幸せの形

夜瑠

文字の大きさ
7 / 9

7.

しおりを挟む




「世間の目を気にしたわけじゃない。確かに全く気にしてない訳でもないけど、これは私が私の意思でこの子と生きたいと思ったの。この子を堕ろして新しく恋愛して今度はちゃんと結婚願望のある人と過ごした方がきっと幸せになれるのは分かってる。」



でも、


「それでも、私はこの子と歩む未来を考えちゃったの。」


止まらない涙を必死に拭う。

勘違いされたくなかった。

ただ倫理観だけで産むわけじゃない。もちろん沢山の可能性といくつもの未来を考えた上で産むことを決めたのだと。

ちゃんと自分の意思で決めたことだ。誤解されたくない。


「……あなた…」

「……ああ…舞」


私は両親を見る。
大学生になる前よりも少しだけ老けた気がした。2人は言わないけれど私の志望校に入れるために2人が無理をしたのを私は知っていた。そんな大学を私は私の勝手で辞めようとしている。

私は2人の顔を見るのが辛くてそっと目を逸らした。


「…子育ての金は少しなら出してやる。1歳になるまでと言わずここで暮らせばいい。」

「……え……?」


信じられずに両親を見つめる。
両親はとても厳しい人で特に学業に厳しい人だった。

私はきっと大学を辞めるなんて許せんと言われると思っていた。


「……ほんとに……いいの……?」

「……あぁ。大学に行ったからといって幸せになるとは限らないし、今お前がその子を産んで不幸になるとも限らない。」


そう言って父は困ったように笑った。

「……お前はホント馬鹿な娘だなぁ…もっと親を頼ればいいのに。」

今まで見たことの無いほど優しい父の顔に私はまた声を上げて泣いた。

昼と違って両親は微笑みながら抱きしめてくれた。

有難かった。私もこんな親になりたいと思った。

こんな未熟な私でもそうなれるのかな。お母さんとお父さんと一緒にこの子を育てよう。

きっと私だけじゃ育てられない、そうどこか漠然と抱いていた不安は霧散した。

私は幸せだ。

幸せじゃないか。

幸せになりたい?元々私はこんなにも恵まれていたのに何を言っていたのだろう。

嗚呼、本当に私はなんて馬鹿な娘なんだろう。

私馬鹿だから両親が私を愛してくれてることも忘れちゃってたみたい。

ずっとずっと大切にされてきたのに。
優しい笑顔を向けてくれてたのに。
幸せを与えてくれてたのに。

本当に馬鹿だな、私。

もっと早くお母さんとお父さんに相談すれば良かった。

私は泣きながら少しだけ笑った。


両親はそんな私を見て、また笑って少しだけ泣いていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

侯爵様の懺悔

宇野 肇
恋愛
 女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。  そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。  侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。  その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。  おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。  ――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

処理中です...