うちの居候は最強戦艦!

morikawa

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第1章

1-4

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 スーパーに着くと、セラスはあたりをきょろきょろと見渡してから、

「必要な物資の探索が終了しました」

 とかのたまった。そして、

「ではこちらから回りましょう」

 とずんずんと先に進んで行ってしまうので、俺とこころは慌ててカゴを取って後を追った。セラスは野菜や果物、肉や魚をどんどん取っては俺の持つカゴに放り込んでいく。

「おいおいおい」

 仕送り前だからあんまり金はないんだぞ? お前は知らんだろうけど。

「大丈夫です。コーイチの財布の中身と銀行口座の残高は把握しています」

 いつの間に?! たった一晩で俺はこの子にそこまで知られてしまったのか…は、恥ずかしすぎる…

「問題ありません。私は宇宙戦艦であって人ではありませんから。便利な家電が増えた程度に思っていれば良いのです」

 しかも人の考え読むし!

「思考が分かるわけではありません。今までのコーイチとの会話から推測しただけです」

 ああ、さいですか・・・もう俺はプライバシーどころか頭の中で考えることすら理解されてしまっているらしい・・・

 こころは主婦っぽく、野菜やら手にとって色々見比べながら選んでいる。セラスはそんなこころを待たずにどんどん進む。傍から見ると、はしゃいでお母さんを置き去りにしてどっかいっちゃう子供みたいだな。

 だが、セラスは買う物の位置を正確に把握しているようで、切れかかっていたシャンプー等の日用品も迷わずに見つけ出しカゴに入れて行く。しかも俺が普段使っているものを! そしてレジに到着した時にはカゴはいっぱいで、財布の中身で足りるのか心配だったが、本当に予算内に納まった。

「すごいな」

 俺は感心して褒めた。すると、

「私は役に立ちましたか?」

 とセラスは俺に尋ねた。

「ああ、もちろん」

 俺がそう答えると、セラスはちょっと下を向いてから少し嬉しそうに、

「良かった。私は宇宙戦艦ですが、戦闘以外でコーイチの役に立ちたいのです・・・」

 と小さな声で言った。どういうことだ?

 会計を済ませた後は、こころを探して買い物を手伝い、それから三人でアパートへ帰った。登校の時と同じように手を繋いで。

 こころはご機嫌で、何か鼻歌を歌ってる。セラスは無表情だけど、良く見ると少し微笑んでいるようにも見える。なんだが、こうしてると本当に家族みたいだな。

 そう思った時、セラスの手がまた少し大きくなったように感じた。・・・本当に気のせいなんだろうか?

 アパートに戻ると、こころは荷物を置きにいったん部屋へ戻った。いったんというのは、帰り道に夕飯を一緒に作って食うって約束したからだ。

 そういえば、同級生の女子と夕飯なんて初めてだな・・・こころは隣だけど、さすがにそこまでは無かったし。あ、いや、べ、別に嬉しくなんか無いぞ? 本当だぞ?

 俺も自分の部屋の鍵を開けて、セラスと中に入り、とりあえず大量に買ってきた日用品を物置やら洗面所やらに放り込む。その間にセラスは食料品を、今晩使う物を台所に置いて残りを冷蔵庫へ入れていた。

「ところで」

 作業を終えたセラスがとことこと俺の所にやってきて、言った。

「なんだ?」

「今朝指示を頂いたとおり、メイド服に外装を変更しようと思います」

 指示とか言うな・・・俺がいたいけな少女にコスプレ強要してるみたいだろ? って外装ってなんだ。服と言えよ、服と。この電波ちゃんめ。

「どれが良いですか?」

 そう言いながらセラスは例の同人誌をパラパラとめくりながら俺に見せる。ぐはっ・・・い、いつの間に出しやがった?!

 って、う、うわぁ。自分の所有する秘密のエロいものを、しかも何度も何度も使ったものを、年端もいかない美少女がぱらぱらめくってるのを見せられるのって何? 恥ずかし過ぎる! これってどういうプレイなの?!

「どうかしましたか? 選んで下さい」

 セラスは少し首をかしげながら言う。首を傾けたせいで、銀色の髪がさらりと流れる。それがあまりにも綺麗で、俺は一瞬どきっとしてしまった。

 うぅむ。改めて良く見てもすごい美少女だな、などとつい思ってしまう。・・・はっ! 違う! 俺はロリじゃない、ロリじゃないんだぁ!

「返答を頂けないのでこちらで適当に決めさせてもらいます」

 じゃあ、やめろよ! いや、少し見てみたいような気はするが・・・いや、俺はロリじゃない! ロリじゃないんだぁ! 本当なんだぁ!

 俺が葛藤というか、何か大事なものを守るために心の中で戦っていると、セラスは両手を軽く広げて何か呟いた。

「中枢体保護外装を一時解除。再構築します・・・」

 すると、白いドレスが無数の光の粒に姿を変えてセラスの体から離れ、その周囲を巡る。う、嘘だろ? 何なんだよそれは・・・そんなこと出来んのかよ?

 って、は、裸?

 当然のことと言えばそうなのだが、ドレスを光の粒に変えてしまったセラスは、今俺の前に一糸まとわぬ姿をさらしている。小さく細い華奢な体つき。そしてわずかに膨らみ始めた胸・・・ってやばいやばい! 俺の理性が目を逸らさせる。

 俺が視線を問題個所から移動した次の瞬間、光の粒の回転速度が上がり、まるでセラスは光の布に包まれているような状態になった。そして、光は徐々にヘッドドレス、シャツ、スカート、エプロンの形を作り始め、突然その輝きを消した。

 もう言わなくても分かってもらえるだろうか。セラスの服は紺色に白いエプロンドレス、スカートはやや短めのメイド服に変わっていたのだ。セラスはその姿を自分でも確認しながら、くるりと回って見せる。

 ぐはっ、めちゃくちゃ可愛い! そして、スカートの端を摘まむと、ゆっくりと頭を下げて、同人誌のメイドさんと同じセリフを言った。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 ぐふっ、ま、まずい・・・相変わらずの無表情だからまだ良かったものの、ここで可憐に微笑まれていたら、俺は落ちてしまったかもしれない。二度と戻れない過酷な修羅の道へ・・・

「こんばんは~」

 その時、激しい音を立てながら、こころがドアを蹴り開けた。普通に開けろよ! 鍵かけて無いんだしさぁ! というか、鍵が掛かってても蹴り開けるなぁ?!

「うわっ! セラスちゃん夜はメイドなの!?」

 相変わらずこころはハイテンションだ。

「どうでしょうか?」

 セラスは先程と同じようにくるりと回る。

「うんっ! 可愛い可愛いよ?! めちゃくちゃ可愛いよ!」

 こころはそう叫ぶように言うと、朝と同じようにセラスに抱きつき、頭に頬ずりする。

「あ~もう最高だよ~! セラスちゃん~、私のヨメになって!」

「ヨメとは配偶者ということですか? 私はコーイチの所有物なので、こころのヨメにはなれません」

「ちぇ~、けち~」

 女同士なんだからケチとかいう以前の問題だろ?! それとも何か、百合な展開でもあるのか?! それはもったいないと思うぞ!

 女二人はしばらくきゃあきゃあ騒ぎながら何かやっていたが、まあ騒いでいたのはこころなんだが、しばらくするとそれに飽きたのか夕食作りに取り掛かった。

 狭いキッチンなので俺は手伝うことも出来ず、仕方なく後ろで女子達の料理姿を見ていた。セラスの包丁捌きは異常な程に速くそして正確で、玉ねぎを刻むのもキャベツを千切りにするのもあっと言う間だ。逆にこころは手慣れた感じの手付きだけど、鼻歌なんか歌いながらのんびりと楽しそうに、だけど丁寧にやっている。ううむ、良い・・・女子が料理しているのを見るのって良い・・・

 はっ!? 俺はお姉さん萌えなはずなのに、同級生と小学生の料理姿に萌えてどうする?! ま、まあ、こころは俺より誕生日早いらしいから、ややお姉さんということで良しとしよう。何がだとは言わないでくれ?! だがセラスはまずいだろ?! ・・・いや、だがしかし可愛いのは確かだ。・・・そうだ、年下の子ががんばっているのが可愛いから、見て可愛いなあと感じているだけだ。多分そうだろう。いや、そうに違いない。そうでないと困る。

 そんなことを考えていたら、さっきのこと・・・セラスの体を思い出してしまった・・・ま、まずい。俺は犯罪者じゃないんだぁ~!

「何悶えてるの? あ、エッチなこと考えてたんでしょ~ 裸エプロンなんて、まだやってあげないよ?」

 俺が思索にふけっている間に料理は終わったらしい。こころがカチャカチャと皿やら茶碗やらを戸棚から出しながら、ニヤニヤと言う。

「ち、違わぁ!」

 必死に否定する俺。もちろん嘘だが。セラスが対象なんてばれたら警察に電話されかねん。と、というかまだって何だ?!

「ふふふ~ん、嘘つきは泥棒の始まりだよ~」

 お婆ちゃんか、お前は!

「そ、それより、ま、まだって何だよ?!」

「へへへ、ひみつ~」

 そう言ってこころは楽しそうに笑う。な、なんだよ、ちくしょう。女子は良く分からん!

「さあ、どうぞ」

 そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、セラスが俺の前に料理の盛られた皿を静かに置いた。おぉ、ハンバーグか。程良く焼かれたひき肉と玉ねぎがとても美味そうな香りをこれでもかと言わんばかりに放出している。千切りキャベツと付け合わせのニンジン、ブロッコリーにジャガイモも、ほくほくとした感じでとても良さげだ。

「はい!」

 こころがちょっと乱暴に大盛りのご飯とみそ汁を出す。すまん、二人共。お姉さん萌えとか言って。今、俺には二人が天使に見えるぜ・・・

「・・・? その表情の意味するところを推察できかねますが、どうぞ、召し上がれ」

「残したら蹴るからね?」

 残すもんかよ? たとえ不味くてもこれで残したら漢じゃねえだろ。

「切ったのはセラスちゃんだけど、こねて焼いたのは私なんだからね!」

「私は煮ました」

 そんな二人の会話を聞きながら、俺はがつがつと頂く。ハンバーグも、野菜も、味噌汁も、ご飯も、全部美味い。他愛も無い話をしながら、三人で食卓を囲む。これも良いもんだな。ただ、セラスは相変わらず食わないけど。大丈夫なのか? 本当に宇宙戦艦なのか?

 俺がちらっとセラスを見ると、またさっきより少し大きくなったような気がする。何なんだろう、俺の気のせいなのか? ただ、こころはとても楽しそうだし、セラスも無表情ながら、なんだか嬉しそうに見えるので、細かいことは気にしないことにした。
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