牢獄の王族

夜瑠

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出会い編

15. ロイside

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「なんだよ急に集めて。早く宴会行きたいんだけど」

「バカ。わざわざこの時間に呼び出した理由があるに決まってるでしょ。」


場内が宴会の準備に奔走しているなか俺たち3人はいつもの会議室に集まっていた。というのも俺が2人を呼んだのだが。


「ごめんごめん。ただ少しでも早く2人に伝えたいことがあって」


はやく2人にもあの時の俺の感動を、喜びを追体験してもらいたい。それほど俺はヴィーの聞いている意味がわかった時嬉しかった。

「前にヴィーが言葉を勉強し始めたころ胸を指してなに?って尋ねたの覚えてる?」

「ああ、私の胸当ての話のときね。」

「結局だれもわからなかったやつだろ?何が言いたかったのかわかったのか?」

「うん…なんでも胸がほわほわしたりギューッてくるしくなったりするらしいんだよ。それってさ、俺の願望とか自惚れじゃないよな?多分『幸せ』を感じてくれてるって思っていいんだよな……?」


みっともないけどだんだん声が震えて願うように問いかけてしまった。
2人は息を飲んで固まっていた。

「夢見心地で今まで感じたことのない幸福で失いたくないと思うから苦しいってことだと思っていいかな…?」


「……ったりめぇだろ!!それ以外考えらんねぇよ!!」

「……っ…そっか…そっかぁ……!!ヴィーは…っ幸せって思ってくれてるのか……!!」

リアが泣き崩れる。アルも涙を流してはいないものの目が濡れている。
俺もさっきようやく収まったのにまた涙が止まらなくなってしまった。



俺がヴィーを抱いて涙を堪えているとあの子は頭をぎこちなく撫でてくれた。俺が驚いて顔を上げると

「いつもロイがしてくれるから。泣くしないで?」

と、心配そうにしていた。


俺はこの子が幸せを感じてくれていたと知った時1番に「許された」と思った。

何もわからない幼子から例え残虐行為を受けていたとはいえ親を引き離すどころか処刑し、王子というこの子の地位までも奪ってしまった。大衆も光の御子ということで落ち着いているが1部では王家の生き残りを殺せ、という意見もある。

俺はヴィーが驚くほどはやく知識を身につけている様を見るたび怖かった。

俺が全てを奪ってしまったとばれるんじゃないか。人殺しだと罵られるんじゃないか。家族を恋しがるんじゃないか。

そんな不安がシルヴィアを見る度に過ぎった。

それなのにシルヴィアは幸せだと感じてくれていた。俺はヴィーを寵愛する女神に許されたのだと。ヴィーが安心して過ごせる環境になったことを喜ぶより先に自身の安寧を喜んでしまった。

そんな自分が恥ずかしくとてつもない小物に思えた。


だから俺はまた自己保身に走った。

2人にもこの喜びを、と言いながら本当は自分はヴィーのことを1番に考えているというアピールに過ぎない。

嗚呼、なんて打算で醜く、滑稽で矮小なのだろう。


沈む思考はリアの言葉で打ち切られた。


「……このタイミングで言うのもあれだけどエリザベート様の動向が少しだけ掴めたわ。……それで…もしかしたら革命軍の中にいるかもしれない」

「は!?エリザベートってこの前言ってた行方不明元公爵令嬢!?」

「説明ありがとう。そうその令嬢」


今は自己嫌悪なんてしている場合じゃないね。
けど革命軍とは……。これが本当ならそれこそ俺らは滑稽じゃないか。


「なんで革命軍だと?」

「足がつかないためだと思うんだけどエリザベート様はスラムの人に身体を開き更に大金を渡して口止めさせて情報を得ていたらしいんだけどその時に革命軍への参加方法とかを聞かれたらしいわ。」

「それは……厄介だね。」

よりによってスラムの人間からの情報か…

「なんで厄介なんだよ。別にスラムの奴らの情報なんてたかが知れてるだろ。」

アルが不思議そうにしている。脳筋はこれだから困る。そんな簡単な問題なら良かったんだけどね。

「スラムはこの世の掃き溜めであるからこそ闇に染まった奴らが多くいる。奴らは追われてる奴とか死んだはずの奴も多い。だからこそ追手の状況をしるためにより新しく詳細な情報が集まるんだよ。」

「そうそ。だから情報屋とかもスラムとかすの近くに住んでる人が多いのよね。身体売ってまで情報を得たとしたらその情報量はかなりのものよ。しかもメアリ様からの情報もあったとしたら……」


考えるだけで恐ろしい。俺たちですら知り得ないことをきっと彼女は知っている。そして一流の情報収集能力をもつリアですらたったそれだけしか情報を得られないとすれば……きっと頭もきれるんだろう。


「へぇー、なんか大変そうだな。けど革命軍にエリザベートなんて名前の大貴族いたか?偽名にしてもそんな地位の奴居たら振る舞いで気づくと思うんだが。」 

「私もそう思ったけど信頼出来る人に聞いてもそんな人全く見つからなかったわ。相当のやり手ね」

「じゃあもしかしたらこの城の中にいるかもしれないのか…2人とも分かってるだろうけど警備もっと気をつけて」

「りょーかい」

「分かってるわ」

味方を疑うのは心苦しいけど……
やっと掴んだあの子の幸せが揺らがないようにしてやりたいしね。


もうあの子が痛みと苦しみに泣くことがないように。







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