だ。

 74地区でもずば抜けて広い酒場を持つアホウドリ亭は食事も豊富である。最近はデザートまで揃っていた。

 商人以外には単に食事だけ食べに来る客も増えた。今までの父親だけが働いていた時代と違い、母親や子供達も職に就き、所得が上がっているのだ。

 その分家事に使える時間は少なく、外食が多くなっていた。その様な胃袋を支えるのがこのような食事も出せる酒場であった。

 最近は食事メインのレストランも増え、王都は活気に溢れている。

 そしてアホウドリ亭の混雑はそれでは終わらない。

 日雇いで小銭を握った労働者達が、酒場の一角にたむろっているのだ。

 そこにあるのは冒険者ギルドの依頼を貼る掲示板に似た、巨大な掲示板であった。

 出会い掲示板ファインド・ラブ。

 今日も出会いを求めて幾多の男女が集まるっている。最近ではこの酒場で起こるトラブル見物の為に酒を飲みに来る野次馬も多い。

 つまり今日もアホウドリ亭は大変に賑わっていた。

 すでに酔っ払っている男も多数いる。赤ら顔で新たな客を見て、その客は何度も自分の目を擦った。

(飲み過ぎたらしい……)

 男は酒では無く水を注文した。

 新たな客はガルドラゴン王国の国王に似た顔をしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...