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出会い編
13.
しおりを挟む「アマンダこれ、あげる」
「ありがとうございますシルヴィア様!とても綺麗ですね!」
あの部屋から出てロイ達と過ごすようになって随分経った。確か、1週間が2回だから2週間?
この2週間ずっとお勉強していた。午前中に言葉や足し算引き算の練習。午後からは法の練習をした。
僕は光の御子だから魔力をこの国に収める義務があるらしい。使用人のエルザがこの間教えてくれた。エルザは少しツリ目でアマンダほど胸がない。この前ようやく覚えた言葉でそれを伝えたら軽く叩かれた。
でもあんま痛くなかった。
痛みと言えば、身体を調べられてから毎日魔法陣の中心に座っている僕を囲んで元宮廷魔道士?の人達が解呪の儀というのを行っている。なんでも痛みを感じないでいれば怪我にも気づかず死んでしまうかもしれないから、らしい。けど僕は傷すぐ塞がるからいいんじゃない?って伝えたら話を逸らされた。折角の能力なんだから活かせばいいのに。
毎日の勉強の中で光の御子の加護で『並列思考』『思考力向上』という加護があることが新たに判明した。
それ故に僕は普通の人間より覚えが早いらしい。ここまで話せるようになるまでもっとかかるらしい。
そして魔法の才能もあった。
今は水魔法と火魔法の温度調節を合わせた『氷の華』作りをしていた。庭にでて実際みた花を氷で再現する。そして皆にプレゼントするという一連の流れができていた。
「これはね、ロイにあげるの。それでこれはリア、これはアルにあげる!エルザは……これかな?」
「シルヴィア様はお優しいのですね!きっと喜んでいただけますよ!」
「……シルヴィア様あたしの花だけ2輪で丸みを帯びているのは何故でしょう。某身体の部位のような身体をしている理由をお聞きしたく存じますが?」
「よろこぶかなぁ?」
「おいクソガキ無視してんじゃねぇぞ。あ、ごめんなさいアマンダ先輩こわい。うそ、嘘ですヴィー様万歳。シルヴィア様天才一生ついていきます。」
エルザはとても口が悪い。ロイ達は皆丁寧に話すからとても新鮮だ。両親と似ている口調だがなんだか違う。この理由はまだ分からない。もっと頑張って勉強しなきゃ。
エルザと仲の良い使用人のユリが「エルザにこうやっていってごらん」とか「エルザにこれ渡してみて」とか教えてくれる。その度にエルザは怒る。そしたら怒られてるのになんだか楽しくなるんだ。変なの。
「シルヴィア様そろそろ儀式のお時間です。お部屋に戻りましょう。」
「…ぼく、このままでいいのに」
「だめです!ちゃんと治してもらいますよ」
「……もっとお花作りたい……」
「魔法はまたいつでもできますから。ほら行きますよ」
アマンダが優しく僕を抱っこする。
……本当は魔法陣を解呪しようがそのままだろうが僕はどっちでもいい。けどこうして駄々を捏ねるとアマンダは困ったように笑いながら抱っこしてくれる。僕はそうして欲しくて毎日こうして嫌がるふりをする。こんな悪い子だってバレたら怒られるかな……?
アマンダの首筋に顔を埋めるとアマンダの匂いがした。お花の良い匂い。何のお花かは知らないけどアマンダにピッタリの落ち着く匂い。いつかなんのお花か知りたいな。それで氷でそのお花を作ってあげるの。よろこんでくれるかな?
「お疲れ様でした。この感じだと後2日ほどで完全に解呪出来そうですよ。」
「ヴィーよく頑張ったね!あと少し頑張ろう!」
「ふふ…これね、僕が作ったの。ロイにあげる」
「!ヴィー今笑った!!偉いぞ!!お花もありがとう!すごく綺麗だ」
「ヴィーが笑った……」
「……良かった……!!」
ロイにお花を渡したらなんでかすごく喜ばれた。ギューッて苦しくなるくらい抱きしめられてポンポンって頭を撫でてくれる。ロイのこの優しい手つきが僕はとても好きだ。落ち着くし胸のあたりがすごくほわほわする。他のみんなもしてくれるけどロイのが1番好き。
「今日は宴だ!!お前らシェフに伝えてこい!!」
「今日はこの新国家の初めての記念日にしましょうよ!!」
「はぁ?なんて記念日にするんだよ」
「……シルヴィア笑顔記念日」
「お前ネーミングセンスひどすぎるだろ!!」
アルとリアのおしゃべりはいつも面白くて2人の会話を聞いてるだけで周りは皆笑顔になる。僕もそんな存在になりたいなぁ。
皆が落ち着くまでずっとロイが僕を抱っこして頭を撫でてくれていた。
人前にずっと出ていなかった僕はロイに抱えられた僕を睨んでいる存在に気が付かなかった。
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