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第14章 グランピング
第58話 4人揃って
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原沢が大声で大城さんを呼ぶ。大城さんがこちらに気付いて近づいてきた。その後を空さんがついてくるが僕を見つけると表情を暗くして僕から目をそらしてうつむく。何がそんなに苦しいんだ。大城さんは空さんを後ろに従え、明るく良く通る声で原沢に言う。
「おお、薪ってことはグランピング場に持ってくんだな。ご苦労さん」
「そうなんす。しっかしこうしてあんな有名人に会えるなんてびっくりっすよね」
大城さんと原沢がにこやかに会話を交わす。空さんが恐々と僕の方を少し上目づかいに見ながら頭を下げた。まるで何かを詫びるかのように。僕は挨拶する必要も感じなかった。空さんを苦々しい眼差しで見つめる。空さんと会うのはこの間の泉以来だ。僕は目で僕に構わないでくれと訴えた。空さんは更に申し訳なさそうな目すると視線をそらした。
僕と空さんが目で会話していると原沢がいきなりこれ見よがしに僕の腕にしがみ付いてきた。
「もおセンパアイ、何湿っぽい顔してるんすかあ」
空さんはぎょっとした表情でこちらを見て両目が大きく見開かれる。僕は原沢の方を向き、薪を持った腕で必死に振り解こうとする。
「こらっ、離せっ。いい加減にしろっ」
「いつものことじゃないですかあ。どうしたんすか急にい?」
「全然いつもじゃないっ。なんならいつも迷惑してるっ。いいから放せっ」
「やーだよー、いつもみたいに言ってくれないとだめえ」
ちらっと空さんの方を見ると、目を丸くして顔が青ざめてるようだ。
「なにをっ、いつも言ってる言葉なら決まってるだろっ。『は・な・せ・!』だっ。いいから放せっ、離れろっ」
「ぶー、外れー。正解はぁ『あ い ――』」
僕は我慢できなくなって薪を放り出し、何をはしゃいでいるのかよくわからない原沢の口を塞ぐ。その原沢はめちゃくちゃ嬉しそうだ。
「おお、お前ら仲いいなあ。入江夫妻みたいだ。いつの間にそんなに仲良くなったんだ」
大城さんも満面の笑顔だ。だが空さんは違った。何かにショックを受けたような顔で再び僕から目を逸らし、突然小走りにこの場から去っていこうとする。それを大股に歩いて追いかけていく大城さん。
空さんは小走りで練習場へ向かう。その後ろ姿を見て、僕は原沢を振りほどいてでも空さんに駆け寄りたい衝動に駆られた。
「むぐう、むぐむぐむぐう」
原沢が何か言いたそうだったので原沢の口から手を離す。僕もこいつには言いたいことが山ほどある。
「ぷはあっ、やっぱりあいつもうセンパイに興味ないんすよっ。ずっとセンパイから目を逸らしてたじゃないすか」
どこか意地の悪い笑顔で僕を見る原沢。
「ずっとじゃないっ、それにお前が変なこと言わなければなあっ」
原沢の両側頭部のくぼみを拳でえぐるようにぐりぐりと押す。
「痛い、痛い痛い痛い痛い、それマジ痛いっす痛い痛いウメボシ」
「僕の怒りはこんなもんじゃないからな。いつか罰を受けろ」
「そんなことになんかなんないっす。センパイはきっと――」
「きっとなんだ」
「ふふっ」
「おいなんだ気持ち悪いなあっ」
「さ行こっ。遅刻遅刻っ」
「だいたいお前が余計なことしなければなあっ」
【次回】
第59話 責苛む記憶
「おお、薪ってことはグランピング場に持ってくんだな。ご苦労さん」
「そうなんす。しっかしこうしてあんな有名人に会えるなんてびっくりっすよね」
大城さんと原沢がにこやかに会話を交わす。空さんが恐々と僕の方を少し上目づかいに見ながら頭を下げた。まるで何かを詫びるかのように。僕は挨拶する必要も感じなかった。空さんを苦々しい眼差しで見つめる。空さんと会うのはこの間の泉以来だ。僕は目で僕に構わないでくれと訴えた。空さんは更に申し訳なさそうな目すると視線をそらした。
僕と空さんが目で会話していると原沢がいきなりこれ見よがしに僕の腕にしがみ付いてきた。
「もおセンパアイ、何湿っぽい顔してるんすかあ」
空さんはぎょっとした表情でこちらを見て両目が大きく見開かれる。僕は原沢の方を向き、薪を持った腕で必死に振り解こうとする。
「こらっ、離せっ。いい加減にしろっ」
「いつものことじゃないですかあ。どうしたんすか急にい?」
「全然いつもじゃないっ。なんならいつも迷惑してるっ。いいから放せっ」
「やーだよー、いつもみたいに言ってくれないとだめえ」
ちらっと空さんの方を見ると、目を丸くして顔が青ざめてるようだ。
「なにをっ、いつも言ってる言葉なら決まってるだろっ。『は・な・せ・!』だっ。いいから放せっ、離れろっ」
「ぶー、外れー。正解はぁ『あ い ――』」
僕は我慢できなくなって薪を放り出し、何をはしゃいでいるのかよくわからない原沢の口を塞ぐ。その原沢はめちゃくちゃ嬉しそうだ。
「おお、お前ら仲いいなあ。入江夫妻みたいだ。いつの間にそんなに仲良くなったんだ」
大城さんも満面の笑顔だ。だが空さんは違った。何かにショックを受けたような顔で再び僕から目を逸らし、突然小走りにこの場から去っていこうとする。それを大股に歩いて追いかけていく大城さん。
空さんは小走りで練習場へ向かう。その後ろ姿を見て、僕は原沢を振りほどいてでも空さんに駆け寄りたい衝動に駆られた。
「むぐう、むぐむぐむぐう」
原沢が何か言いたそうだったので原沢の口から手を離す。僕もこいつには言いたいことが山ほどある。
「ぷはあっ、やっぱりあいつもうセンパイに興味ないんすよっ。ずっとセンパイから目を逸らしてたじゃないすか」
どこか意地の悪い笑顔で僕を見る原沢。
「ずっとじゃないっ、それにお前が変なこと言わなければなあっ」
原沢の両側頭部のくぼみを拳でえぐるようにぐりぐりと押す。
「痛い、痛い痛い痛い痛い、それマジ痛いっす痛い痛いウメボシ」
「僕の怒りはこんなもんじゃないからな。いつか罰を受けろ」
「そんなことになんかなんないっす。センパイはきっと――」
「きっとなんだ」
「ふふっ」
「おいなんだ気持ち悪いなあっ」
「さ行こっ。遅刻遅刻っ」
「だいたいお前が余計なことしなければなあっ」
【次回】
第59話 責苛む記憶
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