この異世界住人が卑猥すぎて魔王討伐が進まない……

パイ吉

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第29話この異世界で何かが起こっている……

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「あそこです! キューべ村です」
 マリアの示す方向に集落が見えた。俺が思っていたよりも規模の大きい村だった。村人の姿は一人も見えない。ゴブリンたちは去ったあとだろうか?
 徐々に高度を下げて、村から少し離れた牧場に着地する。周囲を警戒して、ゴブリンがいないことを確認した。
「マリアはこの牛舎で待っていて。俺は村の様子を見てくるから。安全を確認したら、手を振って合図するよ」
「わかりました。お気をつけて」
 マリアが牛舎の陰に身を潜めた。
 俺は飛びながら村の様子をうかがった。建物に目立った被害は見当たらないが、地面のいたるところに、農具などいろいろな生活品が散らばっていた。村の上を一周して見回ったが、ゴブリンの気配も感じられないし、村人の姿も確認できなかった。
「誰かいませんかー? 助けにきましたー」
 村の中央に着地して、呼びかけてみる。反応は無い。
「すみませーん。誰かいませんかー?」
 近くの民家に足を踏み入れる。中は静まり返り、荒らされた状態で放置されている。部屋の隅々まで調べたが誰もいなかった。数軒の民家を調べたが、結果は同じだった。
 みんな、どこかへ避難したのかな? とりあえず危険はなさそうだ。
 俺は牛舎が見える場所へ移動し、マリアに向けて手を振った。隠れていたマリアが姿を見せ、村に向かってかけてきた。
「勇者様、村のみんなは?」
「家の中も見たんだけど、誰もいないんだよね。どこかに避難してるとか。マリアは心当たりない?」
「もしかすると、鉱山かも知れません。近くに使われなくなった鉱山があって」
「じゃあ、そこへ行ってみよう。案内してくれる」
 マリアが胸に手を当て、コクリとうなずいた。
「マリアっ。マリアじゃないか! 無事だったのか」
 一人の男性が走り寄り、マリアを抱きしめた。
「お父さんっ、お父さん!」
 マリアも父親との再会に喜びの涙を流す。
「この人は?」
「勇者様よ。村を救いに来てくださったの」
「おぉ、それは。マリアの父です。ジェイソンと申します」
 ジェイソンは俺に頭を下げた。
「ユージです。村の皆さんは今どこに?」
「閉鎖した鉱山に避難しています。私は村の状況を確認しにきたところです」
 マリアの読みは正解だった。ジェイソンの話によれば、森からゴブリンの大群が押し寄せ、村を襲撃したそうだ。まともな装備を持たない村人たちは農具で応戦したものの、圧倒的な数の前に歯が立たず、村から逃げ出したそうだ。村がパニックに陥る中、マリアは旅商人の噂話で聞いた勇者に助けを求めるため、単身町へ向かったということだった。
「けが人はどれくらいいますか?」
「村の男たちは、軽症者も含めると全員が負傷していますが、命に別状はありません。ただ女たちが……」
 ジェイソンがうつむき、言葉を詰まらせる。
「お父さん、お母さんは? ねえ、お母さんは?」
 マリアの問いかけにジェイソンは苦しそうな表情で首を横に振った。
「これまでゴブリンが村を襲ったり、人をさらったりしたことはあるんですか?」
「いえ、奴らが根城にしている森に足を踏み入れた者が襲われることはありましたが、今回のようなことは初めてです」
 モンスターに何か異変が起きているのだろうか? ガーゴイルの襲撃そしてゴブリンの襲撃、裏で糸を引いてる人物がいるに違いない。俺の脳裏に、ガーゴイルと共に消えた白髪の男が浮かんだ。
「今から、さらわれた方の救出に向かいます。ゴブリンの根城を教えてください」
「勇者様、ありがとうございます。枝分かれしたこの道を右に進むと麦畑があります。さらに先へ進むと突き当りに森があります。森の奥が奴らの根城です」
 女性たちが心配だ。急いだほうがいいな。
「待ってください、勇者様」
 マリアが俺の腕を掴んだ。
「私も連れて行ってください!」
「えっ、それは危険だからちょっと……」
 マリアの真剣な顔に押されて、思わず言葉を濁してしまった。
「私がいれば、ゴブリンをおびき出せると思うの。村のみんなを、お母さんを早く助けてあげたい! お父さんお願い」
「マリア……勇者様、どうしてもお邪魔でなければ、マリアをお願いできないでしょうか?」
 マリアの本気が通じたのか、ジェイソンは俺に頭を下げて頼んだ。
「ご協力に感謝します。マリアのことは、俺が責任をもって守りますから、安心してください」
 ジェイソンに約束した俺は、マリアと一緒に空へ舞い上がった。
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