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勝負してこそのゲーム
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しおりを挟むゲームも終盤。
なんやかんやあって俺は借金60万で上がり。
流奈は上がってこそいないがーー最後の方のマスは幸運マスが多いのだろうか?ーー貯金は200万に達しつつあった。
「この分だと私の圧勝だね!優希くん弱過ぎて張り合いがないな~」
うぜぇ。
これ終わったらマリカー誘って絶対ボコる。
そう心に固く誓う俺をよそに、残り4マス、彼女は恐らく最後と思われるルーレットを回す。
結果はーー
「2……ああ~上がんなかったか~。ま、いいや。なになに~『左隣の人と……』」
「プレイヤー2人だから左隣も何もないけどな」
「『結婚』……」
その瞬間、時が止まった。
マスを見ると本来書かれていた文面に二重線が引かれており、流奈が言った通り『左隣の人と結婚』と書かれていた。
思い出した。
人生ゲームをする度に例の借金マスに止まっていた俺を見かねて、流奈が昔救済措置としてこのマスの文面を変えたのだ。
俺は心臓がバクバク脈打つのを感じながら彼女の方に視線を向けた。見ると頭から湯気が立ちそうになっており、その肩はプルプルと震えている。
あれは、怒ってる……?
「あ、あれだ、ほら、所詮ゲームだしノーカンでいいぞ。もっかいルーレット回そう。そうしよう、な?」
俺は咄嗟にそう言った。しかしさっき流奈が自分で「マスに書かれてる事は絶対、回し直しはなし」と言ったのが痛い。彼女は自分の課したルールはそう曲げない性格なのだ。そして思った通り本人も
「い、いやいいよ!回し直しはなしってさっき自分で言ったし!」
俺の提案を辞退した。
「そ、そうか」
言って、俺は行き場のない視線をマスに向け、書かれている注釈を見た。そこには財産の共有、自分を結婚相手の車に乗せると書かれてある。
「じゃあ……」
「う、うん……これでゴールだね。財産は優希くんの借金60万を引いて140万。優希くんも140万」
まさかの引き分け。
しかしそういえば、このマスを作ってからは毎回彼女と人生ゲームをする時はこんな終わり方だったように思える。
最後の最後で引き分けとは……彼女の今までの幸運値の高さが嘘のようだ。
「か、片付けるか」
「そ、そだね」
俺たちは互いに顔を赤くしながら、いそいそとボードを片付け始めるのだった。
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