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会遇編
33. ヒルハside
しおりを挟む自白香を嗅がされ自分の意思に反するまま、意識などほとんどないまま浮ついたようにユルハ様について語った気がする。
それに気づいたのはもう随分時間が経った後だった。
自分はなんてことをしてしまったのだろう。
こんなことではユルハ様に合わせる顔がない。
1番の腹心を自負していながらこんなただの自白剤如きに敗れ口を割るなどあってはならないことだ。
そう思い私はただ後悔と懺悔の気持ちだけで勢いよく舌をかみ切った。
───申し訳ありません。ユルハ様。この命を持って償わさせて貰います。
なのに。
目が覚めてしまった。しっかりかみ切ったと思っていたのに勢いが足りなかったのだろうか。
「お前勝手に死のうとすんなよなぁ。ビックリしただろーが。」
声のした方を見るとモルが牢の外にいた。鍵をくるくると指で回しながらケラケラと笑っている。
「お前舌完全に断裂してたから治すの大変だったんだぜ?すぐ見つけなかったら確実死んでたわ。」
──何故治療なんかした!!
そう言いたいが口に巻かれた布が邪魔をする。外そうにもいつの間にか手枷まで嵌められてしまっている。
恨みがましく睨みつけるがモルは全く気にせず肩をすくめると牢の鍵を開けた。
「来な。お仲間に合わせてやるよ。」
手を引かれつれていかれた一室にはアマンダがいた。優雅に紅茶を飲みながら窓の外を見ている。
自由な奴とは私は違い鎖で縛られ壁からほとんど動けない。
なんとか死んで償う方法を探すもこれでは何も出来なさそうだ。
「……あなた死のうとしたの?」
こちらを見ないまま奴が喋る。
「……ねぇ、死んだらどうなると思う?また何かに生まれ変わって人生を歩む?それとも天国か地獄?それとも何も無いただ消滅するだけ?」
急に何を言い出すのだろう。テンゴクとジゴクとはなんなのか。色々聞きたいことはあったが今は何も聞けない。
「……前と違って良い子で過ごさなかった私はどうなるのかしらね。まぁなんでもいいか。……ねぇ、人は頭を破壊すれば死ぬ物よ。特に理由はないけれど教えておいてあげる。」
この女が何を言いたいのかほとんど分からなかったが確かに頭をかち割れば良いのだということに気づく。
壁と向かい合い、腰まで使って思いっきり頭を逸らし勢いよく壁にぶつけた。
「───っっっ!!!」
言い知れぬほどの鈍痛が襲う。でもこんなのじゃ死ねない。もっと勢いを付けないと。
何度もそれを繰り返す。
頭が麻痺して何が何だかわから無くなってきた頃アレクシスをつれた兵士がやって来て止められてしまった。
必死に抵抗したがほとんど訓練なんてしてこなかった自分は簡単に捕まった。
そのままアマンダも連れた3人をその男は引き連れて移動した。
久しぶりに見た気がするアレクシスは全く変わっていなかった。
ユルハ様のことを喋ってしまった負い目から中々顔をまることができない。
「……お前さ。」
ビクッと身体が跳ねる。何を言われるのだろう。
「この数日溜まんなかった?もう俺ヤリたくてヤリたくて玉パンパンなんだよね。なんかお前の顔みただけで起ちそう。」
余りにも予想外すぎる言葉に思わずアレクシスの顔と股間を見てしまう。
そしてゆっくりと意味を理解した後奴の腰に蹴りを入れた。周りの兵士は誰も止めなかった。
「いった!!え、痛!そんな怒んなくて良くね?お前も男なら分か……あっもしかしてイン…」
「~~~っ!!」
べしべしと蹴りを入れる。このクソ野郎!!お前が死ね!!
「もう着くぞ。気持ちも分かるが一旦落ち着け。」
兵士に憐れみの目で見られる。お前も殺してやる。
「大丈夫。私のテクで貴方をそこの男もびっくりの絶倫に変えてあげるわ。」
この女は何がなんでも殺す。
気持ちが昂り何が何だか分からないまま入れられた部屋は謁見の間だった。
そこには見知った方たちがいた。私の何よりも大切な主がいた。
そこに駆け寄りたい気持ちが一瞬湧くが同時に喋ってしまったという負い目が私を苛む。
やっぱり何とかして死んでおくべきだった…。
けれどユルハ様は全て受け入れて下さった。私の犯した罪を全て察していながら全てを許してくださった。
歓喜と感謝と懺悔と罪の意識。もう何が何だか分からないまま泣いた。
そして再度決意した。
このお方を何に変えても守り抜く絶対私が盾となる。
ユルハ様の為ならばこの命いくらでも差し出してみせよう。
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