牢獄の王族

夜瑠

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出会い編

14.

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「___魔法陣の完全消滅を確認。魔力酔い、魔力循環に問題は見られません。成功です。」


宮廷魔道士という人がそう言うと皆一斉にその場に座り込んだ。良かった、とか安心した、などの声が聞こえる。よく分からないけど僕は今日から痛みを感じる身体に戻ってしまったらしい。いつからあの魔法陣を刻まれたのか覚えていないけどすごく前だったのは覚えている。

確か、殴られる度に声や目から液体をだしてしまっていた頃だ。ある日急に痛くなくなってすごく驚いたのを今思い出した。

「……大変申し訳ありませんが痛覚が正常に働いているかの確認のため軽くでいいので身体の何処かを叩いて貰えますか?」

「叩くのか……ヴィーごめんな?ごめん、軽くだから少しだけ我慢してな?」

ロイが謝りながら僕の手を取る。エルザにさっき多分確認のために叩かれる、と教えて貰っていたため僕は特に嫌がることも無く手を差し出した。
それに本当に痛みを感じるのか信じられなかった。


パンッ

ロイが僕の手首を軽く叩く。皆が心配そうに僕を見ているのが分かった。


ジン__とだんだんその部分が熱くなる感覚。

嗚呼、これが……


「……いたい……」

「ヴィー!よく頑張った!!偉い!!ごめんよ!!」

「良かった……良かった…!!」

「ヴィーよくやった!!」

ロイが苦しいくらいにギューッと抱きしめてくれてその上から皆がまた苦しいくらいほど抱きしめる。

そして皆が目からあの液体をだしていた。

こんな状況だったけど僕はそれの名前を知りたかった。

「これなーに?」

「……っこれはね、『涙』って言ってね『泣く』とでるんだよ……!」

「ロイ泣いてるの?痛いの?」

「そうだね……これは嬉しいんだよ、ヴィーが痛みを取り戻してくれて良かった……!」


痛くないのに涙がでるの?皆もそうなの?
痛い時と嬉しい時にでるの?不思議なんだね涙って。

「今日は宴だ!!お前らシェフに伝えてこい!!」

「あはは!それすっごいデジャブなんだけど…!記念日作りましょ!そうね、痛覚奪還記念日!!」

「お前のネーミングセンスやっぱり狂ってるだろ!!それにお前のもデジャブだわ!!」



皆がわいわい騒いでる。騒いで泣いてるのに嫌じゃない。よく母上も叫びながら泣いてたけど母上は痛かったのかな…?でももう会えないんだっけ?母上はちゃんと嬉しい時の涙を知ってたのかな?教えてあげたいな……


「ヴィーお疲れ様。これで一安心だね。」

「ひとあんしん?」

「あー、とりあえず安心?みたいな?」

「あんしん?」

「良かったぁーっていうこと!またアマンダにでも教えて貰おっか!ほらおいで!」


さっき腕から離れたばっかりなのにまたロイに抱っこされる。
ロイはアマンダより説明が下手で説明に困るとすぐロイは抱っこして終わらせる。けどロイの抱っこはすごく落ち着く。だからたまに本当は知ってる言葉でも聞いたりする。これもバレないようにこっそりしないと。


「最近やっと肉ついてきたかな?ヴィーは可愛くなったねぇ」

「ヴィーかわいい?」

「うん、すっごくかわいい。食べちゃいたい。」

「僕食べられるの?」

「あはは例えだよ。本当には食べないよ」


ロイはそう言って僕のほっぺたにチュッと口を付けた。
食べられた!僕は急いでほっぺたを抑える。けど特に変わったようには感じない。ロイはくつくつと笑っている。


「いま僕のほっぺたたべたの?」

「違うよ、これはキスって言って大好きだよーっていう証だよ」

「きす?だいすき?じゃあ僕もきすする」

「ヴィーは俺のことすき?」

「ロイのこと好きだよ」

僕はそう言ってロイのほっぺたに口を付けるけどロイみたいなチュッていう音はしなかった。
なんで?僕は不思議でロイのことを見るけどロイはありがとう、と笑うだけだった。

「ヴィーは可愛いね。」

「かわいいなーに?」

「えー、なんだろ。大好きだよーってこと」

「かわいいもだいすきなの?」

「そうそう。ヴィーはかわいいねぇ」

「ロイもかわいいねぇ」

「んー、それは…ちょっとちがう、かな?けどありがとう」

かわいいは大好きって意味なのにロイには使わないらしい。なんでだろ。
でもロイにかわいいって言ってもらうのはなんだか嬉しい。また胸がほわほわする。

今なら分かるかな?

「ロイこれなーに?」

「ん?あー、前にも言ってたね、詳しく言える?」

「なんかね、ほわほわするの。それでギューッて苦しくなるの。これなーに?」

「………………」

そう言うとロイは目を大きく見開いてただ僕を見つめた。

「ロイ?」

「…………ヴィー…それ…まさか………っありがとう…!!……ありがとう…!!」


ロイはそう言って僕をギューッてして泣いていた。
どうしたんだろう。
これは痛い方かな?嬉しい方かな?

嬉しい方だったらいいなぁ……







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