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あとがき
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2021年5月に執筆を開始し、ようやく完成いたしました、「月と影――ジムノペディと夜想曲」。前作「茜川の柿の木――姉と僕の風景、祈りの日々」に引き続いて4作目の非百合小説となります。全部合わせて10作目の作品です。
拙作のきっかけはカミさんでした。当初から私は百合小説を書いていたのですが、それが彼女には非常に不満で、ならばと「茜川の柿の木」を書いてみたものの今度はこれが近親相姦的だとはなはだしく不興を買う始末。ではどんなものならいいのか問うてみたところ、彼女の好きなクラシック物ならどうだろうか、と。正直な話、私はクラシックには全く疎いので、必要に応じてアドバイスをもらえるなら、ということで挑戦してみました。とりあえず第一話を考えてみる際に「僕はショパンを捨てた」との書き出しを思いついたのでざっくり書いて見せたところカミさんは大変気に入ってくれました。ということで色々と思い悩みながらもなんとかここまでこぎつけた次第です。
今回は産みの苦しみというか、最も手直しが多くありました。その手直しの最たるものは妙子でした。当初妙子には4歳になる春歌という娘がいました。「5.すがちゃんのお買いもの」では転んで足をねん挫し奏輔にお姫様抱っこをされます。中盤にはなんと奏輔と肉体関係を結び、終盤ではストーカーと化した前夫、三沢に刺され入院します。そして最終的には妙子が奏輔と結ばれる展開でした。妙子の方が展開が激しかったにもかかわらず藍の個性が際立っていて、妙子の個性や性格の方はどうも今ひとつ影が薄いと言うか薄ぼんやりしたものでした。そのため妙子より藍をヒロインに据えた方がいいのではないかとのアドバイスもあって、ヒロイン変更という大転換をはかりました。これは多分成功したと思います。ヒロインの要素として保護者や仲間、庇護対象といったものがありますが、妙子は保護者、藍は仲間としての性格が明確に表せて差別化できたのもよかったように思います。
拙作では主にお二人の方に懇切丁寧にご助言を賜りました。実は私はクラシック素人です。カミさんはクラシック音楽関係を中心に多大なアドバイスを頂戴しました。またオタ友で親友のEさんにもストーリーやキャラクター設定などについて並々ならぬご助言をいただきました。
このお二人無くして拙作は完成し得なかった、そう思っております。この場を借りて篤く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
また、私はどうしてもプロットを考えるのが苦手で、常にその場の雰囲気とノリと勢いで書いてしまう質です。それでも今回は出来事のスケジュールをやりくりしたり、奏輔、藍、妙子、それぞれにとっての起承転結らしきものも考えてみました。ただ、これが奏功したかというと難しい。本当にプロットを考えるのが下手で困ります。
よく、「登場人物が勝手に動く」ようにして執筆が進むことがありますが、今回はそれが最もなかったように思います。だからと言って彼らに感情移入していないわけでもなく、特に藍への思いはひとしおです。例えば五稜郭タワーや冨久屋から帰る道のりでの奏輔とのやり取りなどは一気に書き上げました。幸せにしてあげられてよかった。あの奔放で自由闊達な生き方は私には到底できないものなのでとても憧れます。
拙作の登場人物は殆どが何かから逃げています。音楽から逃げた奏輔、音楽の決まり事や世事の疎ましい事から逃げた藍、前夫から逃げた妙子、理不尽な編集部から逃げた長さん。いずれも単に逃げたのではなく最終的には新しい道を見出したり立ち向かうなどしています。これは書いているうちに気付いた全くの偶然で他意はありません。唯一逃げていないのはジュラフスキーでしょうか。エピローグでも語られている通り、彼は公然とロシア政府を批判し一時軟禁状態にありました。
冬の函館は私の好きな景色です。まだ三回しか行ったことが無いのですが。それでも朝市の賑やかさ、その一方でどこか感じるあのわびし気でひなびて落ち着きがあって物静かな、そして異国情緒のある街並みは今でも強く記憶に残っています。
以下に登場人物の簡単な紹介を資料から抜粋しておきます。ご参考までにどうぞ。
◆入江奏輔:東京都町田市生まれ。身長176㎝。21歳。武蔵川音大(渋谷区代官山)在学中。
・趣味はクラシック鑑賞。特にピアノ曲。他ジャンルの音楽への興味は薄い。
・特技は暗譜、耳コピ、安上がりな料理、ピアノのレッスン、作曲、子供と仲良くなること。酒に強い(藍ほどではない)。
・性格:主体性がない。流されやすい。その一方で決断したら一直線に突き進む。藍の音楽に激しい嫉妬を感じていた。優しくて温和。誰かのために危険なほどわが身をかえりみない時がある。藍に言わせると「優柔不断で決断力がなくてふにゃふにゃしている」。右手を負傷しピアノが弾けなくなると藍の勧めで作曲を学び、のちに高名な作曲家として名を成す。教育者、指導者としても高い評価を得た。藍の最大にして唯一の理解者としてあり続けた。
◆高溝藍(→入江藍):神奈川県横浜市都筑区生まれ。身長160㎝。20歳。東桐音大退学→武蔵川音大入学。作中で唯一の左利き。
・趣味はクラシックに限らず音楽全般の鑑賞。ストレス解消のケーキ作り。飲酒。とにかくピアノに触れること。
・特技は暗譜、外国語会話、本番に強いくそ度胸。二十歳にして酒はザル。
・性格:自由奔放。人に従うのを嫌い自分に正直。頑固。すぐ手が出る。とにかくポジティブで明るい。声がでかい。行儀が悪い。
フランチシェク国際ピアノコンクール二位入選後、彼女の人生は一変する。その人目を引く容姿と一見奇矯ともとられかねない言動が世間の耳目を集め、クラシック番組とはほど遠いTVのバラエティ番組にも起用されることがあった。こういったことに激しいストレスを感じた藍は一年半の間失踪し各国を旅する。帰国後は奏輔の配慮でメディアへの露出は控えられた。
「ちょっと出かけてくる」と言って一人で南米まで行って半年返ってこないなど自由過ぎる行動に周囲は振り回され続けるが、それがあってこその彼女なのだと奏輔はよく理解している。
◆すがちゃん(三沢妙子→大須賀妙子→原田妙子、偽名菅島寿賀子):北海道帯広市生まれ。身長162㎝。26歳。地元の大沢短大卒。
・趣味はテニス、ボーリング。のちにピアノ。得意曲はジムノペディ。
・特技は料理全般。特にロールキャベツが美味しい。待つこと。人の気持ちを察すること。意外と力持ちで頑丈。
・性格:温厚温和で穏やか。少しおっとりしている。他者と対立する事が苦手。しかし意外と頑固。ネガティブ。藍に言わせれば「おしとやかで、しおらしくて、世話好きで、誰にでも優しくて、純粋で、ちょっと天然。おとなしくて気が弱そうに見える一方で芯が強いところもある。化粧っ気がなくて素朴で、一見地味なんだけど実は美人。あと胸がおっきい。男がばかみたいにこぞって好きになるタイプ」。お酒には弱くすぐ真っ赤になる。
原田弁護士と結婚後は幸せな家庭を築き一男一女をもうける。ピアノは趣味程度としてたしなんだ。夫とクラシックコンサートに行くこともあったが、もう居眠りをすることはなかった。奏輔とたった一度偶然の再会を果たしたのちは、生涯奏輔とかかわりを持つことはなかったが奏輔が登場する公演の放送やTV番組は欠かさずチェックしていたらしい。
◆長さん(春井智行):埼玉県上尾市生まれ。身長179㎝。法応大学経商学部卒。45歳。
・趣味はクラシック鑑賞。特にオーケストラ。
・特技はインタビュー、料理全般、味覚と嗅覚の鋭さ、手先の器用さ。
・性格:冨久屋では不愛想で寡黙な店主を演じているが、クラシック音楽を前にすると一変して情熱的で饒舌になる。理想家。困っている人を見ると放っておけない。情熱家。寡黙。
奏輔を気遣う妙子を優しく見守り続けた。時には気を利かせて姿を消すことも。
小さな酒場から始まった冨久屋を北海道でも指折りの居酒屋チェーンに仕立て上げる経営力は並々ならぬものがある。板前としての腕前も一流で、それをひけらかすこともなく謙虚さを忘れずに自分の技術を高め続けた。息抜きも兼ねて地元ショッピングモールで不定期開催される料理教室は、愛想のない性格にもかかわらずいつも大盛況となる。冨久屋には繁盛後も奏輔夫妻、妙子とも機会があればよく通った。
◆ジュラフスキー(Журавский/Юрафускі/Zhuravsky〈露/辺/英〉):ベラルーシ系ロシア人。ニジニ・ノヴゴロド生まれ。身長180㎝。52歳。モスクワ中央音楽院卒。
・趣味はレッスン。夏にダーチャで寛ぐひと時。ロシアンティー(実は甘党)。ウオッカ。
・特技は口笛で小鳥を呼び寄せる事。ジョーク。
・性格:求道家。ユーモアを好む。曲がったことが嫌いで頑固。情熱家。ひげが自慢。
現役ピアニストとしては世界でトップレベルの紛う事なき天才の一人。藍の才能をいち早く一目で見抜いた一人でもある。
世界を飛び回って精力的な演奏活動をしているが、活動拠点のモスクワで公然と現体制批判を行ったため軟禁状態となった。その後サンクトペテルブルグからフィンランドへ国外脱出を果たす。
藍を非常に買っていて、藍がフランチシェク国際ピアノコンクールに応募する際には軟禁中にも係わらず、危険をかえりみず推薦状を書いた。
◆入江咲苗:東京都町田市生まれ。身長百四十七㎝。十四歳。中学二年生。
・趣味は兄をからかうこと、フルート。部活はホッケー。
・特技は兄への嫌味、罵倒。暗記力。勉強。
・性格:強固なブラコン。毒舌。人間観察に優れる。本番に弱く、普段は強気なくせして舞台に上がる時は途端に弱気になる。やはり頑固。
兄である奏輔に露骨な嫌味や悪態を吐いたり嫌がらせをする。そのため奏輔は煙たがっているが、咲苗としては好意の裏返しである。ブラコンの傾向が極めて強い。
のちに兄と同じ音大に進みフルート奏者として兄や藍ほどではないにしろそれなりの成功を収めた。奏輔か藍とデュオを組んだり、奏輔や藍とトリオを組むこともままある。終生において兄の最大の理解者であった。ある意味藍以上だったとも言える。また、藍とも非常に深い親交を生涯保ち続けた。
以上作中では表現しきれなかった設定や後日談を含めて簡単に記しておきました。ご参考になりましたら幸いです。
「番外編・咲苗」は執筆中に思いついたアイディアです。奏輔のもとに突如妹が現れ藍と妙子の二人を巻き込んでしっちゃかめっちゃかに掻き回した後ふいっと姿を消すお話を思いつきました。ただ、このエピソードは本筋には全く不要のものでしたのでこうして番外編という形で掲載させていただきました。本編の「24.教授」と「33.藍のバレンタイン」の間あたりに入るエピソードです。
「ボツエピソード・藍の右手、僕の左手」は実際に本編に組み込む寸前までいったのですが、少し藍を追い詰めすぎな感があったので最終的に割愛しました。ですが雰囲気が大好きなエピソードなのでこうしてここにあえて掲載した次第です。
拙作ではおおむねハッピーエンドを迎えることができたのですが、いずれはもっとほろ苦いものも書いてみたいですね。なんと言うかこうきれいな話だけれどもやもやしてしまうような。
すでにいくつか次回作のアイディアはありますが何をどうしたらいいか途方に暮れている状況です。しかし休んでいる暇などありません。すぐにでも次回作に取り掛かる所存です。また拙作の続編についてもぼんやりとした構想はあります。ただあまりにも切ないのでお蔵入りの公算大です。
最後に。皆様にあらせられましてはこのような自己満足の駄作に付き合わせてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいですが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。衷心より御礼申し上げます。次はもっと面白いものを書いてまいりたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。皆様も良い創作ライフを!
長倉 冬青(ながくら とうせい)
拙作のきっかけはカミさんでした。当初から私は百合小説を書いていたのですが、それが彼女には非常に不満で、ならばと「茜川の柿の木」を書いてみたものの今度はこれが近親相姦的だとはなはだしく不興を買う始末。ではどんなものならいいのか問うてみたところ、彼女の好きなクラシック物ならどうだろうか、と。正直な話、私はクラシックには全く疎いので、必要に応じてアドバイスをもらえるなら、ということで挑戦してみました。とりあえず第一話を考えてみる際に「僕はショパンを捨てた」との書き出しを思いついたのでざっくり書いて見せたところカミさんは大変気に入ってくれました。ということで色々と思い悩みながらもなんとかここまでこぎつけた次第です。
今回は産みの苦しみというか、最も手直しが多くありました。その手直しの最たるものは妙子でした。当初妙子には4歳になる春歌という娘がいました。「5.すがちゃんのお買いもの」では転んで足をねん挫し奏輔にお姫様抱っこをされます。中盤にはなんと奏輔と肉体関係を結び、終盤ではストーカーと化した前夫、三沢に刺され入院します。そして最終的には妙子が奏輔と結ばれる展開でした。妙子の方が展開が激しかったにもかかわらず藍の個性が際立っていて、妙子の個性や性格の方はどうも今ひとつ影が薄いと言うか薄ぼんやりしたものでした。そのため妙子より藍をヒロインに据えた方がいいのではないかとのアドバイスもあって、ヒロイン変更という大転換をはかりました。これは多分成功したと思います。ヒロインの要素として保護者や仲間、庇護対象といったものがありますが、妙子は保護者、藍は仲間としての性格が明確に表せて差別化できたのもよかったように思います。
拙作では主にお二人の方に懇切丁寧にご助言を賜りました。実は私はクラシック素人です。カミさんはクラシック音楽関係を中心に多大なアドバイスを頂戴しました。またオタ友で親友のEさんにもストーリーやキャラクター設定などについて並々ならぬご助言をいただきました。
このお二人無くして拙作は完成し得なかった、そう思っております。この場を借りて篤く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
また、私はどうしてもプロットを考えるのが苦手で、常にその場の雰囲気とノリと勢いで書いてしまう質です。それでも今回は出来事のスケジュールをやりくりしたり、奏輔、藍、妙子、それぞれにとっての起承転結らしきものも考えてみました。ただ、これが奏功したかというと難しい。本当にプロットを考えるのが下手で困ります。
よく、「登場人物が勝手に動く」ようにして執筆が進むことがありますが、今回はそれが最もなかったように思います。だからと言って彼らに感情移入していないわけでもなく、特に藍への思いはひとしおです。例えば五稜郭タワーや冨久屋から帰る道のりでの奏輔とのやり取りなどは一気に書き上げました。幸せにしてあげられてよかった。あの奔放で自由闊達な生き方は私には到底できないものなのでとても憧れます。
拙作の登場人物は殆どが何かから逃げています。音楽から逃げた奏輔、音楽の決まり事や世事の疎ましい事から逃げた藍、前夫から逃げた妙子、理不尽な編集部から逃げた長さん。いずれも単に逃げたのではなく最終的には新しい道を見出したり立ち向かうなどしています。これは書いているうちに気付いた全くの偶然で他意はありません。唯一逃げていないのはジュラフスキーでしょうか。エピローグでも語られている通り、彼は公然とロシア政府を批判し一時軟禁状態にありました。
冬の函館は私の好きな景色です。まだ三回しか行ったことが無いのですが。それでも朝市の賑やかさ、その一方でどこか感じるあのわびし気でひなびて落ち着きがあって物静かな、そして異国情緒のある街並みは今でも強く記憶に残っています。
以下に登場人物の簡単な紹介を資料から抜粋しておきます。ご参考までにどうぞ。
◆入江奏輔:東京都町田市生まれ。身長176㎝。21歳。武蔵川音大(渋谷区代官山)在学中。
・趣味はクラシック鑑賞。特にピアノ曲。他ジャンルの音楽への興味は薄い。
・特技は暗譜、耳コピ、安上がりな料理、ピアノのレッスン、作曲、子供と仲良くなること。酒に強い(藍ほどではない)。
・性格:主体性がない。流されやすい。その一方で決断したら一直線に突き進む。藍の音楽に激しい嫉妬を感じていた。優しくて温和。誰かのために危険なほどわが身をかえりみない時がある。藍に言わせると「優柔不断で決断力がなくてふにゃふにゃしている」。右手を負傷しピアノが弾けなくなると藍の勧めで作曲を学び、のちに高名な作曲家として名を成す。教育者、指導者としても高い評価を得た。藍の最大にして唯一の理解者としてあり続けた。
◆高溝藍(→入江藍):神奈川県横浜市都筑区生まれ。身長160㎝。20歳。東桐音大退学→武蔵川音大入学。作中で唯一の左利き。
・趣味はクラシックに限らず音楽全般の鑑賞。ストレス解消のケーキ作り。飲酒。とにかくピアノに触れること。
・特技は暗譜、外国語会話、本番に強いくそ度胸。二十歳にして酒はザル。
・性格:自由奔放。人に従うのを嫌い自分に正直。頑固。すぐ手が出る。とにかくポジティブで明るい。声がでかい。行儀が悪い。
フランチシェク国際ピアノコンクール二位入選後、彼女の人生は一変する。その人目を引く容姿と一見奇矯ともとられかねない言動が世間の耳目を集め、クラシック番組とはほど遠いTVのバラエティ番組にも起用されることがあった。こういったことに激しいストレスを感じた藍は一年半の間失踪し各国を旅する。帰国後は奏輔の配慮でメディアへの露出は控えられた。
「ちょっと出かけてくる」と言って一人で南米まで行って半年返ってこないなど自由過ぎる行動に周囲は振り回され続けるが、それがあってこその彼女なのだと奏輔はよく理解している。
◆すがちゃん(三沢妙子→大須賀妙子→原田妙子、偽名菅島寿賀子):北海道帯広市生まれ。身長162㎝。26歳。地元の大沢短大卒。
・趣味はテニス、ボーリング。のちにピアノ。得意曲はジムノペディ。
・特技は料理全般。特にロールキャベツが美味しい。待つこと。人の気持ちを察すること。意外と力持ちで頑丈。
・性格:温厚温和で穏やか。少しおっとりしている。他者と対立する事が苦手。しかし意外と頑固。ネガティブ。藍に言わせれば「おしとやかで、しおらしくて、世話好きで、誰にでも優しくて、純粋で、ちょっと天然。おとなしくて気が弱そうに見える一方で芯が強いところもある。化粧っ気がなくて素朴で、一見地味なんだけど実は美人。あと胸がおっきい。男がばかみたいにこぞって好きになるタイプ」。お酒には弱くすぐ真っ赤になる。
原田弁護士と結婚後は幸せな家庭を築き一男一女をもうける。ピアノは趣味程度としてたしなんだ。夫とクラシックコンサートに行くこともあったが、もう居眠りをすることはなかった。奏輔とたった一度偶然の再会を果たしたのちは、生涯奏輔とかかわりを持つことはなかったが奏輔が登場する公演の放送やTV番組は欠かさずチェックしていたらしい。
◆長さん(春井智行):埼玉県上尾市生まれ。身長179㎝。法応大学経商学部卒。45歳。
・趣味はクラシック鑑賞。特にオーケストラ。
・特技はインタビュー、料理全般、味覚と嗅覚の鋭さ、手先の器用さ。
・性格:冨久屋では不愛想で寡黙な店主を演じているが、クラシック音楽を前にすると一変して情熱的で饒舌になる。理想家。困っている人を見ると放っておけない。情熱家。寡黙。
奏輔を気遣う妙子を優しく見守り続けた。時には気を利かせて姿を消すことも。
小さな酒場から始まった冨久屋を北海道でも指折りの居酒屋チェーンに仕立て上げる経営力は並々ならぬものがある。板前としての腕前も一流で、それをひけらかすこともなく謙虚さを忘れずに自分の技術を高め続けた。息抜きも兼ねて地元ショッピングモールで不定期開催される料理教室は、愛想のない性格にもかかわらずいつも大盛況となる。冨久屋には繁盛後も奏輔夫妻、妙子とも機会があればよく通った。
◆ジュラフスキー(Журавский/Юрафускі/Zhuravsky〈露/辺/英〉):ベラルーシ系ロシア人。ニジニ・ノヴゴロド生まれ。身長180㎝。52歳。モスクワ中央音楽院卒。
・趣味はレッスン。夏にダーチャで寛ぐひと時。ロシアンティー(実は甘党)。ウオッカ。
・特技は口笛で小鳥を呼び寄せる事。ジョーク。
・性格:求道家。ユーモアを好む。曲がったことが嫌いで頑固。情熱家。ひげが自慢。
現役ピアニストとしては世界でトップレベルの紛う事なき天才の一人。藍の才能をいち早く一目で見抜いた一人でもある。
世界を飛び回って精力的な演奏活動をしているが、活動拠点のモスクワで公然と現体制批判を行ったため軟禁状態となった。その後サンクトペテルブルグからフィンランドへ国外脱出を果たす。
藍を非常に買っていて、藍がフランチシェク国際ピアノコンクールに応募する際には軟禁中にも係わらず、危険をかえりみず推薦状を書いた。
◆入江咲苗:東京都町田市生まれ。身長百四十七㎝。十四歳。中学二年生。
・趣味は兄をからかうこと、フルート。部活はホッケー。
・特技は兄への嫌味、罵倒。暗記力。勉強。
・性格:強固なブラコン。毒舌。人間観察に優れる。本番に弱く、普段は強気なくせして舞台に上がる時は途端に弱気になる。やはり頑固。
兄である奏輔に露骨な嫌味や悪態を吐いたり嫌がらせをする。そのため奏輔は煙たがっているが、咲苗としては好意の裏返しである。ブラコンの傾向が極めて強い。
のちに兄と同じ音大に進みフルート奏者として兄や藍ほどではないにしろそれなりの成功を収めた。奏輔か藍とデュオを組んだり、奏輔や藍とトリオを組むこともままある。終生において兄の最大の理解者であった。ある意味藍以上だったとも言える。また、藍とも非常に深い親交を生涯保ち続けた。
以上作中では表現しきれなかった設定や後日談を含めて簡単に記しておきました。ご参考になりましたら幸いです。
「番外編・咲苗」は執筆中に思いついたアイディアです。奏輔のもとに突如妹が現れ藍と妙子の二人を巻き込んでしっちゃかめっちゃかに掻き回した後ふいっと姿を消すお話を思いつきました。ただ、このエピソードは本筋には全く不要のものでしたのでこうして番外編という形で掲載させていただきました。本編の「24.教授」と「33.藍のバレンタイン」の間あたりに入るエピソードです。
「ボツエピソード・藍の右手、僕の左手」は実際に本編に組み込む寸前までいったのですが、少し藍を追い詰めすぎな感があったので最終的に割愛しました。ですが雰囲気が大好きなエピソードなのでこうしてここにあえて掲載した次第です。
拙作ではおおむねハッピーエンドを迎えることができたのですが、いずれはもっとほろ苦いものも書いてみたいですね。なんと言うかこうきれいな話だけれどもやもやしてしまうような。
すでにいくつか次回作のアイディアはありますが何をどうしたらいいか途方に暮れている状況です。しかし休んでいる暇などありません。すぐにでも次回作に取り掛かる所存です。また拙作の続編についてもぼんやりとした構想はあります。ただあまりにも切ないのでお蔵入りの公算大です。
最後に。皆様にあらせられましてはこのような自己満足の駄作に付き合わせてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいですが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。衷心より御礼申し上げます。次はもっと面白いものを書いてまいりたいと思います。
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そうすけ、すがちゃん、あいちゃんの恋の行方は?ピアノ🎹を音楽🎵を捨てたはずなのに、捨てられてはじめてどれほど好きだったのか執着していたのかを知るそうすけ😔うーんどうなることやら。ちょっとウジウジしてるそうすけ、なにを考えているのかよくわからないすがちゃん、そしてストレートなあいちゃん、この先の展開が楽しみです❣️
初めて感想を頂戴し感激しております。
果たして奏輔はすがちゃんと藍とどちらの恋の道を進むのでしょうか。今のところすがちゃんとの線が濃厚なようですが。奏輔は藍と会話している時微妙にいら立っていることが多いですし。
奏輔の性格は私の不徳の致すところです。力不足でした。すがちゃんについてはよくお読みいただければその心情も見えてくるかと思います。藍は……見ての通りですね(笑)
これからのご愛顧どうぞよろしくお願い申し上げます。
そうすけとすがちゃんとあいちゃんの恋の行方は?そそうすけとあいの🎹はもう聞けないのだろうか😕音楽を捨てたつもりが捨てられて、はじめて自分がどれほど🎹に執着していたかを知る😭この先どうなるのか💕楽しみでーす❣️
みなみ様、立て続けのご感想を頂戴し痛み入ります。
奏輔は音楽を捨てたつもりが捨てられて、その落胆たるやいかばかりのものでしょうか。本質的には音楽と不可分であった彼の新しい道が「23.道」で見えてまいりますので是非ご一読下さい。
これからのご愛顧、どうぞよろしくお願い申し上げます。