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思わぬ再会
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しおりを挟む最善の対応では絶対なかっただろうが、10分もすると彼女も落ち着いてきた。
「ごっ…めんっねっ、優っ希っくんっ…。ありがっとっ」
しゃっくりが抜け切らない声で謝る彼女。
「……いや別にいいけど」
涙に濡れる彼女から顔を背けて俺はそう返すーー別に感謝されて照れている訳ではない。彼女の名誉のために、泣き顔を見ないようにしているのだ。
……何故彼女が泣いたのかはよく分からない。
訊いていいことなのかも分からない。訊くことでまた、泣き出したり、嫌な思いをさせるかもしれない。俺は彼女が傷つくかもしれないのでーーいや、違う。俺は、他でもない自分が彼女を傷つけるかもしれないことが怖くて、訊くのを躊躇した。
傷つけるリスクを冒してまで、大事な人の大事な時に側にいる覚悟をーー踏み込む勇気を、俺はまだ持ちえていない。
俺は出来れば彼女から話してくれないものかと思いながら
「嫌なことはあんまり溜め込むなよ」
と、水にも毒にもならない、当たり障りのないことを言った。
「うん……、ティッシュありがと…もう大丈夫だから」
彼女はまだ少し濡れている目元を指で拭きながらティッシュ箱を返してきたーー涙の理由は言い出しそうにない。
箱を受け取りながら、俺は、彼女が泣いている時に力になれない自分を、ただひたすらに、歯痒く思った。
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