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 思わぬ再会

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「寝てる時泣いてたみたいだけど、何か悪い夢でも見たのか?」
 彼にそう言われて、私は始めて自分の頬に涙が伝っていることに気が付いたーーと、同時に。
 夢のようなーーいや、悪夢のような現実を、思い出した。
 気付いた時には涙が溢れていた。
 昔から、一度流れた涙はなかなか止まらない。挙句、私は声を出して泣いた。彼の前なのに、と思っても、止めどなく流れる涙と漏れ出る声を、抑えることが出来なかった。
 私は、彼の前では、元気で、お気楽で、明るい『私』でなくてはならないのに。
 困惑する彼の気配を感じながら私は泣き続けるーーさながら幼い子供のように。
 と。
「ん」
 肩を何かで軽く叩かれた。見るとティッシュ箱だった。私はそれを借りてひたすら涙と洟を拭った。
 彼は、何も言わずに隣に居てくれた。
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