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しおりを挟む「世間の目を気にしたわけじゃない。確かに全く気にしてない訳でもないけど、これは私が私の意思でこの子と生きたいと思ったの。この子を堕ろして新しく恋愛して今度はちゃんと結婚願望のある人と過ごした方がきっと幸せになれるのは分かってる。」
でも、
「それでも、私はこの子と歩む未来を考えちゃったの。」
止まらない涙を必死に拭う。
勘違いされたくなかった。
ただ倫理観だけで産むわけじゃない。もちろん沢山の可能性といくつもの未来を考えた上で産むことを決めたのだと。
ちゃんと自分の意思で決めたことだ。誤解されたくない。
「……あなた…」
「……ああ…舞」
私は両親を見る。
大学生になる前よりも少しだけ老けた気がした。2人は言わないけれど私の志望校に入れるために2人が無理をしたのを私は知っていた。そんな大学を私は私の勝手で辞めようとしている。
私は2人の顔を見るのが辛くてそっと目を逸らした。
「…子育ての金は少しなら出してやる。1歳になるまでと言わずここで暮らせばいい。」
「……え……?」
信じられずに両親を見つめる。
両親はとても厳しい人で特に学業に厳しい人だった。
私はきっと大学を辞めるなんて許せんと言われると思っていた。
「……ほんとに……いいの……?」
「……あぁ。大学に行ったからといって幸せになるとは限らないし、今お前がその子を産んで不幸になるとも限らない。」
そう言って父は困ったように笑った。
「……お前はホント馬鹿な娘だなぁ…もっと親を頼ればいいのに。」
今まで見たことの無いほど優しい父の顔に私はまた声を上げて泣いた。
昼と違って両親は微笑みながら抱きしめてくれた。
有難かった。私もこんな親になりたいと思った。
こんな未熟な私でもそうなれるのかな。お母さんとお父さんと一緒にこの子を育てよう。
きっと私だけじゃ育てられない、そうどこか漠然と抱いていた不安は霧散した。
私は幸せだ。
幸せじゃないか。
幸せになりたい?元々私はこんなにも恵まれていたのに何を言っていたのだろう。
嗚呼、本当に私はなんて馬鹿な娘なんだろう。
私馬鹿だから両親が私を愛してくれてることも忘れちゃってたみたい。
ずっとずっと大切にされてきたのに。
優しい笑顔を向けてくれてたのに。
幸せを与えてくれてたのに。
本当に馬鹿だな、私。
もっと早くお母さんとお父さんに相談すれば良かった。
私は泣きながら少しだけ笑った。
両親はそんな私を見て、また笑って少しだけ泣いていた。
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