うちの居候は最強戦艦!

morikawa

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第1章

1-5

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 そんなこんなでセラスが居候になってから一週間が過ぎた。

 セラスとこころと一緒に学校に行き、授業を受けて、友人達を交えてくだらん話をし、一緒に下校して、スーパーや本屋やゲーセンに寄り道して・・・楽しい日々だった。セラスが普通ではないことが気にならないくらいに。

 そう、セラスは思っていた以上に普通ではない。さすがにそれは俺も認めるしかなくなっていた。本当に宇宙戦艦かどうかまでは分からないが。

 たまにちょっとセラスが大きくなったように感じていたのだが、それは間違いじゃなかった。会った時は10歳ぐらいの少女だったのが、今は12,3歳ぐらいまで成長している。外装とやらをちょっとぶかぶかな感じの子供服にして体型を誤魔化しているので、今のところ俺とこころしか気付いてはいないようだが。

 いったい何者なんだろう、セラスは。こんなにぐんぐん大きくなるなんて、人間じゃありえないだろ。といっても何か起きた訳ではないし、セラスが怖い存在とはとても思えないし。

 以前感じたとんでもないことに巻き込まれたという不安がどんどんでかくなるが、どうすれば良いのか分らん。

 そんなことを考えながらの学校の帰り道。

 ちょっと本屋に寄ってマンガやラノベの新刊の表紙を眺めて、スーパーで買い物して。それからぽつんぽつんとある街灯くらいしか明かりの無い狭いアパートへの帰り道を、いつものように三人で話しながら歩いていた。

「今日は何食わしてくれんの?」

「へへへ、すき焼き~。好一君が仕送り貰ったもんね」

「おぉ~」

 この頃には、すでに財布をこころとセラスに握られてしまっていたのだが、素直に俺は喜んだ。まあ、コンビニで買うより安いし美味いしな。声に出しては言えないが、何より二人が作ってくれるのが嬉しいし。

「特に手間がかかりませんが、良いのですかね? 鍋物は野菜が沢山摂れますが、なんだが手抜きのようです」

 横を歩いていたセラスが、銀色のツーサイドアップのしっぽをふさりと揺らしながら俺を見る。

 最近こころが、毎朝俺の家に来てはセラスの髪を梳かして結ぶのだ。時間がかかるのでうざいような気もするが、まあ、確かに、可愛いことは可愛い。

「いいんだよ~。簡単に作れるものも、手をかけて作るものも、上手く交互にやらないとね~」

「こころは本当にコーイチの奥さんのようですね」

「うなっ?!」

 言われ慣れてる言葉なのに、何故か俺の心臓はびくんと跳ねあがる。

「え、あ、セラスちゃん、やだな~、あはははっ」

 同じく顔を赤くして笑うこころを、こいつだって言われ慣れてるくせにと思いながら眺めていると、セラスが突然足を止めた。と、次の瞬間、さっと俺とこころの前に出ると、かばう様に両手を広げる。

「セラスちゃん・・・? ああっ?!」

 セラスのそんな行動をきょとんと見ていたこころが、ふっと前方に目を向けると突然驚愕の声を上げた。そしてそのままへたり込む。

「どうして、どうして? もう来るなんて・・・」

 呟くように、だが泣き叫ぶように、こころが言う。一体なんだ? 俺もセラスとこころの視線の先を見る。

 30mくらい先だろうか、街灯の光の届かない暗闇の中に赤い小さな光が幾つか見える。何かを探す目のように、すっすっと平行に、あるいは縦に斜めに蠢いている。

 すると、突然ライトが点いた。そして俺達を眩しく照らす。

 な、なんだ? 車? いや、違う! 廃車みたいなぼろい車を中心に、テレビや冷蔵庫のような大型の家電やパソコンの類が幾つも融け合うようにくっつき、それが巨大な生物のようにギシギシと金属が軋む音を立てながら闇の中を這うように移動している! そして融合した体から突き出た赤い目が一斉に俺達を見るように向きを変えた!

「ヴァルミンを確認」

 セラスはあんな異常なものを見てもまったく動ぜず、呟くようにそう言った。

「民間人保護の為、連合艦隊規定7条2項により武装を限定解除」

 セラスがさらにそう呟くと、セラスの頭上の空間がぐにゃりと渦を描くように変化する。空間が歪んだ?!

「アンチ・ヴァルミン・ナノマシン散布。市街戦の為、空間障壁展開」

 セラスがそう言うと、歪んだ空間から銀色の粒子が激しい奔流のように噴出し、輝く雪のように周囲へ舞う。そして謎の化物と俺達を取り囲むように、青く澄んだ光を放つ膜のようなものがゆらりと覆う。

 セラスがヴァルミンと呼んだ謎の化物の上に輝く雪が落ちた。するとヴァルミンは痙攣するようにがくがくと不規則な動きを始めた。

 やがてその痙攣が大きくなると、今度は暴走するかのように、こちらへ向けて突進を始めた! だが、その進行方向に、壁のように別の青い膜が現れて激しくぶつかり、轟音を立てる。

「対空衝撃砲(ショック・キャノン)起動」

 セラスがそう言うと、また空間の歪みが生じ、そこから丸い筒のような短い砲門が現れ、三本の柱に支えられた巨大な円形のアンテナのようなものが前方にすっと伸びる。

「衝撃砲発射」

 音も無く、だが激しく空気が揺れた。まるで体の中心まで震えるように。

 次の瞬間、見えない砲弾に抉られたように、ヴァルミンの巨大な体の中央に大穴が開く。そして轟音。突風に落ち葉の山が吹き飛ばされるように、ヴァルミンはバラバラに引き裂かれ、砕け散りながら後方へと弾き飛ばされた。

 ヴァルミンが吹っ飛ばされた方角から、また激しい音と振動がする。セラスが張った青い膜に、今打った見えない攻撃が当たったようだ。膜の内側に強い風が吹き荒れる。だが、俺達にはまた現れた膜に守られて風は届かない。

 バラバラになったヴァルミンの体だった様々な機械・・・そこから茶色の粒子の様な物がちらちらと舞い上がり始めた。だが、輝く雪に当たるとそれは掻き消える。そして青い膜も雪も消えた。辺りは何事も無かったかのように、先程と同じく薄暗い街灯の光のみの暗闇に戻る。

 俺は今見た事が信じられなかった。だが、夢では無い確かな証拠として、道には破壊された車と粉砕された雑多な機械の残骸が残されている。こころはしゃがみこんだまま、呆けたように残骸を見つめていた。俺はこころの傍に片膝を付いて、こころの肩に手を当てて軽く揺さぶる。

「おい、大丈夫か?」

「あ・・・うん、大丈夫」

 こころは少し震えていたが、俺の問いかけにそう答えた。良かった。特に怪我とか無いらしい。

「セラス・・・今のは?」

 今更ながらに俺は尋ねた。だが、返事は無い。セラスも珍しいことに、何だがぼーっと前を見たまま動かないでいる。

「セラス?」

 俺がもう一度呼ぶと、セラスはびくっと反応して、答えた。

「ヴァルミン、と呼称される謎の・・・自立行動する戦闘機械群・・・です」

 機械群って・・・なんだそりゃ? それも気になるが、セラスがどうにも様子がおかしい。いつもは無表情だけどはっきりと答えるのに。なんだか動作のおかしいパソコンみたいだ。

「セラス、大丈夫か?」

 心配になって俺が尋ねると、セラスはまたびくっとして、

「大丈夫です」

 と、こんどは短いながらも、いつもの調子で答えた。顔もいつもの愛想が足りない感じの無表情に戻る。俺は安心すると同時に、これも今更だが、セラスがヴァルミンとかいう化け物を簡単に倒したことを思い出した。いかん、俺も大分混乱しているようだ。

 俺は改めてセラスを見た。だが、やっぱりセラスを怖いとは思わなかった。そうだよな、一週間だけど一緒に暮らした家族みたいなものだもんな。だけど、これだけはもう一度聞いておかなくてはならないと思って、俺は尋ねた。

「セラス、お前は何者だ?」

「私は・・・」

 セラスは一瞬、さっきの動作の悪いパソコンに戻りかけた。だが、すぐにすっと元に戻って、はっきりと言った。

「私は宇宙戦艦セラスチウムの中枢体セラス。花咲好一の所有物です」 
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