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第28話 姉の追求
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僕の眼下に迫った姉はほんの息を荒げ、肩で息をしていた。ギラギラと輝く姉の眼には勝利の色が浮かぶ。
「ね、だから、今なら誰も見てないの。あたしたちが何をしようと絶対に誰にも気付かれないの。ね、優斗…… 判るよね。あなただってあたしの言ってる意味判るよね……」
いつの間にか僕の息も荒くなっていた。
「だめだ。さっき言ったろ。その罪科を背負い続けるのは僕たちには無理だ」
僕の首に回された姉の両腕が僕の首を更に締め付ける。あの華奢な姉にどうしてこんな力が。
「だからさ、捨てちゃいなよそんなの。捨てちゃいな。ぽいって。そしたら楽になるって。だから考え過ぎなのよあなた」
そんなこと考えもしなかった。僕は姉の甘美な誘惑に身体を硬直させていた。身動きが取れない。いや僕の手は姉の肩と腰にゆっくりと伸ばされていく。悪魔だ。間違いない。姉は悪魔だ。
勝利の微笑みを浮かべた悪魔は更に僕の顔に顔を近づけていく。敗北した僕も真剣な表情になって顔を姉の顔に近づけていく。もう僕の頭の中には罪の意識も何もなかった。あれだけ偉そうなことを言っておいて僕はあっさり姉に堕とされてしまった。だが情けないとかだらしないとか後悔しているとか悔しいとか考える暇すらなかった。僕はただただ姉の蠱惑的な瞳と艶やかで少し薄い唇を吸い込まれるように凝視しているしかない。姉の全身から甘いむせ返る様ないい香りが漂い始めた。僕の身体が恐怖で細かく震える。
「大丈夫」
姉は慈愛を込めた表情で愛おし気にそう言うと、限界まで背伸びをした。そして僕たちの唇が触れ合う、あと五ミリ。
僕の首に回された姉の腕を振りほどき抱き締める。片手で抱え込んだ姉の頭は僕の鎖骨の下あたりに圧し付けられる。
「むぐぐぐぐ……」
「やっぱり僕は姉さんとそういう事はできないんだ。判ってくれ」
「うぐぐ、わ、判んな、いっ……」
「姉さんを汚さないためだ」
「ぐぐ…… 汚れ、ないもん……」
姉は僕の拘束から逃れて、それでも僕に抱きついたまま僕の顔を見上げる。
「なんで……」
姉の眼から珠の様な涙がポロポロと止めどなく零れ落ちていく。
「好き同士でなんでしちゃいけないの……? あたしこんなに、こんなにあなたを……っ、あなただってっ……」
「姉弟だから」
「そんなのにっ、そんなもんになんかなりたくなかったああっ」
姉はまるで幼児の様にわんわんと号泣する。その頭と肩を抱き寄せると、姉は僕の腰に腕を回して泣き続ける。僕まで泣いてしまいたい気分だった。
「これは姉さんを守るために必要な事なんだ」
「あたしもう妊娠なんてしないから関係ないじゃんかああああ」
姉は卵巣機能の低下のみならず、この若さで重篤な子宮筋腫になり子宮を摘出している。姉を蝕んでいる病気との因果関係は未だはっきりしない。
「そういう事じゃなくて。やっぱり近親相姦はいけないと思うんだよ。生命としてね」
「結局っ、結局その話ばっかり…… ああああああっ」
姉は号泣しながら僕の服に涙と鼻水を擦り付ける。嫌がらせか。僕は姉をリビングのソファまで連れて行き座らせる。ティッシュの箱を渡すと盛大な音を立てて鼻をかむ。ソファの上に胡坐をかいてまだポロポロと涙を流し続けティッシュで拭う。パンツが丸見えなので脚を揃えスリップの裾を整えてやる。僕は冷蔵庫からアイスコーヒーを注いで姉の前に置く。そして姉の肩に腕を回して涙が止まらない姉の様子をずっと眺めていた。次第に姉の泣き声も大人しくなり、僕に身体を預け静かに嗚咽するようになって最後は微かにすすり泣く程度にまで落ち着いた。
「ね、だから、今なら誰も見てないの。あたしたちが何をしようと絶対に誰にも気付かれないの。ね、優斗…… 判るよね。あなただってあたしの言ってる意味判るよね……」
いつの間にか僕の息も荒くなっていた。
「だめだ。さっき言ったろ。その罪科を背負い続けるのは僕たちには無理だ」
僕の首に回された姉の両腕が僕の首を更に締め付ける。あの華奢な姉にどうしてこんな力が。
「だからさ、捨てちゃいなよそんなの。捨てちゃいな。ぽいって。そしたら楽になるって。だから考え過ぎなのよあなた」
そんなこと考えもしなかった。僕は姉の甘美な誘惑に身体を硬直させていた。身動きが取れない。いや僕の手は姉の肩と腰にゆっくりと伸ばされていく。悪魔だ。間違いない。姉は悪魔だ。
勝利の微笑みを浮かべた悪魔は更に僕の顔に顔を近づけていく。敗北した僕も真剣な表情になって顔を姉の顔に近づけていく。もう僕の頭の中には罪の意識も何もなかった。あれだけ偉そうなことを言っておいて僕はあっさり姉に堕とされてしまった。だが情けないとかだらしないとか後悔しているとか悔しいとか考える暇すらなかった。僕はただただ姉の蠱惑的な瞳と艶やかで少し薄い唇を吸い込まれるように凝視しているしかない。姉の全身から甘いむせ返る様ないい香りが漂い始めた。僕の身体が恐怖で細かく震える。
「大丈夫」
姉は慈愛を込めた表情で愛おし気にそう言うと、限界まで背伸びをした。そして僕たちの唇が触れ合う、あと五ミリ。
僕の首に回された姉の腕を振りほどき抱き締める。片手で抱え込んだ姉の頭は僕の鎖骨の下あたりに圧し付けられる。
「むぐぐぐぐ……」
「やっぱり僕は姉さんとそういう事はできないんだ。判ってくれ」
「うぐぐ、わ、判んな、いっ……」
「姉さんを汚さないためだ」
「ぐぐ…… 汚れ、ないもん……」
姉は僕の拘束から逃れて、それでも僕に抱きついたまま僕の顔を見上げる。
「なんで……」
姉の眼から珠の様な涙がポロポロと止めどなく零れ落ちていく。
「好き同士でなんでしちゃいけないの……? あたしこんなに、こんなにあなたを……っ、あなただってっ……」
「姉弟だから」
「そんなのにっ、そんなもんになんかなりたくなかったああっ」
姉はまるで幼児の様にわんわんと号泣する。その頭と肩を抱き寄せると、姉は僕の腰に腕を回して泣き続ける。僕まで泣いてしまいたい気分だった。
「これは姉さんを守るために必要な事なんだ」
「あたしもう妊娠なんてしないから関係ないじゃんかああああ」
姉は卵巣機能の低下のみならず、この若さで重篤な子宮筋腫になり子宮を摘出している。姉を蝕んでいる病気との因果関係は未だはっきりしない。
「そういう事じゃなくて。やっぱり近親相姦はいけないと思うんだよ。生命としてね」
「結局っ、結局その話ばっかり…… ああああああっ」
姉は号泣しながら僕の服に涙と鼻水を擦り付ける。嫌がらせか。僕は姉をリビングのソファまで連れて行き座らせる。ティッシュの箱を渡すと盛大な音を立てて鼻をかむ。ソファの上に胡坐をかいてまだポロポロと涙を流し続けティッシュで拭う。パンツが丸見えなので脚を揃えスリップの裾を整えてやる。僕は冷蔵庫からアイスコーヒーを注いで姉の前に置く。そして姉の肩に腕を回して涙が止まらない姉の様子をずっと眺めていた。次第に姉の泣き声も大人しくなり、僕に身体を預け静かに嗚咽するようになって最後は微かにすすり泣く程度にまで落ち着いた。
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